自動車工場のすべて
エンジン製造・塗装・組立から生産管理の秘訣まで
自動車工場のすべて
エンジン製造・塗装・組立から生産管理の秘訣まで
書籍情報
- 青木 幹晴:著
- 定価:2420円(本体2200円+税10%)
- 発行年月:2012年11月
- 判型/造本:A5並製
- 頁数:216
- ISBN:978-4-478-01727-2
内容紹介
産業の王者である自動車業界、そのエンジン製造・塗装・組立といった製造プロセスから、生産管理の秘訣までを詳細に解説した決定版。製造業界に革新をもたらした「トヨタ生産方式」を実践し続けた著者によって、自動車業界のみならず、すべてのものづくり産業に共通する課題、そして具体的解決策までが明らかになる。
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目次
はじめに
第1章 クルマはこうして作られる── [全図解]自動車工程
01 自動車工場を俯瞰してみると ──建屋のレイアウトにも工夫がある
02 クルマづくりの全体工程図 ──「ボデーライン」「樹脂」「エンジン」の3工程に
▶ボデーライン工程 ▶樹脂成形工程 ▶エンジン工程
03 プレス工程を見る ──ドアや屋根はここで裁断・加工して作られる
04 溶接工程を見る ──ロボットがアーク溶接とスポット溶接をする
05 塗装工程を見る ──下塗り、中塗り、上塗り、そして艶出し
▶前処理はファンデーションと同じ ▶4つの「塗り工程」の意味は
06 樹脂成形の工程を見る ──バンパーなどはプラスチック射出成形で
▶バンパーやインパネを作る ▶樹脂工場は組立工場のそばに
07 エンジン鋳造を見る ──鋳型に流し込んで作る
▶鋳型に流し込む「鋳造法」 ▶ヘッド、ブロックを作る
08 エンジン鍛造を見る ──強靭さが要求される部品は「鍛造」で
▶ハンマーで鍛えて作る原理 ▶軽さと強靱さとを兼ね備える
09 機械加工を見る ──鍛造、鋳造を経た部品を磨いたり、削ったり
▶刃具を使ってバリ取りまで
10 エンジン組付ライン ──クルマにとって最も重要な部品を組み上げる
▶ブロック部とヘッド部 ▶車両組立ラインのミニ版
11 組立工程で完成! ──最後の仕上げは何から始める?
▶混流生産、作業シート…… ▶インパネからエンジン設置まで ▶検査工程へ
12 電気自動車を作る工程 ──モーター、バッテリーを新たに搭載
▶エンジンからモーターへ
コラム 東日本大震災へオールジャパンで対応した自動車業界
第2章 クルマ作りの工程とかんばん [生産管理]
01 工場全体をうまく回す仕掛け ──あんどん、かんばんとは何か?
▶「後工程→前工程」…の逆発想 ▶「かんばん」とは何か
▶仕掛けかんばん、引き取りかんばん ▶かんばんはお金と同じ
▶「電子かんばん」とは? ▶「あんどん」とは?
02 車体工場・組立工場のかんばん ──かんばんが工場をうまく回転させる
▶信号かんばんと工程 ▶電子かんばんと工程 ▶納入順を指示する
03 鋳造工場とかんばん ──赤かんばん、青かんばんと鋳物の工程
▶工程内かんばん(赤かんばん) ▶工程内かんばん(青かんばん)
04 鍛造工場とかんばん ──鍛造品を引き取りに行く仕掛け
▶調質炉とかんばん ▶磁気探傷検査法
▶信号かんばん(型手配・材料手配) ▶青欠品かんばんと工程
▶赤欠品かんばんと工程 ▶鍛造にも「鋳型」がある?
▶鍛造は費用処理、プレスは固定資産
05 成形工場とかんばん ──大物だけに在庫を持てず
▶成形工場と工程 ▶段取りを最短に
06 機械工場とかんばん ──ワークの進度にそってかんばん掛けを移動させる
▶機械工場と工程 ▶車両電子かんばんと工程 ▶エンジン電子かんばんと工程
07 ミスがあることを前提に ──うっかりミスはZEROにならない!
▶混流ラインでの部品選択の工夫
第3章 [知恵と工夫]が自動車工場を効率化する!
01 「機械仕掛け」は「電気仕掛け」に優る ──なぜフレーム塗装炉はU字型か
▶U字型だと何がいいのか? ▶機械仕掛けの生産管理板 ▶現地現物、目で見る管理
02 工場を新設するのはもったいない ──ピンポンかんばん、円盤かんばん
▶完成品ストアという関所 ▶工場の新設はムダ
▶ピンポンかんばん ▶円盤かんばん
03 コインかんばんで「見える化」 ──リフトマンはコインかんばんで動く
▶シャシーだけでもクルマは走れる ▶「あんどん→集中管理板」へ
▶コインかんばんの処理の順 ▶リフトマンの処理
04 なぜエンジン組付で現物確認? ──生産計画通りに進めてはいけない理由
▶エンジン組付は小さなクルマ作り? ▶現物確認の必要性
▶前組付ラインでの現物確認 ▶後組付ラインの現物確認
コラム 工作機械にはトヨタ式も通じず
第4章 [平準化仕掛け]がかんばんを支える!
01 「1個流し生産」での品質管理 ──オシャカの原因を現行犯で捕まえる!
▶ロット生産での弊害とは ▶オシャカの原因は不明のままに
▶ロット生産を打破する発想 ▶現行犯で「不良品」を発見せよ
▶次工程の作業者がチェックする
02 「平準化」が かんばんを支える ──1日の生産数量が決まれば納入タイミングも決まる
▶注文に応じて組み立てる ▶組立ラインと前工程との関係 ▶部品メーカーとの連動
03 平準化と人員のやり取り ──優秀な社員から応援・異動をさせる真因とは?
▶毎月の生産台数をどう決めるか ▶月変動には「正社員」の応援で対応
▶優秀な社員から応援に出す理由 ▶マンツーマン教育はしない
▶海外はフル生産、調整は国内で
04 平準化生産へ進化させる ──「在庫は悪だ」をどこまで本気で思えるか?
▶バラバラな車種がラインを流れる ▶平準化ができて、かんばんが生きる
▶まとめて作れば在庫が必要に ▶ムダなコストでいっぱい
▶滞留ロスはムダなコストを作る ▶在庫は悪だ!
05 段取り替えを1/60に圧縮 ──「できるかできないか」ではなく、「やる」
▶大野耐一の信念が岩をも動かす ▶段取り替え時間を1時間まで短縮
▶段取り替え3分を達成
第5章 [運搬]にも知恵を働かせる
01 つるべ運搬、水すまし運搬 ──運搬にも知恵を働かせてみる
▶つるべ運搬でタイミング遅れを是正 ▶水すまし運搬でスイスイ
02 在庫管理か、在庫無し管理か? ──「倉庫を持たない」という強い決意
▶問題発生でラインが即ストップ ▶倉庫のないイメージ
▶問題発生でも止まらない工場 ▶ムダがムダを生んでいく悪循環
▶かんばんの前提=納入の定期便
03 エンジンの積み方・出荷の工夫 ──エンジン工場と組立工場が隣接している場合の出荷方法
▶決まらないエンジン搭載順序 ▶出荷方法は
▶運転手の乗り継ぎ方式
04 実空運搬でスムーズに ──「組立ラインへの供給」をはじめから考える
▶出荷段階から組立ラインを考える ▶実空運搬の手順
第6章 [ポカヨケ]は失敗の研究から始まる
01 ポカヨケの工夫 ──発生防止のポカヨケ、流出防止のポカヨケ
▶ポカヨケ事例① ▶ポカヨケ事例②
▶ポカヨケ事例③ ▶ポカヨケ事例④
02 全数検査と同じ効果をあんどんで ──ちょっとした知恵が解決に導く
▶全数検査はしたいけれど…… ▶刃具(タップ)交換
▶品質チェック ▶最後のワークをチェックする
第7章 [標準作業票]のあくなき進化が「工場の進化」につながる!
01 標準作業票を作る ──「ムダ発見」はここから始まる
▶標準作業票は現状把握のツール ▶標準作業票の作り方
▶標準作業票の新人への教え方 ▶標準作業票での改善法
02 工場での問題解決 ──標準作業票も「進化」する理由
▶最高の叡智を結集した標準作業票 ▶標準作業票も書き換えられる
▶基準があるから改善もできる ▶2つの基準が必要
03 組立ラインでの作業遅れ対策 ──「あんどん」以外にも注意信号を伝える方法を考え出す
▶1台作るのに20時間かかるが…… ▶組立ラインの要員配置と標準作業
▶2工程に作業遅れが発生した場合 ▶作業の遅れをどのように知るのか
▶作業者がラインを止める3方式 ▶作業が遅れたら自然に止まる方式
コラム 上海企業で現場作業員がトヨタ式に猛反発⁉
第8章 [トヨタ流]自分を高める仕事術
01 独特なトヨタ流・問題解決手法 ──A3用紙の使い方から中堅社員の研修まで
▶トヨタ流の問題解決手順 ▶新入社員のテーマ発表
▶中堅社員「基礎研修」 ▶中堅社員「特別研修」
02 自主研いろいろ ──担当以外の仕事のノウハウを期待できる
▶1年を通じての自主研 ▶個人の能力を拡大できるメリット
03 トヨタ警察、トヨタ消防? ──ネズミ捕り、出初め式まで行なう彼らの正体は?
▶敷地内をパトカーが走り回る? ▶工場長もウカウカできない?
04 工場に点在する事務所 ──至急、駆けつけるために
▶エンジン工場の事務所 ▶事務所内を見てみると
▶機械ストップ時こそ「勉強」タイム ▶不明点は「聞きまくる」
コラム IT企業にもトヨタ式は使える!
エピローグ 韓国・中国企業はどう変わってきているのか?
❶カイゼンにどん欲な韓国、中国企業
▶「プライド」が吸収を邪魔する日本企業
▶地勢的に「愛知県に似た韓国」「アメリカに似た中国」
❷韓国タイヤメーカーの変貌
▶すべてに「競争原理」が働く ▶6つの韓国流カイゼン事例
▶日本企業が世界でいちばん遅れている? ▶乾いたタオルを絞る
❸中国溶接機メーカーの改善事情
▶目標に向かってまっしぐらな中国企業 ▶部品納入体制の整備指導
▶コンベアの使い方の改善指導
❹電気自動車はエンジン車を駆逐するか?
▶高価であること、材料の懸念 ▶充電による航続可能距離が短いこと
▶充電インフラができない ▶3種類のクルマが併存する
さくいん
著者
青木 幹晴(あおき・みきはる)
1955年、愛知県豊橋市生まれ。78年、早稲田大学商学部を卒業。トヨタ自動車工業に入社以来、人事部、経理部、財務部などの本社機能を経て、本社工場(原価グループ、生産管理室)、米州事業部、田原工場(原価グループ、生産管理室)などを経験。一貫して、トヨタ生産方式の「石垣」とも言える「生産管理・原価管理・要員調整」の実務を担当し、さらに「天守閣」の「トヨタ生産方式(TPS)現場改善」までを実践。トヨタ生産方式部課長自主研メンバー。「かんばんのフローラックラベルへの活用」などで多数の表彰を受ける。2004年、基幹職のチャレンジキャリア制度(転出促進制度)に応じ、40代でトヨタ自動車を退職(退職時資格課長級)。豊田生産コンサルティング株式会社を設立。現在、講演活動や数多くの企業でTPS導入指導を行なっている。
主な著書として、『全図解トヨタ生産工場のしくみ』『全図解トヨタ生産工場 ポカヨケのすべて』(以上、日本実業出版社)、『トヨタ生産方式導入の奥義』(ナツメ社)などがある。