過去20年の「11月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2024年11月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!
為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。
特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。
この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「11月」のデータを集計して、2024年11月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。
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11月は「トルコリラ/円」での円高に注目! また、11~12月にかけて
対円、対米ドル、対豪ドルなどで「NZドル高」のアノマリーにも注意!
はじめに、月足の統計データで11月のアノマリーを確認していきましょう。
下の表は主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べた中から、米ドル/円、ユーロ/米ドルなどの主要通貨ペアと、11月に注目したい通貨ペアの「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、メジャー通貨ペアの米ドル/円とユーロ/米ドルに目立った傾向は確認できませんが、オセアニア通貨同士の豪ドル/ニュージーランドドルは陰線の出現回数が20回中14回と、70%の確率で「豪ドル安・ニュージーランドドル高」のアノマリーがあります。
さらに、ユーロ/スイスフランは11月と12月の2カ月連続で、20回中14回も陰線が出現する「ユーロ安・スイスフラン高」のアノマリー、トルコリラ/円も過去18回中、11月は12回、12月は11回の陰線が出現する「トルコリラ安・円高」のアノマリーが確認できるので注目です。
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また、翌12月はニュージーランドドル/円とニュージーランドドル/米ドルで20回中15回、ニュージーランドドル/カナダドルで20回中16回と、ニュージーランドが絡んだ主要な通貨ペアで陽線の出現回数の多い「ニュージーランドドル高」のアノマリーがあります。
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これは、南半球に位置するニュージーランドは12月が夏となり、世界最大の輸出量を誇る全粉乳やバターなどの乳製品の輸出が増え、ニュージーランドドルが買われやすくなるいう理由があると考えられています。
このことから、11月は12月のニュージーランドドル高を見据えて、ニュージーランドドルの買いポジションを仕掛ける絶好のタイミングにもなりそうです。
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日足では「12日の円高」や「18日の円安」に注目!
ユーロの「18日と19日の2日連続ユーロ高」にも警戒!
次は日足の統計データの中から、11月に注目したいアノマリーを紹介します。
下の表は、過去20年間における日本円が絡んだ主要な通貨ペアの11月の日足を数えて、日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすい傾向があると考えられます。なお、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。
これを見ると、11月12日の陽線の出現確率が米ドル/円で19%、ユーロ/円、英ポンド/円、カナダドル/円、スイスフラン/円で21%と低く、「円高」のアノマリーが確認できます。
反対に、18日の陽線の出現確率は米ドル/円とユーロ/円で71%、英ポンド/円とニュージーランドドル/円で76%と高くなっていて、「円安」のアノマリーがあります。
このことから、11月は12日の「円高」、18日の「円安」のアノマリーに注目です。
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また、11月はユーロにもいくつかのアノマリーがあります。
以下の表は、過去20年間のユーロが絡んだ主要通貨ペアにおける、11月の日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。
これを見ると、11月18日の陽線の出現確率がユーロ/円とユーロ/豪ドルで71%、ユーロ/カナダドルで76%と高く、19日もユーロ/カナダドルで84%、ユーロ/米ドルで75%、ユーロ/英ポンドで73%と高くなっているので、11月は18日と19日の、2日連続の「ユーロ高」にも注目しておきましょう。
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米ドルには「1日の米ドル安」と「27日の米ドル安」のアノマリーあり!
11月5日は米大統領選、民主党・共和党で米ドルの動きに傾向は?
さらに、11月は米ドルにも日足でいくつかのアノマリーがあります。
以下の表は、過去20年間の米ドルが絡んだ主要通貨ペアにおける、11月の日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。
これを見ると、11月1日の陽線の出現確率がニュージーランドドル/米ドルで83%、、豪ドル/米ドルで70%と高くなると同時に、米ドルが決済通貨となる米ドル/カナダドルでは陽線の出現確率が26%と低くなっていて、「米ドル安」になりやすいアノマリーが確認できます。
反対に、27日の陽線の出現確率は米ドル/カナダドルで81%、米ドル/スイスフランで75%と高く、同時に米ドルが決済通貨になるユーロ/米ドルと英ポンド/米ドルでは陽線の出現確率が30%と低くなっていて、こちらは米ドルが買われやすい「米ドル高」のアノマリーがあることがわかります。
このことから、11月は1日の「米ドル安」と27日の「米ドル高」にも注目です。
ちなみに、今年(2024年)は4年に一度の「米大統領選(米国の大統領選挙)」が実施される年で、事実上、次の米大統領が決まるとされている一般投票日は11月5日となっています。
民主党のカマラ・ハリス候補、共和党のドナルド・トランプ候補のどちらが次期大統領になるのかはわかりませんが、一般的には民主党はリベラル、共和党は保守的な政策運営になる傾向と言われており、大統領選の結果次第では米国の政策方針が変わり、マーケットにも影響を及ぼす可能性があります。
そこで、民主党政権時代と共和党政権時代の米ドルの値動きの傾向をドルインデックスで調べてみましたが、直近50年に限っては、どちらの政権下でも明確な米ドル高や米ドル安の傾向は確認できませんでした。
11月は日米の「株高」に注目! ヘッジファンドの「45日ルール」に関係
する「株安」や、米国債の償還による「円高」のアノマリーも確認できず
次は、為替の動向にも影響を与える株式市場の11月のアノマリーを紹介します。
下の表は日本と北米(米国・カナダ)の主要株価指数の過去20年間の月足を調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、ナスダック総合指数の11月の陽線出現確率が80%(20回中16回)の高確率であるのを筆頭に、日本、米国、カナダの代表的な株価指数には、11月だけでなく12月にも「株高」のアノマリーが確認できる指数が多く、年末にかけての株価の上昇にも期待ができそうです。
このことから、11月は年末の「株高」のアノマリーを見越した投資対象の選別時期として、よいタイミングとなりそうです。
なお、11月は一部の市場参加者の間で、「ヘッジファンドの45日ルールに関連して株安になりやすい」というアノマリーが話題になることがあります。「45日ルール」とは、ヘッジファンドに運用を委託している顧客がファンド運用を解約する場合は、決算日の45日前までに申し出なければならないというルールです。12月末が決算のヘッジファンドでの運用を解約する場合は、およそ11月中旬までには解約を申し出る必要があるので、11月は解約に伴うポジションの決済フローが集中して、株価が下がりやすいと考えられています。
しかし、先ほどの表を見る限り、直近20年では株安ではなく株高の傾向が確認できるので、11月に「株安」のアノマリーは存在していないと言えます。
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また、11月に「株安」のアノマリーが存在するという前提で、為替市場では「11月は株安によるリスクオフの円高になりやすい」というアノマリーが話題になることがあります。さらに、「11月は米国債の大量償還日が集中しているので、米ドルを日本円へ戻す動きが活発化して円高になりやすい」というアノマリーも聞かれます。
そこで、日本円が絡んだ主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものが下の表になります。
これを見ると、日本円が絡んだ主要通貨ペアの11月の陽線と陰線の出現回数は銘柄によってまちまちで、米ドル/円も陽線が9回、陰線が11回とほぼ拮抗するなど、円高や円安のアノマリーが確認できるものはありませんでした。
ただし前述のとおり、今年の11月は次の米国の大統領が決まる重要イベントが控えています。2016年の“トランプラリー”のように、為替相場が大きなトレンドを形成して動きだすことも考えられるので、米大統領選の結果とあわせて為替の動向はいつも以上にチェックしておきましょう。
今回紹介したデータが、11月のFXトレードの参考になれば幸いです。次回は12月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!