日本人のための平和論
日本人のための平和論
書籍情報
- ヨハン・ガルトゥング 著/御立英史 訳
- 定価:1760円(本体1600円+税10%)
- 発行年月:2017年06月
- 判型/造本:46並製
- 頁数:280
- ISBN:978-4-478-10081-3
内容紹介
北朝鮮問題、領土問題、拡張する中国、暴走するトランプ・アメリカ
数々の国際紛争を調停してきた平和学の世界的権威が、いま日本のため、緊急提言する。
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目次
はじめに
第I部 日本の安全保障
1 集団的自衛権 ── あと戻りできる選択か?
決断の大原則
米国の事情と憲法9条
あと戻りできない危険な道
「集団的自衛権」の本質
安倍政権がめざす「普通の国」とは
日本は踏みとどまれるか
好戦的国家アメリカ
新たな冷戦構造の中の日米関係
2 沖縄問題 ── いまだ占領下にある日本
基地問題は解決できる
米軍基地がある場所
米軍が撤退してもリスクは高まらない
安保は廃棄せず寝かせておく
「琉球」自立のすすめ
3 専守防衛 ── 丸腰では国を守れない
現実的選択としての武装
「自衛」と「専守防衛」を区別する
専守防衛のための武力
日本の防衛はどうあるべきか
非暴力不服従の力
スイスの軍事ドクトリンに学ぶ
第II部 中国・韓国・北朝鮮
4 領土問題 ── 解決のための発想転換
国家と民族を分けて考える
国境を開放すると何が起こるか
尖閣諸島の解決策
北方四島の解決策
領土問題はゼロサム・ゲームではない
そこにある解決策に気づかない理由
主権国家システムを超えて
5 中国 ── 拡張主義の背景にあるもの
隣国に共感する者は信用できない?
隣国を怖がる心理はどこから?
中国は世界をどう見ているか
中華思想を理解する
中国の拡張主義を理解する
新しいシルクロード
東洋的思考と西洋的思考
2つの世界に属する日本
6 北朝鮮 ── 理解不可能な国なのか?
日本に何を求めているのか?
拉致問題は日本への復讐
チュチェ思想とは何か
北朝鮮が核を持つ理由
北朝鮮とどうつきあうか
7 歴史認識と和解 ── 慰安婦・南京事件・真珠湾
和解のための3ステップ
日韓共同で「慰安婦」問題の事実検証を
虚偽と事実を峻別する
韓国の危険な対日感情
日中共同で南京事件を乗り越える
真珠湾と広島・長崎
8 日本の外交と防衛 ── 4つの基本政策
すべては対米追従を断つことから
領土を共同所有する
東北アジア共同体を形成する
専守防衛に徹する
真の独立国となる
米国の対日経済圧力をはね返せるか
原子力発電との決別
テクノロジーは棄てることができる
第III部 構造的暴力と戦争
9 構造的暴力 ── 戦争がなければ平和なのか?
南ローデシアで気づいたこと
何もしないことによる暴力
構造的暴力のさまざまな顔
見えない抑圧の構造
社会は進歩しているのか?
ソフト・パワーという概念の誤謬
宗教と戦争の関係
10 米国の深層文化 ── なぜ戦争をするのか?
米国の最初の軍事介入
二元論・マニケイズム・ハルマゲドン
メイフラワー号でやってきた例外主義
米国には裁く権利がある?
先制攻撃を正当化する論理
文明は衝突するのか?
「名前」が持つ世論形成効果
「日本共産党」という名前
エリート大学の深層文化
武力介入は正当化されるか
非暴力介入を成功させる5条件
暴力は先天的な人間の衝動ではない
11 テロリズム ── つくられた新たな敵
テロの起源
理解できなければ解決もできない
因果関係が見えないことの悩ましさ
イスラムから見た米国
テロリズムの4形態
米国が勝てなかった理由
ベトナムが負けなかった理由
日本がテロの標的になる日
第IV部 平和の文化をつくる
12 移民・難民と日本 ── 新しい共同体をめざして
移民・難民の問題にどう向き合うべきか
移民は労働力不足解消の手段ではない
ゆたかな共同体を取り戻す
高齢者に社会貢献の場を
ノルウェーの移民政策に学ぶ
ベーシック・ニーズの保障と社会の安定
13 平和運動への提言 ── 議論と勇気と創造力を
積極的平和のメッセージを伝えよう
日本のメディアが抱える問題
新しいメディアへの期待
もっと議論する文化を
集団主義を克服する
勇気と創造力に欠ける日本の外交
ショーペンハウアーの4段階
沈黙や嘲笑を恐れない
平和のための文学と芸術
全面的平和をめざそう
市民外交・姉妹都市のすすめ
憲法9条を真の平和憲法に
14 紛争解決のための教育 ── サボナ・メソッド
超越することで解決する
金曜日のお楽しみ
紛争解決は話を聞くことから
学校からいじめがなくなった
紛争解決を楽しむ子どもたち
各国に広がる和解の教育
たのもしい紛争解決人
付録1 10の地域共同体
付録2 日本と北朝鮮の和解に関する考察
付録3 トランセンドによる和解のための12の方法
おわりに
原注・出典
謝辞
訳者あとがき
著者
ヨハン・ガルトゥング(Johan Galtung)
1930年、オスロ生まれ。社会学者。紛争調停人。多くの国際紛争の現場で問題解決のために働くとともに、諸学を総合した平和研究を推進した。長年にわたる貢献により「平和学の父」と呼ばれる。「積極的平和」「構造的暴力」の概念の提唱者としても知られる。自身が創設したトランセンドの代表として、平和の文化を築くために精力的に活動している。
1959年に国際的平和研究機関の先駆けとなったオスロ平和研究所(PRIO)を創設し、64年に「平和研究ジャーナル」(Journal of Peace Research)を創刊した。93年にトランセンド、2004年にトランセンド平和大学(TPU)を創設。
国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連児童基金(ユニセフ)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、欧州連合(EU)、経済協力開発機構(OECD)など多数の機関で委員やアドバイザーとして重要な役割を果たした。
大学等の教育機関では多くの学生を指導した。客員教授として訪れた大学は開発途上国から共産圏まで60近くに上る。日本では国際基督教大学、中央大学、創価大学、立命館大学で教鞭を執った。名誉博士、名誉教授の称号は14を数える。
平和や人権の分野で、ライト・ライブリフッド賞(“もうひとつのノーベル賞”)、ノルウェー・ヒューマニスト賞、ソクラテス賞(ストックホルム)、ノルウェー文学賞、DMZ(非武装地帯)平和賞(韓国)、ガンジー・キング・コミュニティ・ビルダー賞(米国)など30以上の賞を受賞している。
訳者
御立英史(みたち・えいじ)
1980年、神戸大学経済学部卒業。出版社で書籍編集に携わった後、あおぞら書房代表。フリーの翻訳者、編集者、ライターとしても活動している。訳書にケン・ブランチャードほか著『社員の力で最高のチームをつくる』(ダイヤモンド社)、ロナルド・J・サイダー著『飢えの時代と富むキリスト者』(聖文舎)がある。
編集協力
ミゲール・リーヴァスミクー(Miguel Rivas-Micoud)
MHRプランニング代表。大学や予備校で教鞭をとるかたわら、多くの著名人の執筆に関わり、自身も多くの著書や記事を発表。NHK海外向け作品構成・演出等、活動は多岐にわたる。エズラ・ヴォーゲル、サミュエル・ハンチントン、カルロス・ゴーン、ピーター・ドラッカー、ヒクソン・グレイシーなどの著作でも編集協力を行った。
電子書籍は下記のサイトでご購入いただけます。
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(デジタル版では、プリント版と内容が一部異なる場合があります。また、著作権等の問題で一部ページが掲載されない場合があることを、あらかじめご了承ください。)
これは、日本人のための平和論である。
著者がはじめて日本を訪れた1968年から半世紀経った。
だが、この国が今ほどさまざまな危機にさらされ、苦しんでいるところを見たことがない、と著者はいう。
沖縄の米軍基地をめぐる日本政府と沖縄の対立は激しさを増す一方。中国とのあいだでは尖閣諸島(釣魚島)をはさんでにらみ合いが続き、韓国とは竹島(独島)、ロシアとは北方四島をめぐる対立がある。北朝鮮のミサイルの脅威も増すばかり。従軍「慰安婦」や南京事件など、歴史認識をめぐる対立には解決の糸口すら見あたらない。そんな状況に翻弄される日本が、著者には東アジアの孤児のように見えると言う。
日本を苦しめている問題の根本原因は何か。そうたずねられれば、まず米国への従属という事実を挙げなくてはならない。近隣諸国とのあいだで高まる緊張はその帰結であると、著者は言う。
そんななか、第二次安倍政権以後、安保関連法制定や集団的自衛権の容認など、安全保障をめぐる日本の政策が大きく変化している。憲法改正の動きもいよいよ現実のものとなってきた。著者は、この変化はきわめて危険なものに映ると言う。
ところが、メディアからは目立った政権批判がなく、言論空間では排外的な言説が幅をきかせ、市民感情のなかにも力による解決を容認する風潮が感じられる。
現政権への国民の支持が高いことを世界は総じて驚きの眼差しで見ている。なぜ日本人は現政権を支持するのか。著者は、日本人が代替案を知らないからだと言う。それ以外の方法を思いつかず、他に選択肢がないと思い込んでいるから、支持しているのだ、と。政治家が隣国との対立を放置し、切羽詰まると軍事力に頼ろうとするのも代替案を知らないからである。
だが、間違えてはならない。安全保障によって平和を得ることはできない。平和によって安全保障が得られるのだ。
著者は、本書で平和を実現するための代替案を提示する。
日本が米国に対して取るべき立場について、そして東北アジア諸国──2つのチャイナ(中国と台湾) 、2つのコリア(北朝鮮と韓国)、そしてロシア──との関係改善のために取り得る政策について、代替案を提示する。
これは日本人のための平和論である。
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