シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問
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シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問
書籍情報
- パトリック・キングズレー 著/藤原朝子 訳
- 定価:2200円(本体2000円+税10%)
- 発行年月:2016年11月
- 判型/造本:46上製
- 頁数:376
- ISBN:978-4-478-06885-4
内容紹介
450万もの人が国を追われる——泥沼化する難民危機の「最前線」で、いったい何が起こっているのか? 『ガーディアン』紙初の移民専門ジャーナリストが、シリアからスウェーデンまで3大陸17か国をともに歩き、EUの分裂、ISISの台頭、相次ぐテロにつながる問題の本質をあぶり出した迫真のノンフィクション。
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目次
プロローグ ハーシムの「旅」のはじまり
2015年4月15日 水曜日 午後11時
▪戦後最悪の難民危機は「誰」が引き起こしたのか?
▪3大陸17か国を難民と同じ目線で歩く
第1章 祝えなかった誕生日
ハーシム、シリアから脱出す
2012年4月15日 日曜日 午後6時 シリア
▪強制連行・監禁・拷問 ── アサド政権下のシリアの真の姿
▪イスラム国の勃興、そして2度目の逮捕
▪祖国を“捨てる”決意
第2章 その「荷」は生きている
「第2の海」サハラを越える砂漠ルート
ニジェール、スーダン
▪ニジェールからリビアへ ──「運び屋」が産業と化した西サハラルート
▪「人」を扱う商人と、拡大する「市場規模」
▪スーダンからリビアへ ── 身代金ビジネスが跋扈する東サハラルート
▪寛容なヨーロッパの不寛容な主張
▪エリトリア ── 史上最も平等主義的な解放闘争は、なぜ独裁国家に墜ちたのか?
▪難民と移民を分けることが無意味である3つの理由
第3章 魂の取引
密航業者のモラルとネットワーク
リビア、エジプト
▪10年の「キャリア」を持つ密航業者ハッジ
▪リビアからイタリアへ ── アラブの春、カダフィ、イスラム国に彩られた海の道
▪内戦中の国で「元締め」を探して
▪すべての「移民」はリビアで「難民」になる
▪「自分が人間であることを憎んだ」 ──「待機所」で繰り返されるおぞましき所業
▪密航業者の思考回路と先進国の「共犯関係」
▪密航ビジネスはいかにして莫大な利をもたらすのか?
▪鳴り物入りのヨーロッパの作戦、その滑稽な顛末
▪「密航業者に頼るしかなかった」 ── 難民たちの悲壮な本音
▪もう一つの「外玄関」エジプトに君臨する密航業者「ハマダの父」
▪いったい誰が誰を搾取しているのか?
▪密航業者たちの堂々たるSNSマーケティング
第4章 屈辱からの出航
ハーシム、密航船に詰め込まれる
2015年4月20日 月曜日 正午 地中海のまんなか
▪「船には女子供もいる。どうすればいいかわからないんだ」
▪暗雲漂うエジプトで待っていた屈辱の日々
▪2ポンド札1枚と秤にかけられたハーシムの命
▪「あれは不運な出来事だらけの1か月」
▪家族を残して、たった1人の「出航」
▪はたして、「約束の地」イタリアにたどり着けるのか?
第5章 転覆か、救助か
なぜ危険だとわかっている航海に乗り出すのか
地中海、イタリア
▪900人が溺死した最悪の事故
▪「救援活動が移民を呼び寄せている」は本当なのか?
▪たとえ見殺しにされようとも、彼らの決意は揺らがない
▪間違いだらけのEUの「仮説」
▪地中海を漂うおびただしい数の人の運命を背負う凸凹コンビ
▪「国境なき医師団」による救援活動、緊迫の瞬間
▪「あなたを見て、私たちは動物から人間に戻れた
▪誰にも見つけられなかった密航船はどうなるのか?
▪かつて同じ道をたどったエリトリア人通訳に起きた奇跡
▪イタリアで待ち受ける無情な仕打ち ── 再び、人から「数字」に
第6章 ストレスだらけの「約束の地」
ハーシム、ヨーロッパで戸惑い逃げる
2015年4月26日 日曜日 午前11時30分 イタリア、フランス
▪ハーシムに訪れた最大の危機
▪新たな大陸がもたらした新たな問題
▪オーストリア経由? フランス経由?
▪ニースの地で ── 安全を求めて逃げる難民と観光客が交錯する
▪独仏国境で訪れた再びの危機
第7章 運命を司る「見えない線」
国境に翻弄される難民とEU
トルコ、ギリシャ、セルビア、マケドニア、ハンガリー
▪ギリシャ・レスボス島に上陸した「現代のアイネアス」
▪ひょんなことから緊急対応チームを率いることになった老夫婦
▪そこには反感も排斥もなかった
▪イスラム国とアサド政権、どちらが難民危機の原因なのか
▪「シリア人が安全かつ無料で安全圏に到達するルート」
▪資金援助で問題を解決できるのか?
▪救命胴衣とブローカーの街となったイズミルで
▪密航業者となったシリア人難民が明かした儲けのしくみ
▪ギリシャ・コス島で逃げた市長を追う
▪封鎖されたマケドニア国境の実態
▪戦略的拠点「ハラ・ホテル」── 難民危機が生んだ皮肉な活況
▪1歳の子を連れて放浪する夫婦の物語
▪「行くしかないんだ。家族を守らなくちゃいけない」
▪ドラマチックな景色の中を歩く「葬列」
▪誰かが引いた「見えない線」に命がかかっている
▪ハンガリー国境のフェンスは何を守っているのか?
▪アフガニスタン難民がたどる厳しい「旅路」
▪優秀なビジネスマンたちの陽気な逃避行
▪難民からヨーロッパはどう見えているのか
▪「そんな壁、認めるもんか」
第8章 訪れた最後の試練
ハーシム、待ちわびた瞬間まであと一息
2015年4月27日 月曜日 午前11時50分 ドイツ、デンマーク
▪ハーシム、警察に怯えながらドイツを北へ
▪コペンハーゲンで直面した最後の試練
第9章 「門戸」を閉ざされて
根本から解決する方法はあるのか
ハンガリー、オーストリア、セルビア、クロアチア
▪オーストリアの老ユダヤ人は、なぜ国境越えを手伝うのか?
▪世論の潮目が変わった3歳の男の子の遺体写真
▪難民流入は抑え込めない ── 悟りはじめたEUのバラバラな対応
▪過去の難民危機のサバイバー、現代の難民危機のサバイバー
▪「私たちはみんな人間よ」
▪国境封鎖の瞬間、何が起こったか
▪クロアチア国境で引き裂かれる家族
▪「きちんと管理すればいいじゃないか。そうしないから……」
▪パリ同時多発テロ事件が明らかにした抑止策の失敗
▪解決策は一つしかない
第10章 世界に「居場所」を求めて
ハーシム、難民認定を待つ
2015年10月23日 金曜日 正午 スウェーデン
▪スウェーデンに来て半年がたつのに
▪世界における自分の居場所
▪エジプトに残した家族の苦境
▪「これ以上ベッドがない」 ── 混乱するスウェーデン
▪受け取ったカード、そこに書かれていたものは……
エピローグ そのあと起きたこと
▪ハーシム・スーキからのメッセージ
▪著者による注釈
▪謝辞
日本の読者のために ── 難民危機の最新情報
訳者あとがき
参考文献
著者
パトリック・キングズレー(Patrick Kingsley)
英国『ガーディアン』紙初の移民専門ジャーナリスト。2013年には記者に贈られる「フロントライン・クラブ・アワード」を、また2014年にはBritish Press Awards主催の「ヤング・ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ若手ジャーナリスト。同紙エジプト特派員からキャリアをスタートさせ、これまで25か国以上からレポートを発信している。本書でも中心的に取り上げられるシリア難民ハーシム・スーキの旅をドキュメントしたガーディアン紙の連載記事『ザ・ジャーニー』で、2015年英ジャーナリズム賞の外国特派員賞を受賞。
訳者
藤原朝子(ふじわら・ともこ)
学習院女子大学非常勤講師。フォーリン・アフェアーズ日本語版、ロイター通信、ニューズウィーク日本版などで翻訳を担当。訳書に『MAKE SPACE メイク・スペース』、『ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと』(ともにCCCメディアハウス)、『未来のイノベーターはどう育つのか』(英治出版)、『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』、『シフト』(ともにダイヤモンド社)など。
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