増補改訂版 起業のエクイティ・ファイナンス
スタートアップを成長させる「インセンティブ」の設計図
増補改訂版 起業のエクイティ・ファイナンス
スタートアップを成長させる「インセンティブ」の設計図
書籍情報
- 磯崎 哲也 著
- 定価:3960円(本体3600円+税10%)
- 発行年月:2022年07月
- 判型/造本:A5並
- 頁数:508
- ISBN:9784478116203
内容紹介
起業家やスタートアップ関係者のバイブルとして売れ続ける『起業のファイナンス』の姉妹書が、発売から7年をへて全面的に改稿されます。スタートアップをめぐる情報がアップデートされるほか、実務で多用される「J-KISS」方式などの新たなスキームも複数追加され、より「決定版」にふさわしい内容となりました。
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目次
増補改訂版に寄せて
序章 劇的に変化する日本のスタートアップ生態系
成長の決め手は「エクイティのインセンティブ」
急成長してもさらに広がる日米格差
スタートアップ生態系は究極の市場メカニズム
何がスタートアップに人を惹きつけるのか?
スタートアップ経営者に最も必要な資質は「vulnerability」
事業や数字より「組織構築」にフォーカスせよ
「人」が決めない評価
未来の成功を前借りできる「タイムマシン」
スタートアップを取り巻く環境の進展
スタートアップ活況の理由/「死の谷」を越えて成長しはじめた日本のVC/
機関投資家も日本のスタートアップに目を向け始めた/
現在のスタートアップ環境の課題
M&Aがスタートアップ生態系の変化を加速する
M&Aはなぜ徐々にしか増えないか?/M&Aの加速効果
スタートアップ生態系の中で今、何が起こっているか
起業とイノベーションとスタートアップの関係/
企業は実は結構入れ替わっている/起業を支えるファイナンス
日本のスタートアップ投資は米国の歴史をなぞる
スタートアップにもチャンスがある/「エンジェル」とは誰のことか?
本書の構成
成長するスタートアップのファイナンス/
株主構成の是正が必要な場合のファイナンス/
ベンチャーキャピタルのストラクチャー/スタートアップの未来ビジョン/
ひな型を用意
第1章 創業時から考えるべき資本政策の注意点
なぜ資本政策が重要なのか?
なぜエクイティ・ファイナンスするのか?
「成功した未来」から資金調達できる「タイムマシン」/
「時間」と「信用」を買う/自己資本は「信用の源泉」である/
株式で「仲間」を増やす
exitを考える必要性
株式以外の資金調達
クラウドファンディング/資本性ローン
上場でのexitとM&Aでのexit
基本的には上場できるほうが有利
経営者が会社をどこまでコントロールできるか
IPOでは持株全部は売却できない/企業価値と株式の購入者の数・目的も異なる/
「金だけが目的」の経営者は上場してもうまくいかない/SPACという選択肢
仲間で起業する際の資本政策
共同創業の資本政策上の問題点/「仲良し」な資本構成の実例/
創業株主間契約の例/持分の多さと返還のパターン
意外に怖い、返還時の税務
1.「個人→個人」の譲渡のケース/2-a.「個人→法人」の譲渡のケース/
2-b.発行会社自身が引き取るケース/譲渡時の税のまとめ/会社法上の問題/
「株+契約」で一体とみなせるか?/優先株式発行時の普通株式の譲渡
本章のまとめ
第2章 シード段階の投資実務
シード期に発生しがちな問題
悪いシード期のファイナンスの具体例
convertible equityは債務超過になりにくい
convertible equityの転換のしくみ
留意すべき、日米の環境の違い
新株予約権を使う方法
「J-KISS」の概要
用いられる新株予約権の内容
契約書の内容
本章のまとめ
第3章 優先株式を使った投資実務
優先株式を活用する
重要さを増す優先株式/M&Aの増加に優先株式の普及が必要な理由/
投資額の増大に優先株式が必要な理由
「pre」「post」は企業価値を表しているか?
優先株式の問題点
優先株式はどうすれば普及するか?
優先株式の法的な性質
残余財産分配権
残余財産分配権とは/「フル参加型」の残余財産優先分配権/
「非参加型」の残余財産優先分配権/「3倍」の残余財産優先分配権
定款での残余財産分配権の定め
残余財産分配権の「倍率」/登録株式質権者/「フル参加型」の分配
株式分割、株式併合や低価発行の想定
普通株式への転換(取得請求権と取得条項)
強制的な転換と端数処理
みなし清算条項
例外的なexitへの対処
事業譲渡等の場合/議決権
本章のまとめ
第4章 投資の契約実務
なぜ投資の際に契約を結ぶのか?
投資契約書の全体像
投資契約書(株式引受契約書)
資金調達の概要/資金の使途/表明と保証/払込義務
株主間契約書
議決権その他のコントロール権/役員選任権、オブザーバー権/
報告受領権と拒否権/払込後の経営者の義務/
投資家の保有する株式の譲渡の制限/買取請求権/共同売却権/契約の終了
分配合意書
みなし清算/ドラッグ・アロング(drag-along)権(売却請求権)/
新たな株主の参加
資本業務提携の実務
資本業務提携のスペクトラム/各要因間の関係と不確実性/
持株比率と契約条件との関係/シリコンバレーとの環境の違い/議決権の有無/
比率や額と、各種拒否権・事前承認事項/保有する比率と拒否権の発生/
株主間契約での対応/事業会社のインセンティブと企業価値向上
本章のまとめ
第5章 リストリクテッド・ストック
リストリクテッド・ストックとは
資本構成の是正
「スタートアップ向けリストリクテッド・ストック」とは
スタートアップ向けリストリクテッド・ストック発行の例
既存株主が持ち過ぎの例/是正せずに投資した例/
スタートアップ向けリストリクテッド・ストックによる是正の例/
リストリクテッド・ストックの条件/残余財産優先分配権と普通株式の価値/
M&Aでのexit金額と分配割合
M&AとIPOの企業価値評価の違い
会社法上「特に有利な金額」か?
他の方法で是正を行う際の問題点
無償のストックオプションを使う方法/有償ストックオプションを使う方法
本章のまとめ
第6章 スピンオフ、MBOを成功させる
社内ベンチャーと独立したスタートアップ
なぜ社内ベンチャーがうまくいかないのか?/
なぜ合理的な意思決定ができないのか?/スタートアップ向きの事業かどうか/
「タイミング」が重要/「オープン・イノベーション」のための資本政策
MBOスキームの全体像
解決すべき状況/持株会社の設立/投資家からの出資/
既存株主がすべていなくなる場合/合併等の実施/既存株主が残る場合
優先株式を活用した具体的スキーム
優先株式の設計上の工夫/持株会社の設立(普通株式)/
ベンチャーキャピタルの出資(B種優先株式)/運営会社の合併等
税務上の問題
本章のまとめ
第7章 議決権の異なる株式を用いる「dual class」
米国のdual classの活用例
Googleによるdual classの採用
Googleの取締役/経営者に「代わり」はいるのか?/
対買収戦略をとることは「悪」か?
日本版dual classのスキーム
「単元株」による議決権の設計/普通株式とB種類株式の経済的価値は同じ/
種類株主総会をなるべくしない工夫/B種類株式の譲渡制限/
B種類株式から普通株式への転換は自由/
「ブレークスルー条項」「サンセット条項」
dual classへの変更手続き
本章のまとめ
第8章 日本のベンチャー投資ストラクチャー
ここ数年で大きく変化した日本のファンド・ストラクチャー
グローバルなストラクチャーと日本の旧来型ストラクチャー
ベンチャー投資では、なぜ「個人」が重要なのか?
有限責任の重要性
有限責任が経済発展を促進してきた
パススルーの重要性
強いインセンティブを実現するストラクチャー
「組合代理」とは何か?
「組合」とは何か?
「carried interest」と「成功報酬」
なぜ株譲渡所得は分離課税で一定の税率なのか?
ベンチャーキャピタルは「金融業」なのか?
VCの業務の流れ/区分は実際にはカンタン
全体としての再分配機能
補足:組合の税務
「分配割合」が重要キーワード/組合員の所得の計算方法
本章のまとめ
終章 スタートアップの未来ビジョン
社会にとって起業/スタートアップとは何か
起業は雇用を増加させる/起業への投資は経済成長に直結する/
税収増に直結する/社会福祉に貢献する/市場メカニズムを支える機能/
多様性のある豊かな社会/「競争」がクオリティを上げる/
日本に不足しているのは「投資額の大きな競争」だ
「小型株に最適化された」IPOを打破する
小さな企業でも上場できる市場/未上場ファイナンスの拡充/
上場後の投資家の質の変化/期待される制度や生態系の改善
スタートアップに政府が関与する意味
10年後の日本のベンチャー投資のビジョン
起業を活性化させる施策とは?
施策① ベンチャーキャピタルの数と資金量を増やす
施策② 企業からスタートアップへの資金の流れを増やす
施策③ スタートアップのexitを促進する
施策④ GAAPでの未上場株式の評価を「公正価値」に
施策⑤ パススルー税制で、起業しやすい環境を作る
施策⑥ 会社法の柔軟化
スタートアップが生み出す社会の変化
「ステークを持つ」生き方
おわりに
別添
別添1 株式譲渡に関する覚書(創業株主間契約書)
別添2 A種優先株式の内容(定款)
別添3 投資事業有限責任組合契約書(LPA)の実例
別添4 合同会社(GK)の定款の実例
別添5 有限責任事業組合(LLP)契約書の実例
別添6 全体分配用任意組合の契約書の実例
著者
磯崎哲也(いそざき・てつや)
フェムトパートナーズ株式会社 ゼネラルパートナー。
1984年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。長銀総合研究所で、経営戦略・新規事業・システム等の経営コンサルタント、インターネット産業のアナリストとして勤務した後、1998年スタートアップの世界に入り、カブドットコム証券株式会社社外取締役、株式会社ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師等を歴任。2012年からフェムトでスタートアップへの投資を開始。公認会計士、税理士、システム監査技術者。著書は他に『起業のファイナンス』(日本実業出版社)。
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