ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

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ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

31 DIAMOND QuarterlyS E R I A L S T R A T E G I C V I E W Sが向けられています。 会社ぐるみの大規模な不正が長年にわたって見逃されたり、突然死するような企業が出ると、世間一般の感情としてはどうしても、監査法人に対する信頼を裏切られたような気がしてしまう。これは仕方がないのではないでしょうか。社会の期待と実際の監査業務の乖離を指す「期待ギャップ」はよくいわれるところですが、それで議論を終わりにしてはならないと思います。金井:監査人は捜査権を与えられているわけではないし、仮に不正発見のための監査手続きを行う場合、それに伴うコストを誰が負担するのかという問題もある。制度上の限界があることは事実です。 しかし、不正によって財務諸表に重要な誤りがあれば適正意見は出せないので、そうした監査の過程で得た情報が不正発見につながったり、ガバナンスの向上に役立つことはあります。監査人は不正発見に無力なわけではないし、社会の期待に背を向けるつもりも毛頭ありません。川本:フィナンシャル・ゲートキーパーとしての役割をいかに果たすか、より積極的な関与を期待したいところです。その結果、資本市場の信頼性が維持されれば、投資家のみならず、企業にとっても社会にとっても、その意義は極めて大きいものになります。デジタルだけがイノベーションを牽引するわけではない金井:実際、監査の過程で不正や業務プロセス上の誤謬をいち早く発見し、企業価値の毀損を未然に防ぐケースは少なくありません。 たとえば、ある日本企業の海外子会社で不正会計が明るみに出たのは、監査法人の交代がきっかけでした。海外子会社の監査については現地の監査法人と連携して業務を進めていくのが普通ですが、このケースでは親会社の新任監査人、つまり我々のスタッフが直接、子会社を訪問することにしたのです。 その結果、倉庫に不自然に積み上げられた大量の在庫を発見し、これを調べていく過程で不正の発見に結び付きました。実際に足を運び、新任監査人のフレッシュアイで現場を見ることで、会議室にいては見えない真実を浮かび上がらせることができたのです。川本:監査の世界でもテクノロジーの活用が進んでいますが、データを見るだけではなく、現場を見て、直接話を聞いて、初めてわかることも少なくないですよね。金井:まったく同感です。データを活用した先進的な監査アプローチは避けて通れない道です。一方で、現場を自分の目で見る、いろいろな人に会って話を聞くといった愚直な取監査の過程で得られた情報や発見を経営者も必要としている。企業はもっと監査に期待していい。