消費増税は、なぜ経済学的に正しいのか
「世代間格差拡大」の財政的研究
消費増税は、なぜ経済学的に正しいのか
「世代間格差拡大」の財政的研究
書籍情報
- 井堀利宏 著
- 定価:1980円(本体1800円+税10%)
- 発行年月:2016年03月
- 判型/造本:46並製
- 頁数:336
- ISBN:978-4-478-06761-1
内容紹介
“現状維持”が最悪の選択である。しかも、現在の年金・医療制度を維持する限り、世代間不公平は解消されない。財政学の第一人者が世代間対立を緩和する具体的政策を提言!
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目次
まえがき
Ⅰ部 財政赤字を楽観させる4つの誤解
第1章 誤解1 「経済成長の自然増収で財政再建はできる」
1 アベノミクスの財政運営
安倍内閣が優先する目先の景気対策/安倍内閣の死角
2 財政再建の展望
税収は減り、社会保障費は大幅に増えた/金融政策は財政再建の救世主か
楽観的すぎる内閣府の中期財政展望/増税延期は将来世代へのつけまわし
財政政策と中期的健全化は両立しない:ラッファー曲線
3 経済成長の理論と現実
中長期的な成長率は供給能力で決まる/成長戦略が有効だった試しはない
4 自然増収は前提次第で大きく見込める
自然増収を決める課税ベースと税率/税収のGDP弾性値
5 アベノミクスから地方創生へ
新型交付金の是非/地方創生は「攻める」べきか「守る」べきか
安定志向が支配する日本
6 なぜ政府は「大本営発表」をしてしまうのか
過大推計が生む負の効果/景気対策と財政再建は目的も手段も異なる
第2章 誤解2 「消費税増税は負担が大きく、先送りすべきだ」
1 消費税増税の負担は大きいか
消費税はほかの税より負担になるのか
所得税の増税もコストは消費税と変わらない
わが国の税制改革の流れ/消費税率が上がっても消費は抑制されない
等価定理は非現実的か/所得税のもつ景気調整の機能
2 増税のメリットは無視していいのか
8%への消費税率引き上げはネットで増税だった/借金財政の功罪とは?
「悪い」借金の要件/税金外の収入には限界
3 財政危機と増税
デフォルトのインパクト/放蕩息子とその親に似たギリシャとEU
財政赤字拡大の論理
4 世代間公平をどう考えるのか
時間に関する割引率と利子率/世代間の対立軸/各世代の税負担
今後はネットの増税を避けられない/貯蓄に与える増税の効果
5 消費税の軽減税率
軽減税率という名の還付制度/消費税増税の評価
第3章 誤解3 「2020年までに基礎的財政収支が均衡できれば、財政再建できる」
1 2020年までの目標達成は可能か
財政再建の道筋はついていない/歳出削減は可能か
2 問題はむしろ2020年以降にある
2025年問題で高まる歳出圧力/象徴的な新国立競技場の建設問題
安倍内閣が迎える正念場/2020年代の厳しい財政状況
3 2020年代以降のシミュレーション分析
世代重複型一般均衡モデル/財政再建シナリオ/公的年金の改革ケース
1967年生まれの前か後か/シミュレーションの政策的な含意
第4章 誤解4 「歳出削減と増税を実現すれば、2020年代以降も乗り切れる」
1 2020年代以降に持続性を維持する条件
必要とされる消費税の増税幅/消費税増税以外の選択肢
2 それでも世代間不公平は解消されない
世代間不公平の源泉は何か/少子化を食い止める難しさ
2004年の年金改正
3 賦課方式はなぜ問題なのか
年金制度と公債発行の類似点/2つの世代間格差
4 年金改正の世代損得勘定
世代モデルによる考察/確定給付の賦課方式/確定拠出方式への移行
2つの方式の損得比較/確定給付への移行は本当に可能か
5 医療における賦課方式と世代間公平
後期高齢者医療制度の迷走/年金より深刻な医療保険の持続性
介護保険の財政危機/大胆な制度改革の必要性
Ⅱ部 世代間不公平を是正する2つの施策
第5章 個人勘定賦課方式で、世代間対立を緩和させる
1 積立金の代理運用
賦課方式の枠内での改革を検討する/修正賦課方式における代理運用
運用失敗の責任は誰に?/企業年金の失敗例
2 年金での個人勘定賦課方式
世代間対立を深める賦課方式/個人勘定の賦課方式がもつメリット
具体的な制度設計/基礎年金への国庫補助/親子間で行う世代間の利害調整
公的年金の受給権も親子で「見える化」/個人勘定は子育てのインセンティブにもなる
死亡した親の年金不正受給を減じる効果
3 医療での個人勘定と家族間の助け合い
国民医療費の増大はつづく/老人医療費を親子で分担する
遺産を医療費負担として活用する/生前贈与で医療費を支払う
医療費も家族勘定にする!/家族勘定方式のメリット
個人勘定賦課方式という提案
第6章 個人勘定積立方式で自助努力を促す
1 個人勘定の積立方式が最善解
積立方式のメリット/積立方式の考え方/現実的な個人勘定の積立方式
2 私的年金の拡充
公的年金の守備範囲を限定する/定年制の延長は必要か
無年金期間への対応/NISAと企業年金の活用
3 個人勘定積立方式の制度設計
どのような仕組みが望ましいか/移行のメリットと二重の負担
賦課方式から積立方式への移行/移行のコスト
抜本改革の段階的移行方法/段階的移行方式のメリット
4 移行の費用便益分析
移行コストの試算/年金給付の削減/移行によるメリット
5 医療保険の個人勘定化
基本的な構図/現行の医療制度/医療保険にも個人勘定積立方式を
医療サービスの標準効率化/個人勘定方式を拡大する抜本改革
Ⅲ部 シルバー民主主義の克服
第7章 間違いだらけの選挙制度改革
1 シルバー民主主義の弊害
選挙区と政治家の行動/若者のほうが投票の機会費用が高い
棄権防止は望ましいのか /棄権の善し悪し/定数不均衡の弊害
2 定数是正における迷走
定数不均衡の是正/参議院の改正/野党の12増12減案
衆議院の状況/政局とのリンク
3 選挙制度改革の課題
古くて新しい問題の所在/比例区のメリットとデメリット
衆議院と参議院の差別化/衆議院と参議院のねじれ現象
選挙運動の見直し/直接民主主義か間接民主主義か
4 投票方法の改革
単記1名投票/さまざまな多数決投票制度/望ましい判断基準
望ましい投票制度:ボルダ投票/選択投票制/望ましい投票制度:是認投票
乱立野党間での選挙協力/記名投票の弊害/選挙制度改革の方向性
第8章 世代別選挙制度という選択
1 世代別選挙制度の提案
世代を意識した政策/選挙制度の抜本改革:世代別の選挙区
世代別選挙区のメリット
2 世代別選挙区を具体化する
選挙区設定のイメージ/区割りの調整方法/地理的な選挙区の区割り
世代間の利害調整/中選挙区でも導入はできる/代替的な提案:余命別選挙制度
「子供区」という選挙区/「女性区」も創設?/日本での導入にメリットがある
3 納税者投票と寄付税制
納税者投票の意義/住民税での納税者投票/市川市の1%支援制度
所得税での納税者投票/ふるさと納税で損をする将来世代
企業版ふるさと納税導入の是非/納税者投票とふるさと納税
微調整では限界がある
あとがき
著者
井堀利宏(いほり・としひろ)
東京大学名誉教授。政策研究大学院大学教授。1952年岡山県生まれ。74年東京大学経済学部卒業、81年ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学博士課程修了(Ph.D.取得)。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、95年同教授を経て、97年から同大学院経済学研究科教授、2015年に同名誉教授。同年4月より現職。2011年紫綬褒章受章。主な著書に『現代日本財政論 財政問題の理論的研究』(東洋経済新報社、1984年、日経・経済図書文化賞)、『財政赤字の正しい考え方 政府の借金はなぜ問題なのか』(東洋経済新報社、2000年、石橋湛山賞)、『「歳出の無駄」の研究』(日本経済新聞出版社、2008年)、『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA/中経出版、2015年)など著書多数。
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【目次構成】
I部:財政赤字を楽観させる4つの誤解
II部:世代間不公平を是正する2つの施策
:年金や医療は実の親子間でまかなう個人勘定積立方式に!
III部:シルバー民主主義の克服
:青年世代の選好が政治に反映される世代別選挙区の設置や選挙権年齢の引き下げを!
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