情熱教室のふたり
学力格差とたたかう学校「KIPP」の物語
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情熱教室のふたり
学力格差とたたかう学校「KIPP」の物語
書籍情報
- ジェイ・マシューズ:著 北川 知子:訳
- 定価:1760円(本体1600円+税10%)
- 発行年月:2013年02月
- 判型/造本:46並製
- 頁数:272
- ISBN:978-4-478-02130-9
内容紹介
親の経済格差が生み出す学力格差。低所得地域に生まれた子供たちにも機会を与え、格差を解消する方策はないか? この問いに対する答えとして、いまアメリカの教育界で注目されている組織「KIPP(キップ)」。知識は力、知識があれば未来が変わる——そう信じる2人の若き教師が全力で挑み続ける、情熱と奮闘の物語。
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目次
オリエンテーション
1時間目 はじまり──二人の教師の物語
強引さを身につける
リスクをとる者たち
公教育の救済計画
ヒューストンでの奮闘
ハリエット・ボールとの出会い
放課後の授業のはじまり
二年目の教師生活
もう一人のメンター
自習時間 現在のKIPP──ジャカンの入学
2時間目 KIPPを立ち上げる
「ナレッジ・イズ・パワー・プログラム」誕生
レヴィン先生、解雇される
生徒たち、集まれ!
“マットレス・マック”の資金援助
「誰もが学ぶ」
ポーチの大きなイヌたち
ビデオの中のキップスターたち
ニューヨークを開拓せよ
ヒューストン・ポスト紙の記事
一対一の真剣勝負
ガルフトンでの生徒の勧誘
ホワイトハウスでうたう
リー高校からアスキュー小学校へ
自習時間 現在のKIPP──ジャカン、山に登る
3時間目 二つの学校を始める
ボールから受け継いだもの
ファインバーグの恋人
「ポーチ」を離れる
ヒューストンでの再始動
市長の訪問
テレビっ子のアビー
ユタへ行こう
教育長を待ち伏せる
デイヴとフランク
「あの学校には行きたくない」
ディッペルとKIPP
ニューヨーク校、最大の危機
伝説の音楽教師
ヒューストン校三年目の苦い思い出
ディッペル先生、KIPPへ
ケネスと黄金のチケット
60ミニッツ
自習時間 現在のKIPP──ジャカンの成長
4時間目 多くの学校を始める
六人会議
ケネスはそこにいる
KIPPへの懸念
世界を見よう
きみには可能性がある
レヴィン、生涯の伴侶を見つける
レヴィンの模範授業
思い出の220番教室
卒業式
原著あとがき
著者紹介
ジェイ・マシューズ(Jay Mathews)
ワシントン・ポスト紙記者。1982年、ロサンゼルス支局長時代にスラム街の高校を取材し、一人の教師の指導によって生徒の成績が飛躍的に伸びていることを知った。以来、貧困地域の教育に強い関心を持つようになり、同紙で教育関係のコラムやブログの執筆を担当している。アメリカの公立高校のランキング「チャレンジ・インデックス」の考案者でもある。教育関係の記事の執筆によっていくつかの賞を受賞。7冊の著作のうち3冊は高校を扱ったもの。邦訳書に『あるアメリカ教師の話──No.1教師エスカランテの場合』(1991年刊、JICC出版局)。
訳者紹介
北川知子(きたがわ・ともこ)
翻訳者。訳書に『ビジネスで一番、大切なこと』、『次なる経済大国』(ダイヤモンド社)、『科学者が「起業」で成功する方法』(日経BP社)ほか。
電子書籍は下記のサイトでご購入いただけます。
(デジタル版では、プリント版と内容が一部異なる場合があります。また、著作権等の問題で一部ページが掲載されない場合があることを、あらかじめご了承ください。)
ビル・ゲイツも注目する若き教師、教育を変える!
「低所得層の子どもにいい成績を期待するのは、バレリーナにアメリカンフットボールの試合で活躍しろと言うようなもの」——アメリカでは多くの人がこのように考えている。
アメリカは日本以上に子どもの学力格差が著しい。低所得者が多く住む地域に生まれた子どもたち(移民家庭であることが多い)は、十分な教育機会を与えられることはめったにない。いやそれどころか、優れた成績を収めることを親や教師に期待されることもない。子どもたちは荒れた学校に通い、学力が低いままで、社会に出ても単純労働にしか就けずに一生苦労する。そう、親の経済格差が、結果的に子どもの学力格差の遠因となっているのだ。
この実情を前にして、なすすべなしと背を向けていられるだろうか?
生まれた家庭が貧しいというだけで、才能はあるのに可能性の芽を摘まれる子どもたちを無視することなどできるだろうか?
その問いに対して、力強い「ノー」を突きつけた2人の若き教師がいる。
マイケル・ファインバーグ、ペンシルベニア大学を卒業したばかりの24歳。人なつっこく、情熱たっぷりの授業が人気だ。もうひとりはデヴィッド・レヴィン、こちらはイェール大学出身の22歳で、授業中は生徒に矢継ぎ早に質問を投げかけ、子どもたちを1人残らず集中させる。
教師研修で知り合い意気投合した2人は、着任したヒューストンの小学校で目の当たりにした現状——低所得地域に住む子どもたちが背負わされた「学力格差」——に強い衝撃を受け、1994年に特別認可学校「KIPP(キップ、Knowledge Is Power Program)」を設立。主に低所得地域に住む子どもたちを対象に、大学進学の準備までを支援する教育環境をつくった。
設立から20年近くたったいま、KIPPのネットワークは全米20の州に125校、4万1000人の生徒たちが通うまでに成長。その目覚ましい成果はビル・ゲイツをはじめとする著名人たちにも注目されている。
「知識は力(Knowledge Is Power)、知識があれば未来が変わる」。
KIPPのネーミングの由来ともなったこの信念のもと、ファインバーグとレヴィンは子どもたちに精いっぱいの愛情を注ぎ、ほとばしる情熱で励ましつづける。アメリカという社会が抱える深刻な問題を前にしても、くじけず、立ち止まらず、とびきりの行動力で乗り越えようとする2人の男の、これは全力奮闘記だ。