ブックタイトルダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

ページ
10/48

このページは ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

ダイヤモンドクォータリー(2018年秋号) 顧客創造の実学 DIAMOND Quarterly

DIAMOND Quarterly 8らないと貫ける人。上司や周囲から常識的なアドバイスに耳を貸してしまったり、利益プレッシャーに負け、やらないと決めていたことに手を出してしまったりと、せっかくのビジネスモデルのよさが殺されてしまう可能性があります。大企業の中ではなかなか難しいですが、いかに聞き流せるかも重要です。 ご質問の趣旨から少し逸れますが、IT業界ではとにかくスピードが重要で、何かアイデアがあれば、とりあえず走りながら考える。これが当たり前とされてきたところがあります。技術進歩のスピードが速いですから、当然といえば当然です。ただし、ことビジネスモデルに関しては、綿密に計画を練って慎重に実行するアプローチと、試行錯誤の過程で創発的にビジネスモデルができ上がる、という2つのタイプが一般的です。 また、ビジネスモデルを構築するために「ビジネスモデルキャンバス」というツールを利用する人が少なくありません。これは、ビジネスモデルを9つの要素に分類し、それらが相互にどのように関わっているのかを図示するもので、大変便利です。流行したのもよくわかります。 ただし、一つ注意すべき点があります。それは、このツールは「競争優位」という視点が弱いことです。ビジネスモデルの目的は、持続的な競争優位を確立し、他社がおいそれとは真似できない仕組みを構築することにほかなりません。圧倒的優位を獲得したビジネスモデル事例 我々もフレームワーク病かもしれませんが、研究の醍醐味を感じさせたビジネスモデルをいくつか教えてください。 スター・マイカという会社をご存じでしょうか。賃借人が住んでいる住宅?特にマンション?を売買する「オーナーチェンジ」という取引に特化した不動産会社で、2006年にジャスダックに上場し、2017年には東証一部へ指定替えを果たしました。そのユニークなビジネスモデルは、一橋大学が選定しているポーター賞も受賞しています。 オーナーチェンジとは、分譲マンションの所オーナー有者が、現在居住している賃借人をそのままにして、その物件を売買することです。賃貸借契約を維持したまま所有者だけが代わるため、オーナーチェンジと呼ばれます。 不動産業界では、オーナーチェンジは面倒が多く、リスクも高いと敬遠されてきました。日本では、法律上賃借人を追い出せないからです。そのため価格も、空室のマンションに比べて25%ほど安くなります。スター・マイカは、こうしたオーナーチェンジ物件を「75」で買い取り、退居後にすぐにリフォームを施し、「100」で売却するというビジネスモデルを編み出しました。賃借人がいる間は家賃収入が入り、退去後は売却益が入るので、どっちに転んでも損はしません。 もちろん、賃借人の退居時期を予測するのは難しいですが、物件を多数所有することで大数の法則が働き、保有期間はだいたい3年半であることが見えてきました。また、他の不動産業者は、スター・マイカにオーナーチェンジ物件を紹介すれば、物件の売却時を含めて2回の手数料にあずかれるので、ウイン・ウインの関係が成り立っています。 スター・マイカは、不動産出身者ではなく、金融出身の方が創業しました。ビジネスモデルは、金融の「裁定取引」と同じです。すなわち、価格差を利用して売買を行い、利ざやを稼ぐビジネスです。スター・マイカの場合、賃貸中の中古マンションの価格と、空室の中古マンションの価格との間に差がある点を利用しています。また、転換社債の考え方に似たビジネスモデルと見ることもできます。転換社債は、株が値上がりすれば売却して利益を出せますし?賃借人が出ていけば売却益が出る?、上がらなければ元本から利息を得るわけです?賃借人が出ていかなくても家賃が入る?。 セブン銀行を高く評価されています。 セブン銀行もとても独創的です。銀行の伝