国税局直轄 トクチョウの事件簿 page 2/10
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18“資産隠し”が横行する美術品の取引美術商の調査は、上田が特別調査部門の指揮を執って2件目の事案となった。上田にとって、税務署での調査は20年ぶりだった。東京国税局に採用されて、税務署で4年間の調査経験....
18“資産隠し”が横行する美術品の取引美術商の調査は、上田が特別調査部門の指揮を執って2件目の事案となった。上田にとって、税務署での調査は20年ぶりだった。東京国税局に採用されて、税務署で4年間の調査経験を積んだところでマルサに招集され、そこに足かけ20年間拘束されていた。上田はマルサの調査経験で日本の裏側をつぶさに見てきた。マルサから出てきて1件目の事案は「架空外注費」を計上した建築関連業だったが、税務署での20年ぶりの調査にしては、首尾は上々だった。もっともこの業界については、マルサの経験で十分に商慣習を知っていた。調査には「ツキ」がつきものだ。上田は、美術商の調査を成功に導いたのも、1件目の架空外注費の事案の成功があったからだと思っている。そもそも、美術商の調査は一般的にとてもむずかしく、税務署単独での調査では成功例が少ない。商取引が複雑で解明が困難な場合が多く、現金での取引も多くおこなわれているからだ。商慣習として在庫(美術品)を他の美術商に預けておく「預け在庫」や資産家が美術品の購入を資産隠しに利用している場合もある。裏金で買う人には領収書を発行しないため、脱税の発見がむずかしい。さらに、脱税した資金(「たまり」)の多くが預金などの調査しやすい資産で留保されず、帳簿外の資産になっている場合も多い。その資産が美術品だった場合、現状では美術品の評価を