優れたリーダーはアドバイスしない

優れたリーダーはアドバイスしない
書籍情報
- 小倉 広 著
- 定価:1760円(本体1600円+税10%)
- 発行年月:2025年03月 [予約受付中]
- 判型/造本:46並
- 頁数:352
- ISBN:9784478121009
内容紹介
「心理的安全性」という言葉が認知されたこともあり、多くの上司が「押し付け型のフィードバック」ではなく、「柔らかいアドバイス」で部下を育てようとしている。しかし、それこそが「部下否定」であることに気づかない。本書は、「部下否定」をせずに、部下の自発性を引き出す「正しいフィードバック法」を全公開する。
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目次
はじめに アドバイスは「部下否定」である
序章 物語のはじまり 「部下育成」と三つの「リーダーシップ」
第1章 「アドバイス」がダメな、これだけの理由
1 「教示型」リーダー・手市課長の場合 ── アドバイスが「反発」と「無気力」を生み出す
2 なぜ、アドバイスが「反発」を生むのか? ── どんなに丁寧に伝えても〝ダメ〟な理由
アドバイスで「相手」を変えることはできない
親しい経営者との会食での「痛恨の失敗」
〝善意〟と〝油断〟が生み出す「過ち」
どんなに「言葉」を選んでも、アドバイスは相手を傷つける
3 アドバイスが「劣等感」を刺激する ──「反発」と「無気力」を生み出すメカニズム
マイナス感情が生じると、「理性」が働かなくなる
「上下関係」だからこそ、アドバイスは難しい
アドバイスが危険な「生物学的」な理由
4 マイナス感情が「成長」の邪魔をする ──「現在地点」を肯定することが、すべての「出発点」である
自分を守るために、人は「逃避」「抑圧」「歪曲」する
「否定」されると、人は「自己防衛」に走る
「現状を肯定」するとは、「褒める」ことではない
「共感」を通じて、部下の「成長」をサポートする
認めたくない「感情」を、味わい尽くすことが「出発点」である
5 なぜ部下は「言うこと」を聞いてくれないのか? ── まずはじめに「相談的枠組」をつくる
「教育」が成立するためには、「枠組」が必要である
なぜあの部下は、「言うこと」を聞いてくれないのか?
一度できた「枠組」も、時間の経過とともに崩れる
企業組織においては、「相談的枠組」は成立しにくい
部下との間に、「信頼関係」を築くほかない
6 顔の見える関係性での「監視」は危険である ── なぜ、部下への「フィードバック」は難しいのか?
「上司の利益」と「部下の利益」は相反する
「顔」が見える関係だからこそ、「過剰反応」が生まれる
7 部下を直接的に「育てる」ことはできない ── 人が育つ「環境」をつくるのがリーダーの仕事である
「自分」すら変えることができないのに、「他人」を変えられるはずがない
管理職に求められている深刻な「矛盾」とは?
「間接的なかかわり」こそが、「人材育成」の本質である
変えるべきなのは、「部下」ではなく「自分」である
コラム❶ なぜ、人は〝アドバイス〟したくなるのか? ──「メサイア・コンプレックス」という病気
第2章 〝優しいリーダー〟の本当の目的
1 「回避型」リーダー・温水課長の場合 ──「アドバイス」を回避する〝隠された理由〟
2 「教示型」は失敗すると「回避型」になる ── リーダーシップの「質的」転換が求められる
多くのリーダーは、「教示」と「回避」を行ったり来たりする
リーダーが〝振り子〟になる心理的メカニズムとは?
〝振り子〟の軌道から脱却して、リーダーシップの「質的」転換をする
3 部下の「顔色」が気になるのは正しい ── ただし、偽りの「関係性」はチームを壊す
人間の「悩み」の85%は、人間関係の「悩み」である
すべての人間がもっている「居場所をつくりたい」という究極目的
「居場所をつくる」とは、どういうことなのか?
部下の「貢献」を引き出すことで、「居場所」はつくり出される
4 優れたリーダーは〝無能なフリ〟をする ── リーダーはメンバーより「優秀」でなくてよい
〝優秀な上司〟のもとでは「部下」が育たない
部下に頼ってばかりの〝できない上司〟
〝できる上司〟を装うよりも、〝無能な上司〟のフリをする
5 リーダーは「正解」を知らなくてよい ──「正解」を押しつけるから、部下に嫌われる
リーダーシップを「質的」に転換する
自分がもっている「正解」は、数ある「正解」の一つにすぎない
6 「正解」を教えるより、「正解」を創り出す ──「ナレッジ・ワーク」におけるリーダーシップとは?
「ビジネスモデル」が変われば、「リーダーシップ」も変わる
「ナレッジ・ワーク」に最適化したリーダーシップ・スタイルとは?
第3章 「部下育成」にアドバイスはいらない
1 「共創型」リーダー・個知課長の場合 ── 初期コーチングとも異なる「新しいスタイル」
2 相手を叱りながら「教育」はできない ── 部下の「できている点」をリソースとして活用する
アドラー心理学の勇気づけの技法「正の注目」
「問題点を取り除く」よりも、「できていることを伸ばす」方がよい
「部下はどう感じるか」というイマジネーションを働かせる
上司が陥りやすい「処罰欲求」依存とは?
相手を叱りながら、「教育」することはできない
3 うまくいかない「原因」を分析しない ── 職場の問題は「原因論」ではなく、「目的論」で解決する
「問題」を解決するために、「原因分析」は必要なのか?
「複雑な問題」を解決する、たった一つの「思考法」とは?
「できること」を片っ端から試す
“Do More”と“Do Something Different”
職場の問題は「目的論」で解決する
4 対話のなかから「重要な意味」を取り出す ──「意味の明確化」と「意味の反射」
相手がまだ気づいていない「重要なポイント」に焦点を当てる
対話のなかから「キーワード」をすくい上げる
相手が口にした言葉を「オウム返し」にする
5 部下が「自分の言葉」を見つけるのを見守る ──「対話」によって〝まだ存在しない意味〟を創出する
人間は「理解したこと」を表現しているのか?
人間は「話し」ながら、「理解」を創造している
「安全安心」の空気感で、部下を包み込む
6 「許可」を得てから話し始める ── 相手の「自己決定権」を徹底的に尊重する
「教育する立場」と「教育される立場」は、「対等」でなければならない
小さなことであっても、部下の「自己決定権」を尊重する
「協力」するためには、「許可」をとる必要がある
たとえ「善意」であっても、土足で「相手の領域」に入ってはならない
7 部下の「できてないこと」を受容する ──「問題指摘」よりも「信頼構築」を優先する
ミーティングの流れを決定づける「発言」
相手のシステムに溶け込んでいく「ジョイニング」という技法
8 「過去に戻ってやり直せるとしたら?」と質問する ──「失敗」ではなく、「やり直し」に焦点を当てる
「ユニークな質問」で、いつもとは違う「発想」を刺激する
「タイムマシン・クエスチョン」で、クリエイティブな思考を生み出す
「原因分析」をすっ飛ばして、いきなり「解決策」を考える
上司主導ではなく、部下主導で「解決策」を考える
コラム❷ 「過去形」ではなく「現在形」で問いかける ── 没入するからこそ、「感情」が湧き上がる
9 大切な観点に「スポットライト」を当てる ── 部下の「言葉」のなかに隠れているものを「焦点化」する
相手が気づいていない「ポイント」を深く掘り下げる
「対話」のなかで交わした言葉に、「スポットライト」を当てる
「自分にとっての正解」が、「正解」とは限らない
「山から降りる」という提案
「ノット・ノーイング」という考え方
部下を「誘導」「操作」するという「過ち」を避ける方法
コラム❸ 相手の「思考のスイッチ」を押す方法 ── さりげなく「対比」を提示する
10 「私も〝答え〟がわからない」と言う勇気をもつ ──「不完全な自分」をさらけ出し、部下と共に悩む
「答え」がわからないときは、「困っている」と伝えるのがいい
上司が「完璧なふり」をすると、部下も「完璧なふり」を始める
迷ったときには、「迷った姿」をさらけ出す
なぜ、優秀なカウンセラーほど、「う〜ん……えーと……」という声を出すのか?
11 部下の「間違い」を修正する方法 ──「控えめ」に提案する
部下の「間違い」を指摘する前に、「セルフ・チェック」をする
「行動修正」を求めるときは、「控えめに提案する」のが正解
「フィードバック」よりも「フィードフォワード」が有効
「YOUメッセージ」ではなく、「Iメッセージ」で伝える
コラム❹ 相手の心に「メッセージ」を届けるコツ ──「置き配」と「ぶら下げる」をイメージする
12 「一般化」ではなく、「個別化」する ── 創造的な「対話」を創り出す「質問」の技法
リーダーの「素質」を見抜く、わかりやすい方法とは?
「一般化」せず、「個別化」する
部下に「一般論」は通用しない
「個別化」するからこそ、部下にとっての「正解」が生まれる
13 「学習効果」を最大化する方法 ──「対話」を振り返り、「学び」を言語化する
「具体化」を促す「質問」をする
ミーティングを「振り返る」ことで、「学習効果」を高める
「教える」ことで、「学び」を最大化する
特別付録 部下と共に「正解」を創り出す7つのステップ
ステップ1 自分の「正解」を脇に置き、ふもとへ下山する
ステップ2 「許可」をとり、「話」を聴く
ステップ3 「スポットライト技法」で議題化する
ステップ4 「正解」を創り、「協力」の注文をとる
ステップ5 「Iメッセージ」で提案を〝置き配〟する
ステップ6 試行錯誤(Do More or Do Something different)する
ステップ7 「経験学習サイクル」を回す
第4章 「教えなければならない」とき、どうするか?
1 緊急事態には「強制」が不可欠である ──「教示」が必要なきわめて〝限定的な場面〟とは?
そうは言っても、「教示」しなければならない場面はある
「緊急事態」においては、「教示」「命令」「強制」に踏み切る
2 「業務命令」が必要な職場環境とは? ── 従わない場合は、「ルール」に従って粛々と対応する
「性善説」が通用しない場所では、「共創型」は成立しづらい
「ルール」に基づきながら、「自己決定」してもらう
3 「二つの結末」を体験させる ──「ルール」は厳しく、「コミュニケーション」は優しく
「結末を体験させる」という劇薬
「良い学び」と「悪い学び」
「社会的結末」というハイリスク・ハイリターンな教育技法
「ルール違反」は、決して見過ごさない
「叱らない」「嫌味を言わない」「教示や誘導をしない」
「民主的手続き」「合理性」「公平性」
「ルール」は厳しく、「コミュニケーション」は優しく
4 「正解」ではなく「フレームワーク」を教える ──「控えめに」かつ「部分的に」伝えることが大切
「魚」を与えるのではなく、「釣り方」を教える
「未学習者」には、「フレームワーク」を教える
5 部下に「アドバイス」を求められたらどうする? ── まずは「あなたはどう思っているの?」と逆質問する
部下に「アドバイス」を求められたら、それは〝罠〟だと認識する
「修正提案」をするときは、そっと〝置き手紙〟をする
あとがき
著者
小倉 広(おぐら・ひろし)
企業研修講師、公認心理師、株式会社小倉広事務所代表取締役
大学卒業後新卒でリクルート入社。商品企画、情報誌編集などに携わり、組織人事コンサルティング室課長などを務める。その後、上場前後のベンチャー企業数社で取締役、代表取締役を務めたのち、株式会社小倉広事務所を設立、現在に至る。研修講師として、自らの失敗を赤裸々に語る体験談と、心理学の知見に裏打ちされた論理的内容で人気を博し、年300回、延べ受講者年間1万人を超える講演、研修に登壇。「行列ができる」講師として依頼が絶えない。
また22万部発行『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』や『すごい傾聴』(ともにダイヤモンド社)など著作49冊、累計発行部数100万部超のビジネス書著者であり、同時に企業研修講師、公認心理師としてビジネスパーソン・児童生徒・保護者などを対象に個人面接を行っている。東京公認心理師協会正会員、日本ゲシュタルト療法学会正会員。