パラドックス思考
矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる
パラドックス思考
矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる
書籍情報
- 舘野泰一 著/安斎勇樹 著
- 定価:1980円(本体1800円+税10%)
- 発行年月:2023年02月
- 判型/造本:46並
- 頁数:368
- ISBN:9784478117095
内容紹介
パラドックス思考とは、問題の背後にあるパラドックス(矛盾)に着目し、VUCA時代に溢れる両立困難な課題を乗りこなす思考法。「切替戦略」「因果戦略」「包含戦略」の3つの戦略を使い分けることで、二者択一の答えに嵌まらない新たな解決策を導く。アイデア発想、キャリア形成などの創造性開発にも活用できる。
目次・著者紹介詳細を見る▼
目次
はじめに
PART 1 理論編
第1章 パラドックス思考とは何か
1・1 現代社会の“厄介”な問題
現代社会に渦巻く「ややこしい問題」の特徴
ビジネス書に頻出する「VUCA」という言葉の本質
外的なストレスが「感情のわからなさ」を生み出す
1・2 感情パラドックスとは何か
パラドックスとは何か?
論理パラドックスと感情パラドックス
「自由に働きたい」という感情が生み出すパラドックス
寛容さは不寛容を助長する?あらかじめ矛盾を許容する重要性
パラドックスとジレンマの微妙な違い
人間は矛盾をすぐに「なかったこと」にしたがる
人間とは、めんどくさいけれど愛らしい、矛盾に満ちた存在である
1・3 パラドックス思考の3つのレベル
「感情パラドックス」といかに向き合うか
第2章 パラドックスを生み出す“心”の構造
2・1 多彩な感情はどのように生まれるか
感情のグラデーションと組み合わせ
神経科学から見る感情のメカニズム
複雑な感情を生み出す“心”の構造
2・2 精神の構造:目を背けたくなるコンプレックスの働き
自覚できない「無意識」にしまい込まれた感情
誰しも持っているコンプレックスは、時に暴走する
心を守ろうとする動きが、矛盾した感情を生み出す
コンプレックスは、変化のエネルギーの源泉にもなる
3・3 動機の構造:コントロールできない「やる気」の不思議
人間は「不快」を回避し、「快」に接近したがる
「やりたい」と「やらねば」は衝突する
「好きなことで、生きていく」のパラドックス
芸人の「一発屋」はなぜ生まれるのか
“飽き”が生み出す動機のパラドックス
第3章 パラドックスを生み出す“世界”の構造
3・1 この世界は矛盾に満ちている
組織の構造が、矛盾に満ちた要求と関係性を生み出す
社会を統治するシステムもまた、矛盾に満ちている
3・2 組織の構造:階層と権限が生み出すさまざまな問題
人は境界線を引くことで「集団」を作りたがる
どんなコミュニティも、関係性を維持することはできない
集団の階層化によって消失していく“仲間感覚”
組織における「チームの対立」が生み出す“仲間内の敵”
集団の役割分担と役割外行動のパラドックス
トップダウンとボトムアップの狭間に立たされたミドルの葛藤
抑圧されたリーダーが生み出す、ダブルバインドメッセージ
3・3 社会の構造:降りたくても降りられない“無理ゲー社会”
政治と経済のシステムが生み出す、競争と共同のパラドックス
資本主義は「競争」を煽り、少数派の勝者に総取りさせる
民主主義は「共同」を期待し、多数派の合意を尊重する
降りたくても降りられない、行きすぎた資本主義
負けたくないが、勝てる気もしない、戦意喪失社会
知名度がものを言う社会が“炎上”の不安を日常化させる
社会統治と監視のパラドックス
“プライバシー”を巡る、安心と刺激のパラドックス
犯罪は社会の統治に不可欠である!?
現実から目を背ける「気晴らし」のエネルギー
既存の枠組みに「革命」を起こす、逸脱行為
「風が吹けば、桶屋が儲かる」かもしれない複雑な因果
第4章 パラドックスの基本パターン
4・1 パターン【素直⇄天邪鬼】
こじらせて、素直になれない【素直⇄天邪鬼】パターン
4・2 パターン【変化⇄安定】
変わりたいけれど、変わりたくない【変化⇄安定】パターン
“しがらみ”から解放された「自由」は、長くは続かない
4・3 パターン【大局的⇄近視眼的】
木と森は、同時に見られない【大局的⇄近視眼的】パターン
神は細部に宿る!? “森を見て木を見ず”に注意
4・4 パターン【もっと⇄そこそこ】
過ぎたるは、及ばざるがごとし【もっと⇄そこそこ】パターン
「自由」も「関係性」も“程よい”くらいが一番
4・5 パターン【自分本位⇄他人本位】
自分のためか、世のため人のためか【自分本位⇄他人本位】パターン
PART 2 実践編
第5章 パラドックスを受容して、悩みを緩和する
5・1 自己受容は悩みを緩和する
悩みの原因は、感情パラドックスに「気づいていない」こと
感情を「メタ認知」して、パラドックスを自分から切り離す
問題解決からあえて離れて、自分の隠れた感情を覗き込む
悩みを“平凡化”して、ツッコミを入れると楽になる
5・2 パラドックスを発見する手順
感情パラドックスを発見する5つの手順
STEP1:頭に浮かぶ「悩みのタネ」を書き出す
STEP2:悩みのタネを「マトリクス」に整理する
STEP3:解決したい「問題」を1つに定める
STEP4:問題を取り巻く「感情」を深掘りする
STEP5:感情をパラドックスの形式で記述する
5・3 心の奥底の「隠れた感情」の発掘法
心の奥底に潜んでいる感情を、いかに掘り起こすか
反転感情チェック:真逆の感情があるとしたら?
嫉妬心チェック:嫉妬していることはないか?
承認欲求チェック:言われると嬉しい褒め言葉は?
優柔不断チェック:なかなか決められないことは?
制約撤廃チェック:もしあの制約がないとしたら?
他人視点チェック:周囲からのツッコミどころは?
第6章 パラドックスを編集して、問題の解決策を見つける
6・1 感情パラドックスを「編集」する
「編集」によって感情パラドックスをリフレーミングする
「犠牲」ではなく「両立」のストーリーを探る
「点」ではなく「線」で乗り越える
6・2 感情パラドックスを編集する手順
感情パラドックスを編集する4つの手順
STEP1:犠牲のストーリーを特定する
STEP2:自らの感情を深掘りする
STEP3:感情A・Bの関係性について整理をする
STEP4:両立のストーリーを検討する
6・3 切替戦略:振り子のようにアクションする
シンプルな「切替戦略」で着実に両立する
切替戦略を実行する手順
(1)現状のリソース(時間)を確認する
(2)追加のリソース(ヒト・モノ・カネ)を検討する
(3)切替を行う「時間軸」を検討する
(4)切替の「条件」を設定する
切替戦略で「何をしていても憂鬱」から解放される
6・4 因果戦略:意外な“AだからこそB”を探る
“一石二鳥”を目指す「因果戦略」
因果戦略を実行する手順
(1)「AだからこそBである」「BだからこそAである」に当てはめる
(2)「必然のストーリー」を具体化する
パラドックスの基本パターンと「因果戦略」
遊び心で「必然のストーリー」を作る
6・5 包含戦略:新たな“感情C”を見出す
“ウルトラC”の解決策を見つける「包含戦略」
包含戦略を実行する手順
(1)両立を願う「欲張りの源泉」を考える
(2)“ウルトラC”の解決策を生み出す
応用編:リーダーシップとしての「包含戦略」
(1)私たちの「欲張りの源泉」を考える
(2)組織の「外」と「内」に向かう感情Cを明確化する
(3)チームレベルの“ウルトラC”の解決策を生み出す
「真善美」を問い続ける
第7章 パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める
7・1 創造の手段としてのパラドックス思考
感情パラドックスは、人と集団の創造性の源泉になる
受け手の感情パラドックスを「理解」することで、本質的なアイデアを生み出せる
作り手の感情パラドックスを「刺激」することで、固定観念を揺さぶる
パラドックス思考は「キャリア」を彩り豊かにしてくれる
集団的なパラドックス思考で「組織」の創造性を解放する
アイデア、キャリア、組織に戦略的に「刺激」を忍ばせる
7・2 パラドックス思考で「アイデア」を揺さぶる
ユーザーの「欲しいもの」には、必ず「嘘」がある!?
ユーザーの「隠れた感情」を暴いて、アイデア発想に活かす
オンライン疲れを乗り越える“出会えない自己紹介”
既存のアイデアに固定化された「特定の感情」を揺さぶる
7・3 パラドックス思考で「キャリア」を揺さぶる
人生100年時代の「連続スペシャリスト」という生き方
キャリアの“マンネリ”を打破するための4つのヒント
ヒント① 惰性で満たされている感情を反転させる
ヒント② 仕事の目的と手段の関係性を逆転させる
ヒント③ 適度な“無理ゲー”を仕立てて自分を鼓舞する
ヒント④ 越境学習とワーケーションで“外”を作る
7・4 パラドックス思考で「組織」を揺さぶる
パラドックス思考でコラボレーション時代を乗り越える
プロジェクトに相反する「2つの目標」を設定する
メンバー同士の矛盾した感情は「対話」で乗り越える
組織の経営理念にパラドックスを埋め込む
「水と油」の相容れない集団を融合させ、新たな集団を生み出す
異なるこだわりを持った集団を、1枚の「絵」で結び合わせる
おわりに
著者
舘野泰一(たての・よしかず)
立教大学経営学部 准教授
株式会社MIMIGURI Researcher
1983年生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員、立教大学経営学部助教を経て、現職。博士(学際情報学)。専門分野は、リーダーシップ教育、ワークショップ開発、越境学習、大学と企業のトランジション。主な著書に『これからのリーダーシップ:基本・最新理論から実践事例まで』(共著・日本能率協会マネジメントセンター)、『リーダーシップ教育のフロンティア:高校生・大学生・社会人を成長させる「全員発揮のリーダーシップ」』【研究編・実践編】(共著・北大路書房)など。
安斎勇樹(あんざい・ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
東京大学大学院 情報学環 特任助教
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。研究と実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について研究している。組織イノベーションの知を耕すウェブメディア「CULTIBASE」編集長を務める。主な著書に『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』(共著・学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション:「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)など。
電子書籍は下記のサイトでご購入いただけます。
(デジタル版では、プリント版と内容が一部異なる場合があります。また、著作権等の問題で一部ページが掲載されない場合があることを、あらかじめご了承ください。)