ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

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ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

DIAMOND Quarterly 34わけではなく、財務報告のサプライチェーンに連なるすべての関係者がその意義を理解し、行動していくことが欠かせません。質の高い情報を提供しようとする企業の積極的な開示、それを評価する投資家や監督当局などが相互に作用し、好循環が生まれると期待されます。会計士には鳥の目を経営者には数字のリテラシーを川本:会計監査人の言葉が経営者の心になかなか刺さらないのは、ボキャブラリーや説明の仕方の問題に加えて、そもそもの関心のあり所の違いが影響しているのでは、と思う時があります。 経営には、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」が必要だとよくいわれます。俯瞰して大局をとらえ、現場を知って細心の配慮をし、潮流を読む。この3つがバランスよく揃うことで、優れた意思決定が可能になります。 これに対して会計監査人は、業務の性質上、虫の目で物事をとらえることの優先順位が高い。もちろん細部を軽んじるわけではありませんが、限られた時間の中で経営陣と意味のある対話をしようとするなら、鳥の目、魚の目も必要かもしれません。 公認会計士の方々が非常に高度な専門知識を持ち、緻密で正確な仕事をなさることは承知していますが、思考の網の目を少し広げて、より大きな視点で物事をとらえるとよいケースもあるのではないでしょうか。 また、若手に対しては必要なトレーニングを行い、経験を積ませる。それと同時に、責任ある立場の監査人も、より経営者の問題意識に響くよう、コミュニケーションスタイルを変えていくのも新しい方向ですね。金井:そこにやりがいや面白さを感じる人材が今後ますます増えてほしいし、またそうなると考えています。 監査業務は退屈だと思われていますが、それは大きな誤解です。地味だけれど必要な仕事を愚直に続けて、社会からの信頼を勝ち得ることはもちろん大切です。 一方で、これほど経営のさまざまな面をつぶさに、かつ継続的に見られる仕事はそうはありません。そうした監査の過程で明らかになった問題点や課題を、経営にフィードバックする醍醐味もある。取り組み方次第で、監査はダイナミックな仕事になりうるのです。川本:サンプリングやリスクアプローチという手法を取るにせよ、膨大なデータをチェックする監査業務は、AIの活用が進むことでその方法論を大きく転換させることになるはずです。そうなると会計監査人の仕事の仕方も変わる。監査法人における人材育成や評価TAKUJI KANAIあずさ監査法人 専務理事(品質管理統轄)。KPMGアジアパシフィックおよびジャパンHead of Audit。日米両国で公認会計士としての経験を積んだのち、スタンフォード・ビジネススクールで経営学修士(MBA)を取得。日本を代表するグローバル企業のリードパートナーを歴任し、グローバル企業が直面する課題解決に積極的に取り組む。現在は、あずさ監査法人、KPMGのアジア地区における監査の最高責任者の立場から、監査品質向上、監査体制の見直し、監査人の働き方改革を推進している。