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過去20年の「12月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2023年12月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!
為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。
特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。
この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「12月」のデータを集計して、2023年12月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。
12月は「ユーロ高」と「ニュージーランドドル高」のアノマリーに注目!
過去20年でユーロ/円は14回、ニュージーランドドル/円は15回も上昇!
はじめに、月足の統計データで12月のアノマリーを確認していきましょう。
下の表は主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べた中から、日本のFXトレーダーの取引量がもっとも多い米ドル/円と、12月に注目したい傾向のある通貨ペアの、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると12月はまず、ユーロ/円、ユーロ/米ドル、ユーロ/英ポンドで陽線の出現回数が14回と多く、「ユーロ高」になりやすいアノマリーがあります。
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これは、12月が1年の最後の月となるため、投資家が保有している為替や株式などのポジションを、年末に向けて整理する動きが活発化することも影響していると考えられそうです。
外国為替では、東京(日本)・ロンドン(英国)・NY(米国)が世界三大市場として知られていますが、国際決済銀行(BIS)が2016年に調査した国別の1日あたりの取引高によると、その中でも英国が37%(約270兆円)で世界一となっていて、2位の米国の20%(約142兆円)と比べても2倍近い取引高があります。
外国為替市場で米ドルに次ぐ取引高のユーロは、ユーロ圏と英国が地理的にも近く貿易が盛んなこともあって、特にロンドン市場で取引が集中します。そうした中で、年末に向けたポジション整理も加わることでユーロ高の傾向が確認できるというのは、注目したいアノマリーです。
また、12月はニュージーランドドル/円とニュージーランドドル/米ドルで15回、ニュージーランド/カナダドルで16回と陽線の出現回数が多く、「ニュージーランドドル高」のアノマリーもあります。
南半球に位置する酪農が盛んなニュージーランドでは、春にあたる9月~11月に搾乳が最盛期を迎え、夏となる12月から、ミルクやチーズなどの加工品の輸出が増加します。そのため、12月は輸出によって獲得した外貨をニュージーランドドルに替える動きが強まり、ニュージーランドドル高になりやすいと考えられるので、こちらのアノマリーにも注目です。
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米ドルは日足で1日の「米ドル安」、19日の「米ドル高」、
29日の「米ドル安」アノマリーに注目!
次に、日足の統計データの中から、12月に注目しておきたいアノマリーを紹介しましょう。
下の表は、過去20年間における主要な通貨ペアの12月の日足を数え、その中から米ドルが絡んだ通貨ペアの日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすかったということがわかります。なお、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。
これを見ると、まず、12月1日の陽線の出現確率がユーロ/米ドルと英ポンド/米ドルでは73%、豪ドル/米ドルでは78%、ニュージーランドドル/米ドルでは82%と高く、米ドルが基軸通貨(分子側)の米ドル/円と米ドル/スイスフランでは20%台と低くなっていることから、「米ドル安」のアノマリーがあることがわかります。
また、19日は英ポンド/米ドルで14%、ニュージーランドドル/米ドルで19%と陽線の出現率が低いため、「米ドル高」になりやすいアノマリーが確認できます。
さらに、今年(2023年)の最終営業日となる29日の陽線の出現確率は、豪ドル/米ドルでは88%と高く、米ドルが基軸通貨の米ドル/カナダドルと米ドル/スイスフランでは20%と低いため、「米ドル安」になりやすいアノマリーがあります。
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このことから、12月の米ドルは1日の「米ドル安」、19日の「米ドル高」、29日の「米ドル安」に注目です。
26日~27日にかけては強い「円安」アノマリーにも警戒! 特に、26日の
豪ドル/円とニュージーランドドル/円は100%の確率で「円安」に!
同じように、過去20年間における主要な通貨ペアの12月の日足を数え、その中から日本円が絡んだ通貨ペアの日別の「陽線」の出現確率をまとめたものが以下の表になります。確率が高ければ陽線(円安)になりやすく、確率が低ければ陰線(円高)になりやすかったということがわかります。こちらも、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。
これを見ると、今年は最終週にあたる12月26日から27日にかけて、強い「円安」のアノマリーが確認できます。特に、26日は豪ドル/円とニュージーランドドル/円で陽線の出現確率が100%と、過去20年間では営業日だったときはすべて陽線(円安)という、非常に強いアノマリーがあります。
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また、27日もユーロ/円とスイスフラン/円で90%、豪ドル/円とニュージーランドドル/円で80%と、陽線の出現確率がかなり高いため、26日と27日の「円安」には注目です。
ただし、外国為替市場では例年、クリスマスが終わると年始にかけて、取引高がかなり少なくなる傾向が確認できます。流動性が低下するため、FX会社の提示するスプレッドが普段より広くなる可能性があります。
加えて、12月25日のクリスマスは日本を除く多くの国が祝日となるため、この日は例外的に夕方以降は取引を休止するFX会社がほとんどで、中には25日を終日、休業とするFX会社もあります。
翌26日も、多くの国がボクシング・デーなどの祝日で市場の流動性が乏しいため、26日と27日の円安アノマリーを活用した取引を検討する人は、トレードしているFX会社の取引時間などを必ず確認するようにしましょう。
株式市場でも、12月に「株高」のアノマリーを発見!
特に、19日から24日ごろまでの株高には注目!
最後に、為替の動向にも影響を与えることがある、株式市場の12月のアノマリーも紹介します。
下の表は、市場参加者に注目されることが多い主要な株価指数の過去20年間の月足を調査して、「陽線の出現回数」をまとめたものです。回数が多ければ株高になりやすく、回数が少なければ株安になりやすかったということがわかります。
これを見ると、日本のTOPIXが14回、米国のS&P500が14回となっているほか、カナダのトロント総合指数が15回、欧州のSTOXX50(ユーロ・ストックス50)が14回、英国のFTSE100が16回と、12月に「株高」アノマリーを確認できる指数が多くなっています。
さらに、ドイツのDAX指数、フランスのCAC40を追加して、それぞれの日が含まれる週足の「陽線の出現確率」を日別に集計した週足統計データの中から、12月17日以降を抽出したものが以下の表になります。「週間平均」は今年(2023年)のカレンダーをもとに、週足に含まれる各日の陽線の出現確率から算出した平均値です。
これを見ると、12月18日からの週はおおむね株高の傾向にあり、特に、日別ではNYダウ、S&P500、トロント総合指数などで、19日からクリスマスイブの24日ごろまでの陽線の出現確率が高く、「株高」になりやすいことがわかります。
これは、冒頭でも紹介した為替と同様、12月は保有しているポジションを整理したり調整したりする動きが強まるのに加え、年明け以降の上昇を見越した買いが入りやすいといった時期的なことも影響して、こうした傾向が確認できるも考えることもできそうです。
日本の株式市場では「掉尾の一振(とうびのいっしん)」というアノマリーが有名です。これは、1年の最後の取引日となる大納会に向けて、12月20日ごろから株価が上昇しやすい傾向のことです。世界的に見ても「年末ラリー(年末に向けて株価が上昇すること)」と呼ばれる有名なアノマリーがあり、日本の株価指数だけでなく、12月は下旬にかけて主要な株価指数で全体的に株高のアノマリーがあるというのは興味深いデータですね。
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今回紹介したデータが、12月のFXトレードの参考になれば幸いです。次回は1月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!