ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

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ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

7 DIAMOND QuarterlyT A L K I N G P O I N T S従うかによって、時には本質を見失ったりしないでしょうか。 ビジネスモデルに関しては、何が正しい定義なのかはあまり意味がありません。どの定義も、突き詰めてみると「儲ける仕組み」、より具体的には「利益を持続的に生み出す仕組み」のことだと述べています。 優れたビジネスモデルを見てみると、独自の競争優位、つまり他社との差別性が備わっています。しかも、一見しただけではわからないところに“カラクリ”が巧妙に隠されているものです?注?。 たとえば、2006年に創業したネットメディア企業のリブセンスという会社は、人材採用支援事業を展開していますが、業界最大手のリクルートをはじめ、ほとんどのプレーヤーが、求人広告を売る「掲載課金型」であるのに対して、求人広告への出稿は無料で、実際に成約に至った場合に料金をもらう「成功報酬型」です。 リブセンスのビジネスモデルには、「就職祝い金」というカラクリが仕掛けてあります。これはめでたく採用された人に支払われるお金で、ユーザーがリブセンスに登録するインセンティブとして働くだけでなく、求人した会社による成功報酬の踏み倒しを未然に防止する役割を果たしています。 リブセンス経由で求人し採用できた場合、会社がそのことを申告しなければ、リブセンスは採用の事実を把握できず、成功報酬を請求できません。そこで考えられたのが就職祝い金で、リブセンス経由で転職できたユーザーがその事実をリブセンスに報告すると、祝い金を受け取ることができます。つまり、祝い金によって採用が成立した事実を把握できるため、申告の失念、あるいは故意の無申告を回避できるわけです。 カラクリの例はまだまだありますが、こうしたユーザーにとって一見得に思える仕組みの裏側に、企業の利益の源泉が隠されているような事例を探究していくことが私にとって研究の醍醐味でもあり、知的収穫物を一人でも多くの方と共有したくて、本を執筆したり講演や研修で話したりしています。 ビジネスモデルの研修や講演への参加者たちは、どのような関心の持ち主なのでしょう。ここ10年ほど、イノベーションへの関心が高まっていますが、やはり改チェンジメーカー革者や起業家を志向しているのでしょうか。 そういう人は少数です。大半が、新しいビジネスモデルの構築、新規事業の開発を任された大企業の若手や中堅社員で、自主的に申し込んでくる人もいますが、多くは会社の指示で来ています。 残念なことに、彼らの上司は、自分の頭で考え、みずから行動を起こして、新規事業や新しいビジネスモデルの開発、イノベーションに取り組んだ経験に乏しいようです。当然ながら、そのためのノウハウとかドゥハウを持っていません。そこで、「とにかく勉強してこい」と研修や講演に部下を送り出すわけです。 なかには、「フレームワーク病」とでも呼ぶ悪弊に陥っている人も散見されます。ビジネスや経営を学ぶには、理論やフレームワークをたくさん覚える必要があると思っているのでしょうか、役に立つのかどうかはともかく、新しいもの、自分の知らないものに出会うと、すぐさま飛び付いてしまう。たとえば、私が研修や講演でホワイトボードに目新しい2×2のマトリックスを書くや否や、背後でカシャ、カシャ、カシャと写真を撮る音がします?笑?。 新しいビジネスモデルの開発を任せるに当たって、どのようなマインドセットの持ち主が向いていますか。 何より、競合企業と同じことはやりたくないという人ですね。横並びから独創性は生まれてきませんから。そして、しぶとく考え抜く人。徹底的に仕組みを練り上げていける人です。 さらに言えば、やらないと決めたことはや【注】ダイヤモンド・オンライン「山田英夫のビジネスモデル・ラボ」を参照。http://diamond.jp/articles/-/178990