過去20年の「12月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2024年12月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!

 為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。

 特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。

 この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「12月」のデータを集計して、2024年12月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。
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12月は対主要通貨での「ニュージーランドドル高」と「ユーロ高」に
加え、トルコリラ/円での「トルコリラ安・円高」アノマリーに警戒!

 はじめに、月足の統計データで12月のアノマリーを確認していきましょう。

 下の表は主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べた中から、日本のFXトレーダーがもっともよく取引する米ドル/円と、12月に注目したい通貨ペアの「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。

主要通貨ペアの月足アノマリー情報

 これを見ると、12月はニュージーランドドル/円とニュージーランドドル/米ドルで15回、ニュージーランド/カナダドルで16回と陽線の出現回数が多く、「ニュージーランドドル高」のアノマリーがあります。
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 酪農が主力産業で南半球に位置するニュージーランドでは、春にあたる9~11月に搾乳が最盛期を迎え、夏となる12月からミルクやチーズなどの乳製品の輸出が増加します。そのため、12月は輸出で得た外貨をニュージーランドドルに替える動きが強まり、ニュージーランドドル高になりやすいと考えられています。

 また、12月はユーロ/米ドルとユーロ/英ポンドで陽線の出現回数が14回と、「ユーロ高」のアノマリーもあります。

 はっきりとした理由はわかりませんが、1年で最後の月となる12月は、為替や株式などの保有ポジションを年末に向けて整理する動きが活発化することも影響していると考えられそうで、注目しておきたいアノマリーです。
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 さらに、高金利通貨ペアとして日本のFXトレーダーからの注目度が高いトルコリラ/円は、陰線の出現回数が18回中11回と多く、「トルコリラ安・円高」のアノマリーが確認できます。
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 このことから、12月は月足では「ニュージーランドドル高」、「ユーロ高」、「トルコリラ安」に注目です。

日足では「26日と27日の円安」や「1日・26日・30日の米ドル安」に
注目。ただし、年末は市場参加者が少なくトレードには注意が必要

 次は日足の統計データの中から、12月に注目したいアノマリーを紹介します。

 下の表は、過去20年間における日本円が絡んだ主要な通貨ペアの12月の日足を数えて、日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすい傾向があると考えられます。なお、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。

日本円が絡んだ主要通貨ペアの日足アノマリー情報

 12月はいくつかの日で円安の傾向が確認できますが、特に注目したいのは26日と27日です。上の表を見ると、26日は豪ドル/円とニュージーランドドル/円で陽線の出現確率が100%と、過去20年間で取引が行われていた日はすべて陽線が出現していたという、非常に強い「円安」アノマリーがあります。

 また、27日も陽線の出現確率がユーロ/円で92%、スイスフラン/円で96%とかなり高く、英ポンド/円は78%、豪ドル/円は73%、ニュージーランドドル/円は77%と、主要な通貨ペアの多くで陽線の出現確率が高い「円安」のアノマリーが確認できます。

 そのため、12月の「26日と27日の円安」には特に注目です。
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 また、12月は米ドルにもいくつかのアノマリーがあります。

 以下の表は、過去20年間の米ドルが絡んだ主要通貨ペアにおける、12月の日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。

米ドルが絡んだ主要通貨ペアの日足アノマリー情報

 これを見ると、12月はまず、1日に陽線の出現確率が英ポンド/米ドルで74%、豪ドル/米ドルで77%、ニュージーランドドル/米ドルで82%と高く、米ドルが基軸通貨(分子側)の米ドル/スイスフランでは7%、米ドル/円で27%と低いことから、「米ドル安」のアノマリーがあります。

 また、26日も豪ドル/米ドルとニュージーランドドル/米ドルの陽線の出現確率が90%と高く、米ドル/カナダドルは29%と低いので、「米ドル安」の傾向が確認できます。

 さらに、今年の最終営業日となる30日は、陽線の出現確率がユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、ニュージーランドドル/米ドルで81%、豪ドル/米ドルで71%と高く、米ドル/カナダドルは19%、米ドル/スイスフランは14%と低いので、ここにも「米ドル安」のアノマリーがあります。

 このことから、12月は「1日・26日・30日の米ドル安」にも注目です。
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 ただし、外国為替市場では例年、クリスマスから年始にかけては市場参加者の多くがマーケットから離れ、取引高が一気に減少します。特に、25日は日本を除く多くの国がクリスマスで祝日となるため、この日は例外的に夕方以降の取引を休止するFX会社がほとんどで、中には25日を終日、休業とするFX会社もあります。

 さらに翌26日も、米国以外の主要国の多くがボクシング・デーなどの祝日となるため、流動性が低下して、スプレッドが普段よりも広がる可能性があります。年末の円安や米ドル安のアノマリーを活用した取引を検討する場合は、当日の値動きやスプレッドのほか、取引で使うFX会社の取引時間にも注意しましょう。

12月は主要な株価指数の「株高」アノマリーに注目!年末のポジション
調整や、年明け以降の上昇を見越した買いが入りやすい時期と予想

 次に、為替の動向にも影響を与える株式市場の12月のアノマリーを紹介します。

 下の表は日米を含む主要な株価指数の過去20年間の月足を調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。

主要株価指数の月足アノマリー情報

 これを見ると、12月は陽線の出現回数が日経平均とTOPIX、米国のS&P500、カナダのトロント総合指数、欧州のSTOXX50(ユーロ・ストックス50)、ドイツのDAXで20回中14回、さらに英国のFTSE100は16回と、主要国の代表的な株価指数で「株高」のアノマリーが確認できます。

 これは、冒頭で紹介した為替と同様、12月には保有ポジションの整理や調整の動きが強まるほか、年明け以降の上昇を見越した買いが入りやすいといった時期的な影響もあって、株高になりやすいと考えることもできそうです。

 日本の株式市場には、「掉尾の一振(とうびのいっしん)」という有名なアノマリーがあります。これは、1年の最後の取引日となる大納会に向けて、12月20日ごろから株価が上昇しやすい傾向のことです。世界的に見ても「年末ラリー(年末に向けて株価が上昇すること)」と呼ばれる有名なアノマリーがあり、日本の株価指数だけでなく、12月は下旬にかけて主要な株価指数で全体的に株高のアノマリーがあるというのは興味深いデータと言えます。
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ビットコインはさらなる上昇が期待できそう!4年周期の象徴的な
高値をつけるタイミングは、2025年10~12月ごろになると予想!

 最後に、ここ最近の最高値更新で注目度が再び高まっている、仮想通貨(暗号資産)のアノマリーも紹介します。

 下のチャートは値動きがわかりやすいように対数で表示した、ビットコイン/米ドルの長期チャートです。

ビットコイン/米ドルの長期対数チャート (※筆者提供。チャートはTradingView)

 

 上のチャートを見ると、ビットコインは2013年12月4日、2017年12月17日、2021年11月10日と、ほぼ4年ごとに象徴的な高値をつけていることがわかります。

 この法則が続くのであれば、次に象徴的な高値をつけるのは2025年10~12月ごろになると想定でき、それまでビットコインが上昇しやすいと言えます。

 これは、ビットコインのマイニング報酬がおよそ4年ごとに半分になる「半減期」や、4年ごとに行われる米国の大統領選挙(米大統領選)も関係しているのかもしれません。

 また、ビットコインは象徴的な安値も、2015年1月、2019年1月、2022年11月と、ほぼ4年周期でつけているという事実があります。ビットコインは直近でも過去最高値を大きく更新しているので、来年(2025年)もビットコインの値動きには注目です。

 今回紹介したデータが、12月のFXトレードの参考になれば幸いです。次回は1月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!