ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

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ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

DIAMOND Quarterly 14T A L K I N G P O I N T S横無尽に動くミドルマネジメントにあるとされていましたが、いまや状況は変わってしまったようです。 一方、経営陣の中には、新興市場の開拓や新規事業の立ち上げ、致命的な失敗などの修羅場を経験し、酸すいも甘いも噛み分けられる傑物がいます。彼らは、視野も広く開明的で、「やってみなはれ」という度量の持ち主でもあります。ところが、本来ならば彼らの意を汲んでサポートすべきミドルマネジメントが、言わば「忖度フィルター」、すなわち社内政治を慮ったり、上司が失敗の汚名を着るのを避けようとしたりと、偏狭な門番と化しています。また、セクショナリズムに走る人、かつてのやり方に固執する人、既得権を守ろうとする人たちもいます。 こうしたトップの考えや意向をきちんと理解しないまま、ミドルマネジメントが、まるで「雲海」のごとく、トップの現場への視線をさえぎっています。現場は現場で、このミドルの雲海のせいで、経営陣の考えが見えなくなり、ミドルの忖度に振り回されることになる。そんな悪循環が起こっているのではないでしょうか。 そのほか、自社内で金科玉条とされてきた業績評価基準が、新規事業の足を引っ張ることもあります。 日本の製鉄各社はかつて半導体に進出したものの、ことごとく失敗しました。それはトン?t?という基準で評価していたからだ、といわれることがあります。 業績評価基準は、その企業では「何をもってよしとするのか」を最も端的に表すものであり、言い換えれば企業文化を象徴するものです。製鉄会社は、長年トンの文化の中で暮らしてきました。京セラでは、時間効率が主要な評価基準で、それはアメーバ経営の本質でもあります。パルコは坪当たり効率を重視しており、これはパルコのビジネスモデルの中核を担っています。そのため、集客効果は望めますが、坪効率の悪いツタヤなどは誘致できていません。 業績評価指標を変えるということは、企業文化、さらには人々の価値観や行動規範にも影響を及ぼす一大事なのです。KDDIでは、ARPU?一回線当たり月間売上げ:AverageRevenue Per Unit?を評価基準としてきましたが、いまや一人のユーザーが携帯、スマホ、タブレット、Wi-Fiルーターなど複数の端末を利用するマルチデバイスが一般化しています。そこで、ARPA?契約者一人当たり月間売上げ:Average Revenue Per Account?に変えようとしていますが、簡単ではないようです。 とはいえ、売上げや粗利益、市場シェアでは、顧客や市場の実態や変化を正確に把捉できないこと、それゆえ適切な業績評価を設定することでこれまで見えなかった重要な事実が見えてくることは、昔から指摘されてきたことです。管理会計やビジネス理論に関するリテラシーが組織的に欠如しているとしか思えません。 そうかもしれません。実際、経営戦略、マーケティング、会計など関するフレームワークや論ロジック理の訓練が不足していると感じることもあります。 いずれにしても、ヨソがやるからウチもやる、市場にはまだドジョウがいるはずだと考え、競合と同じようなものをつくる同質化競争や、機能を増やす、価格を下げるといった従来型の戦い方だけで利益を確保できるとは限りません。仮にうまくいっても、持続的優位は保てません。 こうした時代にあっては、持続的に低コストで回せる仕組み、さらには外部から見えない仕掛けを施した独自のビジネスモデルが必要です。これからは同業他社と製品やサービスの優劣を競争する消耗戦から脱け出し、ビジネスモデルの優劣を競い合う時代になるでしょう。