ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

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ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

35 DIAMOND QuarterlyS E R I A L S T R A T E G I C V I E W Sのシステムも見直す必要が出てきますか。金井:おっしゃる通り、専門知識をもとに、膨大な業務量を高い正確性をもって遂行するという部分は、そう遠くない近い将来、AIに移行するでしょう。のみならず、不正や誤謬の発見にもAIは威力を発揮する。では、会計士は何をするのかといえば、そうした情報をもとに判断を下すこと、そしてやはり経営者をはじめとする関係者との対話です。 そこで役に立つのは会計や法律の専門知識をもとにしたビジネスリテラシーであり、コモンセンスであり、さらに言えば創造性です。定型的手続きをこなすだけではなく、頭に汗をかいて考え抜く。そうすることでより高付加価値な監査が実現し、会計士一人ひとりが成長して働き方が変わり、結果、組織としての監査法人の競争力も高まると期待されます。 パートナーを頂点とするピラミッド型の組織構造も変わっていくでしょう。監査の全体構造を設計するコアの監査メンバーを中心に、多様なプロフェッショナル人材がチームを組む有機的な監査体制に移行する。そうした中で、会計士がマインドセットを切り替えて価値ある経験を積み重ねれば、監査法人が経営人材を輩出する機関となる可能性も十分にありえます。川本:とはいえ、コミュニケーションは相手あってのことですから、監査人だけが変わればいいというものではありません。経営者もいま以上に会計監査が企業価値向上につながることを理解して、もっと興味を持つべきでしょう。 その前提として、ファイナンスや会計に関するリテラシーを高める必要があります。数字は企業経営における共通言語です。社内においても、監査人や投資家といった社外の人と対話するうえでも、数字に対する理解は欠かせません。数字がわかれば個別の事業や全社の実態がより深く理解できるし、思わぬところで足をすくわれることもなくなって、よりよい意思決定が下せるようになる。そのように考えれば、監査人との対話が持つ意味も変わってくるはずです。 経営者と監査人の両方が歩み寄ることで相互理解が深まり、財務報告そのものの品質が向上すると素晴らしいですね。金井:財務情報の信頼性を高め、マーケットに寄与するという監査人の使命は、どれだけ技術が進化しても変わらないし、そこに我々のバリューがあります。公共の利益の擁護者となりえているかと常に自問し、バリューの維持向上に努める。そうした愚直な取り組みが、結果として企業成長を後押しすることにつながると考えています。YUKO KAWAMOTO早稲田大学大学院経営管理研究科教授。東京銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社、パリ勤務等を経て現職。三菱UFJフィナンシャルグループ社外取締役、トムソンロイタートラスティ・ディレクターを兼務。これまで、金融審議会委員、金融庁顧問(金融タスクフォースメンバー)、総務庁参与、内閣府統計委員会委員、経済財政諮問会議専門委員、国家公安委員などの政府委員、取引所・銀行・保険・証券・製造業・IT企業・商社の社外取締役などの経験多数。