SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略
SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略
書籍情報
- 保田 隆明 著/田中 慎一 著/桑島 浩彰 著
- 定価:2860円(本体2600円+税10%)
- 発行年月:2022年04月
- 判型/造本:A5並
- 頁数:416
- ISBN:9784478114445
内容紹介
ファイナンスのプロフェッショナル直伝!サステイナブル経営”実務担当者”のための決定版!国外・国内の先進企業の事例を通して「実践で使える」ファイナンス感覚を身につけることができる。株主、従業員、地球環境etc…、企業がすべてのステークホルダーに向き合うために必要な自社分析と解決策を1冊に凝縮。
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目次
はじめに
第1章 社会の分断を生む株主資本主義の限界
なぜ、企業は変わらなければならないのか
1.1 日米における株主価値経営の歴史
日本の株式市場の改革
1.2 アメリカ人夫婦の後ろに見えた、株主価値経営の本質
1.3 株主資本主義の限界
格差から生じる社会の分断
環境問題
1.4 アメリカ経営者ロビイング団体が「ステークホルダー資本主義」を宣言
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドからの学び
BRT宣言の評価
1.5 世界が注目する書簡「ラリー・フィンク・レター」とは
巨大投資家を縛る宿命
ラリー・フィンク・レターを読む
1.6 アメリカで支持されはじめた「コンシャス・キャピタリズム」という考え方
「PBC」という新しい企業形態
未公開企業のESGへのコミットメントを示す「SPOフレームワーク」
1.7 社会や環境に配慮した「公益資本主義」にお墨付きを与える世界の動き
世界77カ国、153の業界で拡がるB-Corp認証
第2章 ESG経営とファイナンス戦略のあり方を問う
投資家にも求められるエンゲージメントという考え方
2.1 なぜ「ESG」という規範が生まれたのか
世界の課題を解決するために発足した「国連グローバル・コンパクト」
2.2 ESGへの関心に見る日本と世界の差
日本に大きな後遺症を残したリーマン・ショック
2.3 似て非なるESGとSDGs
日本とは相性がいいESGの理念
2.4 ESGはCSRと根本的に違う
2.5 経営戦略の根幹を成すCSV
共通価値の創造に必要な3つの視点
2.6 長期的視点でステークホルダーの利益を実現する
グローバルリスクの大半は環境問題
未来に備える羅針盤を持つ
2.7 ESG/SDGs経営のグローバルスタンダード
第3章 新たに求められる投資家との対話のカタチ
非財務情報のファイナンスモデル構築に向けて
3.1 企業価値評価モデルの基本
3.2 ESG要素をどのように企業価値に反映させるか
ESGの定量評価は試行錯誤の段階
3.3 ESGを企業価値評価に組み込むエーザイの試み
ESGが株主価値を高めることを示したファイナンスモデル
3.4 ますます重要になる企業のIR活動
「やっているフリ」は通用しない時代
3.5 価値創造をストーリーとして語れるかがカギ
ナラティブなストーリーのお手本:ユニリーバの事例に学ぶ
価値創造ストーリー構築の簡単な方法
3.6 非財務情報に関する常識を理解する
3.7 インパクト加重会計
第4章 企業はどのように「ESGスコア」と向き合うべきなのか
サステナブルな事業の取り組みで企業成長を目指す
4.1 ESG投資を可視化する
気候変動について日本と欧米間に生じる圧倒的な温度差
4.2 世界の代表的なESG評価機関の評価手法を知る
それぞれの評価基準のスコアが異なることで生じる混乱も
4.3 「定量分析」と「定性分析」の違いを読むことのむずかしさ
4.4 ESG スコアと企業の業績や株価との関係性をどう見るのか
投資家に求められるグリーンウォッシングを見抜く力
4.5 「株価パフォーマンス」を見るときに起こるバイアスはなにか
効率的市場仮説をどう考えるかは厄介な問題
4.6 投資戦略で使われる3つのESG投資の手法とは
ダイバーシティは「イノベーション」「企業成長」に影響力がある
4.7 sin stock銘柄に見るダイベストメントの限界
株主になり、議決権を通して企業に行動変容を迫る奥の手も
4.8 PRI署名はアクティビストファンドを利するのか
企業側に必要なのは、行動変容と株主への丁寧な説明
4.9 日本企業のダイベストメントリスクはなにか
4.10 ESGフェイクの横行をどう防ぐのか
投資家に必要なのはESG投資のラベルを見抜く力
4.11 「社会的インパクト」と「投資リターンの譲歩(Concessionary Return)」をどう考えるのか
社会貢献のためにリターンの犠牲を厭わない投資家は存在しない
4.12 新たな役割を期待されるプライベート・エクイティファンド
4.13 「ESG」「企業の業績」「株価」の関係をアカデミックな視点から読む
第5章 ESG/SDGs経営を実現させるための3つのヒント
環境変化に配慮した企業変革で競争優位性を獲得する
5.1 チームを変革するための組織づくり
5.2 目標と戦略をつなげるビジネスモデルをつくる
「攻め」だけでなく「守り」も意識することが企業価値を生む
5.3 ESG/SDGs 時代にリーダーシップを発揮するための要件
経営者自らがストーリーを持って顧客参加を促そう
第6章 ケーススタディ①
企業を変革へと導いたリーダーたちの軌跡 11社の先進企業から学ぶ理論と実践
6.1 ジェットブルー 社内対話をきっかけにちいさな成功体験を積み上げてESG/SDGsの取り組みを拡大
環境負荷削減への取り組みを開始する
業界に先駆けた情報開示で環境対応を推進する
日本企業へのヒント ── 「環境対応」と「経営課題」の解決策のリンクがカギ
6.2 グーグル 自社の環境インパクトの大きさを考慮し再生可能エネルギーを調達
「Founder’s Letter」で世界的な環境問題に対する懸念を発表
ステークホルダーの協力で事業活動に用いる「100%再生可能エネルギー化」を実現
2019年、再生可能エネルギー購入のプラットフォームづくりに着手
24時間365日「カーボンフリーの事業運営」を目指すと宣言
日本企業へのヒント ── グローバル企業におけるリーダーシップのあり方
6.3 シーメンス 事業ポートフォリオの再構築による企業変革に成功
ESG/SDGs経営に大きく舵を切るきっかけとなった大規模な汚職スキャンダル
シーメンス・サステナビリティ・プログラムの3つの柱とは
2030年までにカーボンニュートラル実現を目指す
日本企業へのヒント ── ポートフォリオの見直しが課題解決の糸口に
6.4 オーステッド 化石燃料から再生可能エネルギーへ。ビジネスモデルの根本的な転換を実現
事業転換のきっかけとなった石炭火力発電所建設計画の失敗
EUの二酸化炭素排出権取引制度による大量の排出権購入義務が発生
新戦略にもとづく事業構造変革でクリーンエネルギー事業へ見事に転換
時価総額5兆円を超える世界最大級の再生可能エネルギー企業へ
日本企業へのヒント ── 10年をかけてサステナビリティを軸にした事業構造転換に成功
6.5 ネスレ CSV「共通価値の創造」を目指して事業構築と公共善を両立
食品・飲料会社からNHW企業への見事な転換を果たす
すべてのステークホルダーのための価値を創造する
日本企業へのヒント ── ステークホルダーも上手に巻き込む仕組みをつくる
6.6 ボッシュ 長期安定株主と共にサステナビリティの取り組みを拡大
いち早く環境問題への取り組みを開始
基本理念に合致した国連グローバル・コンパクトへの参加と取り組み
社会的責任として「New Dimensions-Sustainability 2025」に着手
日本企業へのヒント ── 理念を保ちつつビジネスモデル転換の仕組みを構築
6.7 シスコシステムズ ステークホルダーの再定義に沿ったESG/SDGs経営へシフト
グローバル展開を見据えた人材開発プログラムを導入
インターネットバブルの崩壊で戦略変更を余儀なくされたシスコ
BtoB事業の拡大がESG/SDGs経営を本格化するきっかけに
日本企業へのヒント ── ESG/SDGs経営方針の変更はステークホルダーの再定義ありきで考える
6.8 テスラ 経営者のコミットメントとリーダーシップで革新的なビジネスモデルを構築
EV生産の加速で「持続可能なエネルギーへの移行を加速する」にミッションを変更
日本企業へのヒント ── 気候変動という地球規模の課題解決を事業ストーリーにする
6.9 サファリコム 通信インフラの整備を機に開発途上国で金融包摂と事業成長を実現
M-Pesaのサービス開始で安全な金融インフラ提供とサービス受容者の金融包摂に成功
社会課題の解決モデルづくりを機会にアフリカのCSV普及のリーダーへ
日本企業へのヒント ── 開発途上国でシェアード・バリューを実践する考え方
6.10 BNPパリバ 革新的な金融商品の設計とエンゲージメントにおいてグローバルでリード
2002年の設立当時からESG/SDGs経営につながる「4つの責任」を宣言
エクエーター原則への参加を機に、リスク管理を強化
グリーンウォッシュ批判を受けて生物多様性に取り組む
日本企業へのヒント ── 常に真摯に批判と向き合い、革新的な金融サービスを提供
6.11 シスメックス 血液検査分野で世界をリードする企業として医療アクセス向上を実現
企業理念にもとづき、世界190カ国以上の医療機関へ製品とサービスを提供
国連グローバル・コンパクトへの参加で、ESG/SDGs経営を強化する
「持続可能な社会の実現」と「自社の持続的な成長」に向けて情報を開示
日本企業へのヒント ── 事業のグローバル展開と透明性の高いレポートを発表
第7章 ケーススタディ②
「ESG評価機関」のグローバルスタンダードを知るMSCIレポートから読み解く成功企業の取り組み
7.1 ESGスコアの改善に成功したグローバル企業の共通点とはなにか
ESG時代にはリスクをとって投資する積極性も必要
7.2 日本企業が重視するESG評価機関
評価手法に独自性があるMSCI
7.3 MSCIのESG評価手法の概要
MSCI ACWIについて
7.4 シスコシステムズ 上手なM&AでESGを事業成長の軸へ
事業の優先度にあわせてカテゴリーを変更
世界トップクラスのESGスコアを獲得
キーイシューとウェイト付け ── ガバナンスの比重が全体の33%
日本企業へのヒント ── 従業員の成長機会を設ける
7.5 シーメンス 事業カテゴリーのスピードある変更で利益率を向上
企業規模はコンパクト化したが、株式市場の評価は高まる
社会インフラのスマート化に向け研究開発と投資に注力
日本企業へのヒント ── 新規事業でも積極的に研究開発を行う
7.6 ネスレ サプライチェーンすべてを「ESGへシフト」することが目標
時価総額は10年間で58%上昇、規模より収益性を追求
直近5年間はAAを獲得、本社主導でESGスコアもアップ
日本企業へのヒント ── 従業員への投資が強い企業の基盤となる
7.7 シスメックス グローバルを意識した人材開発と品質管理プログラムで高評価
時価総額が10年間で約8倍、EV/EBITDA倍率も3倍以上へ
ESGスコアについて
日本企業へのヒント ── 一貫した「日本式ESG経営」
7.8 BNPパリバ 銀行業務のなかで重要な「資金調達」機能を提供するESG先行企業として
2016年のBBBから2020年のAAへESGスコアを改善
日本企業へのヒント ── 融資が既存事業をトランスフォームさせる
第8章 ESG/SDGs時代の「人的資本経営」のあり方
これから必要なスキル「アジリティとレジリエンス」
8.1 人的資本マネジメントが企業業績を大きく左右する時代へ
「人材投資」に対する意識の差
8.2 SDGsによる後押し
ダイバーシティの本質
8.3 取締役会に占める女性比率と業績の関係性
ダイバーシティを活かすには、組織のコンテクストが重要
8.4 女性比率とガバナンスの関係性
組織のベースとなる心理的安全性とは
8.5 最後のカギとなる「インクルージョン」
ダイバーシティ&インクルージョンとイノベーション
ダイバーシティ&インクルージョンと課題解決能力
8.6 女性比率と気候変動への取り組みとの関係性
8.7 時代の変化に適応する組織をつくる
ダイバーシティ&インクルージョンの実現
ダイバーシティ&インクルージョン的な組織づくりのチェック項目
8.8 インクルーシブな企業での共通項は「学び型の文化」
ダイバーシティ&インクルージョンの推進体制の構築
8.9 日本で求められる今後の動き
グローバル企業でも苦労しているダイバーシティ&インクルージョン
おわりに
脚注
参考文献
索引
著者
桑島浩彰(くわじま・ひろあき)
カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院エグゼクティブ・フェロー/東京財団政策研究所主席研究員/K&アソシエイツ取締役
1980年石川県生まれ。東京大学経済学部経営学科卒業。ハーバード大学経営大学院およびケネディ行政大学院共同学位プログラム修了(MBA/MPA)。三菱商事、ドリームインキュベータ、ベンチャー経営2社を経て、現在に至る。神戸大学大学院経営学研究科博士課程にて企業変革・イノベーション・サステナビリティ経営について研究中。東洋経済オンライン等に記事執筆多数。主な著書に『日本車は生き残れるか』(講談社現代新書)。北カリフォルニア・ジャパンソサエティ理事。アメリカシリコンバレー在住。
田中慎一(たなか・しんいち)
財務戦略アドバイザー/インテグリティ代表取締役
1972年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人太田昭和センチュリー(現あずさ監査法人)、大和証券SMBC、UBS証券等を経て現職。監査法人、投資銀行を通じて会計監査、IPO支援、デューデリジェンス、M&A・事業再生・資金調達に関するアドバイザリー業務に従事。現在は、アドバイザリーサービスに加え、買収後の企業変革、ターンアラウンドマネージャーとして買収先企業の再建に取り組むほか、スタートアップ企業のCFOを務める。
著書に『あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座』『コーポレートファイナンス 戦略と実践』(ともにダイヤモンド社)等。NewsPicksプロピッカー。
保田隆明(ほうだ・たかあき)
慶應義塾大学総合政策学部教授
1974年兵庫県生まれ。リーマンブラザーズ証券、UBS証券で投資銀行業務に従事した後に、SNS運営会社を起業。同社売却後、ベンチャーキャピタル、金融庁金融研究センター、神戸大学大学院経営学研究科教授等を経て、2022年4月から現職。主な著書に『コーポレートファイナンス 戦略と実践』(ダイヤモンド社)、『地域経営のための「新」ファイナンス』(中央経済社)等。専門はコーポレートファイナンスとソーシャルファイナンス。2019年8月より2021年3月までスタンフォード大学客員研究員としてアメリカシリコンバレーに滞在し、ESGを通じた企業変革について研究。上場企業の社外取締役も兼任。博士(商学)早稲田大学。
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