ブックタイトル経営参謀
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経営参謀
042安部野との再会高山はJR荻窪駅の改札を出て、南にある住宅街に向かって歩いていた。時折、肌寒い風も吹くものの、ジャケットで十分な心地いい天気の中を10分ほど歩き、昭和の時代に作られたのであろう鉄筋コンクリートの巨大な民家のような建物の区画を回り込み、大きな鉄製の門の前に着いた。脇にある小さな通用口のインターホンのボタンを押し、しばらく待つと「はい」という男の声が返ってきた。名前を名乗るとロックが外れる音がして、高山は通用口から中に入った。建物のドアの鍵は開いており、そのまま玄関口に入ると、奥から「中に入ってくれ」という声が響いてきた。高山は靴を脱ぎ、天井は高いがなぜか薄暗いエントランスを通り、中に入って行った。高山が入ったいかにも昭和の来客用応接室には、その時代の応接セットがあり、黒いジャケットを着た髪の長い細身の男が座っていた。「安部野さん、お久しぶりです」「ああ…」高山の呼びかけに男は顔を上げずに、足を組んだまま、しかめっ面でA3の資料をにらみつけていた。高山は勝手に男の対面に座った。「急に押しかけてすみません。忙しそうですね」男は不機嫌そうに顔を上げ、「別にいつもと同じだ」と言って資料をテーブルに投げた。