父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
書籍情報
- ヤニス・バルファキス 著/関 美和 訳
- 定価:1650円(本体1500円+税10%)
- 発行年月:2019年03月
- 判型/造本:46並製
- 頁数:248
- ISBN:978-4-478-10551-1
内容紹介
十代の娘の「なぜ、世の中にはこんなに格差があるの?」というシンプルな質問をきっかけに、元ギリシャ財務大臣の父が経済の仕組みを語る。「宗教」や「文学」「SF映画」など多彩な切り口で、1万年以上の歴史を一気に見通し、「農業の発明」や「産業革命」から「仮想通貨」「AI革命」までその本質を鮮やかに説く。
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目次
プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本
目の前の混乱から離れて世界を見つめ直す
資本主義を解き明かす
第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか? ── 答えは1万年以上前にさかのぼる
なぜ、アボリジニがイギリスを侵略しなかったのか?
かつて、市場はあっても経済はなかった
「言語」と「余剰」の二度の大きな飛躍 ── このとき、経済が生まれた
文字 ── それは余剰を記録するためのものだった
債務、通貨、国家 ── 「仮想通貨」は1万年以上前から存在している
官僚、軍隊、宗教 ── 支配者が支配し続けるために必要なもの
テクノロジーと生物兵器 ── 先住民を一瞬で殺したもの
では、最初の質問に戻ろう ── なぜ、アボリジニがイギリスを侵略しなかったのか?
なぜ、アフリカから強国が出てこなかったのか?
地域内格差 ── 金持ちは100万ドルを簡単に稼げる
「当たり前」に疑問を持ち続ける ── 格差はどこからはじまった?
第2章 市場社会の誕生 ── いくらで売れるか、それがすべて
「高ければ高いほど売りたくなる」わけではない
ふたつの価値 ── 経済学者はすべてを「値段」で測る
「お片付け」に値段は付けられるか? ── 助け合いと市場取引
すべてが「売り物」になる
市場の法則から外れた世界 ── 古代ギリシャ人は「オークション」をしない
自分のことすら「市場価値」で測ってしまう
市場社会のはじまり ── 生産の3要素が突然「商品」になった
グローバル貿易 ── 農奴より羊を飼おう
囲い込み ── 人類史上稀に見る「残酷な改革」
「すべての農奴」が商人になった
工場 ── 歴史の中の「灰色の実験室」
偉大なる矛盾 ── すさまじい富とすさまじい貧困が生まれた
世界はカネで回っている?
第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ ── すべての富が借金から生まれる世界
悪魔が考えた「地獄」より残酷なこと
大転換 ── 生産とカネの流れが逆転した
富と競争 ── 競争に勝つには借金するしかない
フォースタスは地獄行き、ファウストは救われる
借金は宗教的な問題だった ── 神は「利子」を歓迎している?
ファウストはスクルージの裏返し
第4章 「金融」の黒魔術 ── こうしてお金は生まれては消える
起業家はタイムトラベラー ── 未来から無限の交換価値をつかみとる
銀行はツアーガイド ── どこからともなくお金を生み出す
銀行が損をしない方法が生まれた
金融危機 ── そこにはやはり「落とし穴」がある
歯車が「逆回転」しはじめる
誰が助けてくれるのか? ── 中央銀行がどこからともなくカネを出す
国家の新しい(ようでそうでもない)役割
銀行と国の「持ちつ持たれつ」の関係 ── 銀行には冷たくできない
焦げつき ── 借金を「ご破算」にするのは倫理の問題ではない
枝を燃やして山火事を防ぐ
金持ちは政府を煙たがりつつ庇護を求める ── 矛盾に終わりはない
必要な寄生虫 ── 経済はすべての人に頼っている
公的債務 ── それはウイルスではない
それは「機械の中の幽霊」である
だがさらに……
第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界 ── 悪魔が潜むふたつの市場
失業を「否定」する人たち
狩人のジレンマ ── 全員で鹿を狙うか、ひとりでうさぎを狙うか?
なぜ、労働者は家や車やトマトと違うのか? ── ワシリーを雇うシンプルな理由
先行きへの楽観と悲観 ── ワシリーを雇わない複雑な理由
悪魔が潜む場所 ── 「マネー・マーケット」とは何か?
だから、理屈通りに行かない ── 先読みが市場を混乱させる
予言は自己成就する ── もしソポクレスが経済の教科書を書いたら?
悪魔は「人間らしさ」そのもの
第6章 恐るべき「機械」の呪い ── 自動化するほど苦しくなる矛盾
「機械がすべてを解決する」という夢
フランケンシュタイン症候群 ── 自ら生んだ機械に殺される
マトリックスとカール・マルクス ── 市場社会が向かう場所
イカロス症候群 ── 翼を溶かしながら、上に飛んでいく
ミダス王の欲望とその副作用 ── 望めば望むほど反対の結果になる
「抵抗しても無駄」の反対
未来の見方を左右する問い ── 自ら変革を起こす機械は現れるか?
巨大企業にとっての「すばらしい新世界」
人間はどこを変えたら機械になるか?
交換価値の秘密 ── ハチの巣の中に交換価値は存在しない
絶望を見せてくれるのは誰か?
イカロスはときどき墜ちる ── 遠くの希望と近くの希望
新しい「大転換」 ── 需要と売上と価格の悪循環を止める方法
ケインズのスタートレック的予言 ── おカネの考え方が根本的に変わる
第7章 誰にも管理されない「新しいお金」 ── 収容所のタバコとビットコインのファンタジー
「サヤ」を抜く ── だが、やがてサヤは減っていく
「タバコ」で買う ── 通貨になるものの3つの条件
おカネの交換価値 ── なぜ、20ドラクマで1000ドラクマをつくれる?
金利 ── 収容所のタバコ銀行がしていたこと
「終わりの予感」が経済を崩壊させる
「信頼」が通貨を通貨たらしめる
誰もが良貨を貯め込み、悪貨を使う ── そうして、悪貨は良貨を駆逐する
誰も税金を払いたくなければ、どうすればいい?
無から利益を生み出す世界 ── 塀の中と外の違い
塀の外ではおカネは「政治的」になる
ビットコイン ── 「一通のメール」がもたらした衝撃
「仮想通貨」と商人の目論見
上限問題 ── 仮想通貨はなぜ危機にぶつかるのか?
父が教えてくれたこと
第8章 人は地球の「ウイルス」か? ── 宿主を破壊する市場のシステム
宿主を全力で破壊するウイルス
なぜ、市場社会は「破壊」を歓迎するのか? ── 破壊は交換価値を生み出す
節度のない者は「愚か者」になる ── ダメと知りながら競争を止められない
金持ちと庶民のふたつの答え
地球を救うには、誰かが地球を買えばいい? ── 市場社会の解決策
すでにそれは起こっている ── 排出権取引とその矛盾
未来のすべてを決める対決 ── 「すべてを民主化しろ」vs「すべてを商品化しろ」
市場の「投票」のメカニズム ── ひとりで何票も投票できる仕組み
エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」
思考実験 ── 君は理想の世界に行きたいか?
満足なブタより不満なソクラテス ── 欲を満たすだけでは幸せを得られない
HALPEVAMの欠陥 ── ユートピアをつくるシステムがディストピアを生む
自由とショッピングモール ── いったい何を求めればいいのか?
イデオロギー ── 信じさせる者が支配する
占い師のロジック ── 私が経済学者になった理由
経済学は「公式のある神学」
「外の世界」からの視点を持ち続ける
訳者あとがき
著者
ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)
1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。著書には本書の他に、EU経済の問題を指摘した『そして弱者は困窮する』(未邦訳)や「史上最良の政治的回想録の1つ」(ガーディアン紙)と評された『アダルツ・イン・ザ・ルーム』(未邦訳)など、数々の世界的ベストセラーを持つ。2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。
訳者
関美和(せき・みわ)
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な訳書に『誰が音楽をタダにした?』(ハヤカワ文庫NF)、『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(共訳、日経BP社)、『明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業』(ダイヤモンド社)など。
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