経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営
経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営
書籍情報
- 中神康議 著
- 定価:2420円(本体2200円+税10%)
- 発行年月:2020年11月
- 判型/造本:46上
- 頁数:288
- ISBN:9784478112250
内容紹介
「投資家の思考と技術」が経営の次元を引き上げる。戦略コンサルタント出身でアジア・ベスト・ファンド賞の投資家が語る経営戦略。経営者だけでなく、従業員と株主も金銭的に報われ、アクティビストから身を守れる「みなが豊かになる経営」とは? あまたの経営者が耳を傾ける投資家の思索と提案。楠木建絶賛!
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目次
はじめに ── 経営者だけでなく、従業員、株主も合わせて豊かになる経営
再現性のある経営構想で「みなで豊かになる経営」を実現する
経営コンサルティング一筋から一転、経験なしの投資業界へ
リーマンショック下でも投資先の株価は2倍に
序章 なぜ経営に「厳選投資家の思考と技術」を取り込むべきなのか
「厳選投資家の思考と技術」が「攻めと守りを兼ねた妙手」を生む
「厳選投資家」には上位2σの企業を選り分ける選定眼がある
アクティビストにつけ入るスキを与えないための予防策にもなる
「みなで豊かになる経営」へのロードマップ
本書の構成
第 I 部 「みなで豊かになる」メカニズム
第1章 「みなで豊かになる経営」の鉄則 ── 複利
アインシュタインやバフェットが信じた「複利の力」とは
ほんの数%の差でも複利で長期間運用すると何十倍もの差に
「複利の力」を経営に適用するには
経営の4つのタイプ
タイプ1 額の経営 ── 売上はすべてを癒やす
タイプ2 率の経営 ── いかに効率よく利益を上げるか
タイプ3 利回りの経営 ── 元手に対して、どれだけ効率よく利益を上げたか
タイプ4 複利の経営 ── 複数年で利回りを上げる
「複利の経営」は「長期の株価」に表れる
株価の「人気」部分は変動が大きい割に長期のリターンはマイナス
売上や利益が高い企業ほど株価が上がるわけではない
「利益率」も長期の株価とはほとんど関係がない
「複利の経営」こそ、「みなで豊かになる経営」につながる
■第1章のまとめ
第2章 「みなで豊かになる」フェアウェイ ── 超過利潤
「超過利潤」を出して初めて、経営者は仕事をしたと言える
「成長すればするほど、資本がやせ細っていく」恐怖の状態
超過利潤を出していないと、「指数関数的に」価値が小さくなる
「今」超過利潤を出せていないなら、「これからも」出せないと判断される
コラム 世界と比べた日本の超過利潤は?
経営者は「おおらかに」超過利潤を狙え
■第2章のまとめ
第II部 事業を圧倒的な強さにする
第3章 まずは十分な利益率を確保する ── 事業経済性
なぜ業界素人のコンサルタントが経営戦略を議論できるのか
すべての事業は4つの「型」に分類できる
儲けの型1 規模型事業 ── 規模が大きいほど儲かる
儲けの型2 分散型事業 ── 小規模のプレイヤーが多数乱立する
儲けの型3 特化型事業 ── 特定分野だけ規模の経済が効く
儲けの型4 手詰型事業 ── 誰がやっても儲からない
コスト構造によって「ほぼ自動的に」儲けの出方が決まってしまう
「規模の経済」が効く仕組みとは
「多角化によるシナジー」論が見落としている罠
儲けの出方は、「コスト構造」と「共有コストの範囲」で決まる
競争の構図や戦略の骨格も、事業経済性で「ほぼ自動的に」決まる
規模型事業の戦略 ── とにかく規模拡大競争
分散型事業の戦略 ── 日常的にスクラップアンドビルド
特化型事業の戦略 ── 共有コスト比率が高い領域に絞って規模拡大
手詰型事業の戦略 ── リストラ・業界再編・協調戦略
事業経済性がわかれば、競合他社に先駆けて戦略を打てる
携帯電話事業と生命保険事業の戦略の共通点とは
コラム 日本企業のROEが低い本当の原因
■第3章のまとめ
第4章 「利回り」を作り、競合他社から守る ── 障壁
利回りを生むだけでなく、長期間維持するための「障壁」とは
「競争優位」のよくある誤解1 ── 「差別化」など障壁にはならない
「競争優位」のよくある誤解2 ── ブランドも障壁にならない
「利回り」の視点で見ると、ブランドへの投資は、割に合うとは限らない
「競争優位」のよくある誤解3 ── 製品の素晴らしさもシェアの大きさも関係ない
「真の障壁」は3種類しかない
「真の障壁」1 コスト優位 ── 供給面での障壁は低く、寿命も短い
コスト優位の障壁1 低原価 ── ただし、資源の独占は長続きしない
コスト優位の障壁2 独占的な技術 ── 内部開発した技術でないと障壁にならない
「真の障壁」2 顧客の囲い込み ── 需要面の障壁は高く、少し長持ちする
囲い込みの障壁1 習慣化 ── なぜか同じものを使い続けてしまう
囲い込みの障壁2 スイッチングコスト ── 他製品への切り替えが負担
囲い込みの障壁3 サーチコスト ── 他を探すのが面倒
「真の障壁」3 規模の経済との組み合わせ ── 最強で、最長不倒の一手
「規模の経済」を効かせるための2つの留意点
留意点1 競合他社との「相対的」な差が重要
留意点2 「顧客の囲い込み」とセットでなければならない
理想は「小さな池の大きな魚」
障壁が築けない事業でも使える唯一の手とは
戦略とは、障壁を築くことである
■第4章のまとめ
第5章 障壁づくりの必要条件 ── リスクとコストという「投下資本」
儲けの背後には2つのメカニズムがある
儲けのメカニズム1 呆れるほどのコストを投入する
儲けのメカニズム2 腰を抜かすほどのリスクを取る
4つの事業を例に、儲けの出どころを探る
事業1 フィービジネス ── 尋常ではない人件費をかける
事業2 金融・不動産ビジネス ── 儲けの出どころはとにかくリスクテイク
事業3 卸売ビジネス ── コストもリスクもかかっていない
事業4 障壁ビジネス ── 呆れるほどのコストと腰が抜けるほどのリスクが必要
恐怖心に勝たなければ、障壁は築けない
呆れるほどのコスト投下の例1【大塚商会】 ── 新聞配達店と同程度の販売網を構築
呆れるほどのコスト投下の例2【参天製薬】 ── 地方の開業医をも手厚く支援
腰を抜かすほどのリスクの例【トラスコ中山】 ── 正気を疑われるほどの拠点・在庫投資
経営者が果たさないといけない最大の義務とは
コラム 日本企業のコストとリスク
■第5章のまとめ
第6章 障壁づくりの十分条件 ── 事業仮説
ビジョンは「大衆合議」からは生まれ得ない
事業経済性の宿命も、「事業仮説」で打ち破れる
ロイヤルホストはいかに一大外食チェーンを築き上げたか
外食産業に「規模の経済」が効くようになった仕組みとは
外食産業には3つの「型」が併存している
誰がやっても採算がとれない個人宅配事業で、ヤマトはどう利益を上げたのか
それまでなかったヤマトの集荷・配送の仕組み
小倉昌男には利益の出る未来が明確に見えていた
事業仮説が大きいほど反対も大きい
極端でなければ仮説とは言えない
厳選投資家は、常識的な戦略には目もくれない
コラム 日本企業はどれだけリスクテイクしているのか
■第6章のまとめ
第III部 全社を導く
第7章 リスクテイクに向けた体制をつくる ── 勝者の呪い1 集団意思決定
ガバナンスは「所有と経営の分離度合い」で3つの段階に分けられる
第一段階 独裁制 ── 経営者の監視と暴走抑止が焦点
第二段階 立憲君主制 ── 株主と経営者の利害調整が要
第三段階 共和制 ── 指揮命令系統が弱まりがち
日本企業はいまだに集団意思決定の術を開発できていない
「集団でリスクを取る術」には、すでに正解がある
集団でリスクを取る必要条件 ── 経営陣は原則CEOの指揮命令に従う
集団でリスクを取る十分条件 ── 取締役会にCEOを監督させる
役割の違いから見る3種の取締役会
種類1 マネジメントボード ── 非公式の決定を追認する
種類2 アドバイザリーボード ── 執行に対してアドバイスをする
種類3 モニタリングボード ── 監督機能を分業する
監督・経営・執行を分業することで大企業病を排除する
監督機能を担う社外取締役は、取締役会でどのようにふるまうべきか
独立社外取締役のふるまい方1 M&Aの意思決定を分業する
監督の視座 ── 常日頃から体制を整備しておく
経営の視座 ── 適正価格について客観的な意見を述べる
執行の視座 ── ポストM&Aのあり方について釘を刺す
独立社外取締役のふるまい方2 事業ポートフォリオ再構築の意思決定を分業する
コラム オムロンの車載事業売却
監督の視座 ── 少数メンバーによる意思決定を促す
経営の視座 ── 個別事業の超過利潤を常にチェック
執行の視座 ── 戦略の有効性を問う
リスクテイクのために、監督機能を3つの委員会に分ける
委員会1 指名委員会 ── 正しいCEOを選ぶ
委員会2 報酬委員会 ── 魅力的な報酬制度を用意する
委員会3 監査委員会 ── 暴走リスクに目を光らせる
コラム 指名委員会等設置会社という制度は、リスクテイクのためにある
■第7章のまとめ
第8章 高い利回りを持続させるためのBSマネジメント ── 勝者の呪い2 平均回帰
資本生産性を表す3つの指標
指標1 ROA ── すべての資産を使ってどれだけ利益を上げたか
指標2 ROIC ── 真水の投下資本からどれだけ利益が生まれたか
指標3 ROE ── 株主資本からどれだけ利益を生み出したか
みなで豊かになるための資本生産性の3つの条件
条件1 ROAが資本コストを超えているか
条件2 ROICはROAより高いか
条件3 ROEはROICより高いか
資本生産性指標を使って実際に経営を判定する
みなで豊かになるためのチェックリスト
高いROE自体が引き起こす大問題 ── 勝者の呪い2
平均回帰から脱却するための方策1 現金保有を最適な水準に保つ
コロナ危機で海外の企業は現金をいくら積み増したのか
「総人件費の2年分」が現金保有の1つの目安
平均回帰から脱却するための方策2 配当は投資機会の有無で決める
平均回帰から脱却するための方策3 自社株買い
平均回帰から脱却するための方策4 レバレッジは事業リスクとの兼ね合いで決める
■第8章のまとめ
第9章 「経営を撹乱するもの」から身を守る ── アクティビズム
アクティビスト垂涎ものの日本の株式市場
アクティビストに狙われる企業の2つの特徴
特徴1 PBR1倍以下
特徴2 「みさきの黄金比(R)」を守れていない
アクティビストにいったん狙われると何が起きるか
危機対応のための大量の資金供給がアクティビストに流れる日
■第9章のまとめ
終章 最速で「みなで豊かになる」 ── 三位一体の経営
「厳選投資家の思考と技術」への心理的抵抗を取り除く
経営者と投資家の本質的な「機能」は似ている
投資家の思考と技術を併せ持つ経営者1 【HOYA/鈴木洋社長】
投資家の思考と技術を併せ持つ経営者2 【塩野義製薬/手代木功社長】
投資家の思考と技術を併せ持つ経営者3 【日本精工/内山俊弘社長】
投資家の思考と技術を併せ持つ経営者4 【GE/ジャック・ウェルチ元会長】
世界最先端のコーポレート・ガバナンスとは
ファンドから社外取締役を招へいするとモニタリングボードはうまくいく
コラム 世界中で起きている「投資家の思考と技術を経営に取り込む」潮流
日本企業が「投資家の思考と技術」を経営に取り込む3ステップ
ステップ1 役員・従業員の「保有株式数」を引き上げる
ステップ2 投資家の「思考」を理解し、診察を受けてみる
ステップ3 投資家の「技術」を直接的に経営に取り込む
「投資家の思考と技術」を経営に取り入れる動きは、すでに始まっている
おわりに
謝辞
解説「長期」の本質 楠木建
参考文献
著者
中神康議(なかがみ・やすのり)
みさき投資株式会社 代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営学修士(MBA)。大学卒業直後から経営コンサルティング業界に入る。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、コーポレイトディレクション(CDI)のパートナーとして、20年弱にわたり幅広い業種の経営コンサルティングに取り組む。クライアントとともに優れた戦略を立案・実行することで企業価値が大きく向上し、結果として株価が上昇することを数多く経験。「働く株主(R)」のコンセプトを考案し、2005年に投資助言会社を設立。投資先企業の経営者と一緒になって企業価値向上のために汗をかくというスタイルで圧倒的な投資パフォーマンスを生む。2013年にみさき投資を設立し、現職。みさき投資はそのユニークな投資スタイルと圧倒的な投資パフォーマンスによって、ハーバード・ビジネス・スクールの教材にもなっている。
ウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ブルームバーグ、ロイターほかメディア掲載多数。著書に『投資される経営 売買される経営』、共著に『ROE最貧国 日本を変える』『経済学は何をすべきか』(すべて日経BP)がある。独立行政法人経済産業研究所 コンサルティングフェロー、日本取締役協会 独立取締役委員会委員長。
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