ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly
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ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly
DIAMOND Quarterly 10休止を操作でき、通信料は使った分だけ支払う従量制であるため、始めやすく、接続しやすく、いつでも止められる、またスケールアップもスケールダウンも容易、といったメリットがあります。 なお、プラットフォームを安価に提供できるのは、従来の事業者が、パケット交換、通信制御などに一台数億円の専用ハード機器を設置していたところを、ソラコムはすべてソフトウェアで実装したからです。技術力の高さはもとより、顧客が増えれば増えるほど価格を下げていく仕組みのおかげで、他社が同じビジネスモデルで参入しても、ソラコムに対抗するのは難しくなっています。漸進的に改善・進化したビジネスモデル事例 これら3社のビジネスモデルは、一人あるいは数人のイノベーターが考えに考え抜いた末に構築されたものです。この種のゼロ・トゥ・ワンのビジネスモデルは、アメリカでは多く見られますが、日本では珍しい。 むしろ事業開始後に環境変化やユーザーの声を反映し、新たなビジネスモデルへと進化していく創発型の事例が、日本では多いようです。かつての日本的経営のように、集団的な意思決定を重ねながら、そのプロセスで改善や工夫を施し、新しいアイデアを取り込んだり、あるいは無関係なものと結び付いたりしながら、気づいてみると独自のビジネスモデルに仕上がっているパターンです。コマツのKコ ムトラックスOMTRAXなどが典型例です。 1990年代後半、建機を盗み、ATMを破壊して現金を奪う事件が相次いで起こり、そこで盗難防止のために建機にGPSをつけたのがきっかけです。ですから、当初の意図はあくまで盗難防止でした。次に、中国に輸出した際、発注は多いのですが、代金が支払われない。そこで、GPSにセンサーを組み合わせ、代金を支払わなければ、遠隔操作でエンジンを切って動かなくすると顧客に通達しました。 売掛金を回収する手段にしたわけですね。 そうです。当時の中国は経済成長期で、建機を止められては困るため、未払いは激減しました。一方日本では、油圧ショベルやトラクターの部品は、廉価な他社製の互換部品が流通しており、純正品が売れないという問題がありました。 そこで、GPSとセンサーの組み合わせで、どこで使われている建機の、どの部品が摩耗している、回転数がおかしいといった不具合を検知できるようにしました。この情報に基づいて、コマツの販売代理店は、修理用部品を携えて現場に出向き、たとえば「明日、この機械は壊れます」と伝える。そう言われて、修理を断る人はいませんから、純正部品を購入して修理する。純正部品は利益率が高いので収益が改善し、タイムリーな交換によって故障や停止を予防できるため顧客満足も高まる、という好循環が形成されました。 途上国発のイノベーションが先進国に輸入される?リバースイノベーション?ともいえますね。 KOMTRAXは日本発でしたが、中国でGPSにセンサーを組み合わせたことで売掛金の回収に成功し、そのモデルが日本に逆輸入されて、当初は想像していなかった「予防保全」という新たな付加価値の創造に至ったというわけですから、たしかにそうともいえそうです。 実を言うと、KOMTRAXが生み出した付加価値はこれだけではありません。工事現場は山奥など不便なところにあることが少なくなく、かつては故障の連絡を受けると、サービスエンジニアが現場に出かけ、何がおかしいのかを診断したうえで必要な部品を取りに戻り、また修理のために現場に赴く、という2往復を強いられていました。しかし、KOMTRAXのおかげで、1往復で済むようになったわけですから、費用は半分になります。これは純正部品と同じくらい利益に貢献