過去20年の「10月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2024年10月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!
為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。
特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。
この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「10月」のデータを集計して、2024年10月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。
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10月はメキシコペソ/円、中国人民元/円の円安アノマリーに注目!
ニュージーランドドルは、年末の上昇に向けた仕込みの好機か
はじめに、月足の統計データで10月のアノマリーを確認していきましょう。
下の表は主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べた中から、米ドル/円、ユーロ/米ドルなどの主要通貨ペアと、注目したい通貨ペアの「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、10月は中国人民元/円で12回中10回、メキシコペソ/円で18回中13回と、それぞれ陽線の出現回数が多くなっていて、高金利通貨ペアで「円安」のアノマリーがあります。特に、中国人民元/円は過去12年で陽線の出現確率が83%と、かなり強いアノマリーが確認できます。
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そのほかでは、10月は英ポンド/カナダドルとニュージーランドドル/カナダドルで、陽線の出現回数が20回中14回と多くなっていて、英ポンドとニュージーランドドルに対して「カナダドル安」のアノマリーもあります。
ニュージーランドドル/カナダドルは、12月も陽線の出現回数が20回中16回と多くなっています。ニュージーランドドルは12月に「ニュージーランドドル高」のアノマリーがあるので、年末に向けたニュージーランドドルの動向にも注目しておきましょう。
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市場の一部で話題となる10月の「リスクオフの円高」は確認できず!
過去20年の日本円が絡んだ主要通貨ペアは、円安の回数のほうが多い
ちなみに、10月は一部の市場参加者やトレーダーの間で、「世界的に株価が急落し、リスクオフの円高になりやすいアノマリーがある」と話題になることがあります。
しかし、米ドル/円や主要なクロス円の過去20年間の月足を調べたところ、そのような傾向は確認できませんでした。
たとえば、米ドル/円は20回中13回、ユーロ/円は20回中12回、英ポンド/円は20回中13回で陽線が出現するなど、日本円が絡んだ主要な通貨ペアの多くで「円安」の回数のほうが多くなっています。また、のちほど紹介しますが、10月は株安の傾向も確認できません。
このことから、少なくとも直近20年においては、「10月は株安とリスクオフの円高になりやすい」というアノマリーは、存在しないといえます。
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日足では「2日の円高」や「16日の円安」に注目!
特に16日は英ポンド/円で約90%の円安もあり、円相場には注意!
次は日足の統計データの中から、10月に注目したいアノマリーを紹介します。
下の表は、過去20年間における日本円が絡んだ主要な通貨ペアの10月の日足を数えて、日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすい傾向があると考えられます。なお、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。
これを見ると、10月は2日に陽線の出現確率が米ドル/円で30%、ユーロ/円とカナダドル/円で21%、豪ドル/円で25%と低く、「円高」のアノマリーが確認できます。
反対に、16日は米ドル/円で70%、ユーロ/円と英ポンド/円で89%、カナダドル/円で74%と陽線の出現確率が高くなっていて、「円安」のアノマリーがあります。ほかにも、4日や30日にも「円安」の傾向が確認できます。
このことから、10月は2日の「円高」、4日、16日、30日の「円安」アノマリーに注目です。
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さらに、10月は英ポンドにもいくつかのアノマリーがあります。
以下の表は、過去20年間の英ポンドが絡んだ主要通貨ペアにおける、10月の日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。
これを見ると、10月は10日、16日、30日、31日に「英ポンド高」のアノマリーがあります。特に、16日は英ポンド/円の陽線の出現確率が89%と非常に高く、前述のとおり「円安」のアノマリーもあるので、FXトレーダーにとっては注目の日となるでしょう。また、30日、31日と「英ポンド高」が連続しているので、月末の英ポンドが買われやすい傾向にも注意です。
反対に、22日は英ポンド/豪ドルの5%を筆頭に、英ポンド/米ドルと英ポンド/スイスフランが19%など、陽線の出現確率が低く「英ポンド安」のアノマリーがあることも、押さえておきましょう。
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10月の日米の株価指数に目立った傾向は確認できず。
引き続き、年末の「株高」に向けた仕込みを検討する時期
次に、為替の動向にも影響を与える株式市場の10月のアノマリーも紹介します。
下の表は日米の主要株価指数の過去20年間の月足を調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、10月は日経平均株価やNYダウなどの日米の主要株価指数に目立った偏りが確認できません。しかし、前回のコラムでも紹介したとおり、11月は上の表に掲載したすべての株価指数で「株高」のアノマリーが確認でき、12月も日経平均株価、TOPIX、S&P500に「株高」のアノマリーがあります。
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そのため、10月も9月に続き、年末の株高アノマリーを見越した投資対象の選別時期として、よいタイミングとなりそうです。。
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10月4日に発表される9月分の非農業部門雇用者数は、市場予想を
下回る可能性に警戒! 過去17回中、13回が予想より弱い結果に
最後に、毎月、FXトレーダーにとって大注目のイベントで、結果によっては為替レートが大きく動くこともある、米国の雇用統計(米雇用統計)に関するアノマリーを紹介します。
下の表は、米雇用統計で発表される数あるデータの中でも、市場参加者からの注目度が高い「非農業部門雇用者数(NFP)」と「失業率」の、2007年以降の市場予想(中央値)と結果をそれぞれ調べ、9月~11月に発表されたものを抽出したものです。その中から、10月に発表される9月分の結果に注目してください。
上の2つの表を見ると、10月に発表される9月分の「失業率」は、過去17回中の5回が市場予想と一致、17回中10回は市場予想を下回る強い結果で、市場予想を上回る弱い結果になったのは17回中2回のみでした。
しかし、もう一つの注目指標である「非農業部門雇用者数」は、過去17回中13回で、市場予想を下回る弱い結果になっています。
為替相場の反応は、そのときどきのマーケットの主要テーマやセンチメントなどにも左右されるので、非農業部門雇用者数が予想より弱い悪い結果だったとしても、必ず米ドル安になるわけではありません。しかし、予想と結果にどれだけのかい離があるかなどは、為替レートを大きく動かす原動力にもなりえます。
ちなみに、米雇用統計は原則として、毎月第一金曜日に前の月のデータが発表されますが、過去20年間の週足における陽線の出現確率を調べたところ、米ドルが絡んだ主要通貨ペアで10月第1週に目立った傾向のあるものは確認できませんでした。
ただし、日足の統計データを見ると、今年、2024年の9月分の米雇用統計が発表される予定の10月4日(金)は、ユーロ/米ドルで70%、英ポンド/米ドルで78%、ニュージーランドドル/米ドルで73%と、一部の米ドルが絡んだ通貨ペアで陽線の出現確率が高い、「米ドル安」の傾向が確認できるので注目です。こうしたデータも頭の中にいれておくと良いでしょう。
今回紹介したデータが、10月のFXトレードの参考になれば幸いです。次回は11月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!