過去20年の「8月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2024年8月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!
為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。
特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。
この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「8月」のデータを集計して、2024年8月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。
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8月は「英ポンド安」、「豪ドル安」、「新興国通貨の円高」に警戒!
新興国通貨ペアの下落局面は、10月の上昇に向けた買いのタイミング!?
はじめに、月足の統計データで8月のアノマリーを確認していきましょう。
主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べたところ、8月には「英ポンド」が絡んだ通貨ペアの「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数に偏りがあったので詳しくみていきます。
上の表を見ると、8月は陰線の出現回数が英ポンド/円で20回中13回、英ポンド/米ドルと英ポンド/スイスフランで20回中14回、英ポンド/カナダドルでは20回中15回と多く、英ポンド/円も20回中13回と、陰線の出現回数が陽線の出現回数を上回っています。特に、英ポンド/カナダドルでは4回に3回の割合で陰線が出現していて、8月は「英ポンド安」のアノマリーに注目です。
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また、8月には「豪ドル」にも強い傾向が確認できます。下の表は、豪ドルが絡んだ主要通貨ペアの、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、8月は豪ドル/米ドルで20回中16回、豪ドル/円と豪ドル/スイスフランで20回中14回も陰線が出現し、豪ドルが決済通貨(分母側)のユーロ/豪ドルでは20回中15も陽線が出現しています。
このことから、8月は豪ドル/米ドルを中心に「豪ドル安」のアノマリーがあることがわかります。
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さらに、8月は「南アフリカランド/円」「メキシコペソ/円」「トルコリラ/円」といった高金利通貨の対円の値動きにも注目です。
上の表は日本のFXトレーダーにも人気の新興国通貨ペアの「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものですが、これを見ると、南アフリカランド/円は20回中14回、メキシコペソ/円とトルコリラ/円は17回中11回と陰線の出現確率が多くなっていて、8月には高金利通貨ペアで「円高」のアノマリーも確認できます。
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前回のコラムでも紹介しましたが、南アフリカランド/円、メキシコペソ/円、トルコリラ/円は、10月に陽線の出現回数が陰線の出現回数を上回る円安傾向にあるります。そのため、8月の円高局面はスワップポイント(スワップ金利)によるインカムゲインを積み上げながら、10月の円安で為替変動によるキャピタルゲインも狙うために、買いポジションを持つ良いタイミングになるとも考えられそうです。
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「8月の円高」アノマリーは、年々、傾向が弱まってきている。
以前は確認できたが、直近では起こりにくいアノマリーに変化か?
なお、為替市場では毎年、一部の市場参加者の間で「8月は円高になりやすい」というアノマリーが話題になることがあり、2022年8月の当コラムでも「8月の円高アノマリー」として紹介しました。
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この8月の円高アノマリーは、日本では8月中旬のお盆休みに大手企業が一斉に長期休暇に突入するので、その前にポジションを決済しておこうという企業や投資家が多くなること、8月は米国債の大量償還があるため外貨を日本円に戻す動きが活発化するなどの理由によるものと考えられています。
しかし、データを確認すると、8月の円高アノマリーの傾向は、年々、弱まってきているようです。下の表は2004~2023年までの過去20年間における日本円が絡んだ主要な通貨ペアの月足を調べ、8月の月足が陽線なら「陽」、陰線なら「陰」と表記したものです。
2007年から2019年ごろまでは、多くの日本円が絡んだ通貨ペアで陰線が出現し、円高アノマリーが確認できていたものの、2020年からは円高になりにくく、陽線をつけた通貨ペアの数が、陰線をつけた通貨ペアの数を上回っています。
このことからも、8月の円高アノマリーは、以前は確認できた現象ではあるものの、直近では起こりにくいアノマリーになってきていると考えられそうです。このようにアノマリーは変化していくので、常に新しいデータで確認していく必要がありそうです。
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日足では「13日と最終週の円安」、「19日の円高」に注目!
最終週には、米ドルでも「米ドル高」のアノマリーを確認!
次は日足の統計データの中から、8月に注目したいアノマリーを紹介します。
下の表は、過去20年間における日本円が絡んだ主要な通貨ペアの8月の日足を数えて、日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすかったということがわかります。なお、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。
これを見ると、8月は13日に陽線の出現確率がスイスフラン/円で95%とかなり高く、米ドル/円とユーロ/円も79%となっていてるため、「円安」のアノマリーがあるといえそうです。
また、19日は陽線の出現確率が英ポンド/円とニュージーランドドル/円で19%、カナダドル/円で30%と低いため、「円高」のアノマリーが確認できます。
そして、27日はニュージーランドドル/円とカナダドル/円で75%、29日は米ドル/円と英ポンド/円が71%、豪ドル/円とニュージーランドドル/円が90%、カナダドル/円が81%と、陽線の出現確率が高い通貨ペアが目立っていて、最終週には「円安」のアノマリーがあるとわかります。
このことから、8月は13日の「円安」、19日の「円高」、最終週の「円安」に注目しておきましょう。
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さらに、8月の最終週には「米ドル高」のアノマリーもあります。
以下の表は、過去20年間の米ドルが絡んだ主要通貨ペアにおける、8月の日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。
これを見ると、26日の陽線の出現確率が米ドル/スイスフランで90%、米ドル/円で71%と高く、米ドルが決済通貨のユーロ/米ドルで14%、英ポンド/米ドルで26%と低くなっています。
また、30日の陽線の出現確率も米ドル/カナダドルで73%、米ドル/スイスフランで74%と高く、米ドルが決済通貨の豪ドル/米ドルで14%、ニュージーランド/米ドルで18%と低くなっているため、8月の最終週には「米ドル高」のアノマリーがあることも覚えておきましょう。
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米大統領選がある8月のNYダウは、74%以上の確率で上昇!
サプライズ続きの米大統領選とあわせて「米株高」にも注目!
最後に、為替の動向にも影響を与える株式市場の注目アノマリーを紹介します。
今年(2024年)は、4年に一度の「アメリカ大統領選挙」が行われる年なので、今回は米国の大統領選挙と株価の値動きについて調べてみました。
以下の表は、過去31回における米大統領選があった年の月足の「陽線」の出現確率を月ごとにまとめたものです。
これを見ると、米大統領選がある年の「8月」にNYダウの陽線が出現する確率は74%とかなり高く、「1年の中でもっとも上昇している月」ということがわかります。
これは例年、8月には共和党と民主党、両方の大統領候補者が決定し、経済対策などへの期待が高まることが原因と思われます。
ちなみに、以下の表は直近20年における、米国の主要株価指数の「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数を月ごとにまとめたものですが、これを見ると8月の主要株価指数はすべて陽線の出現回数が20回中11回となっていて、明確な傾向は確認できません。
今年は、演説中に銃撃を受けたトランプ前大統領が共和党の候補者として正式指名を受けた一方、現職のバイデン大統領が再選を断念して選挙戦からの撤退を表明するなど、さまざまなサプライズが発生しています。
米大統領選の行方も注目ですが、今年は8月に明確な「米株高」アノマリーが確認できるので、こちらにもぜひ注目してみてください。
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今回紹介したデータが、8月のFXトレードの参考になれば幸いです。次回は9月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!