目次


ポストM&A 成功戦略

企業価値を最大化する統合の実践シナリオ


[目次] [著者紹介]


表紙




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はじめに


序章 ポストM&A——ディール後から始まる本当のストーリー

M&Aの成立
それは終わりなき長い道程へのプロローグ


大型案件目白押しのM&A熱狂に潜む罠
「成功」に導く方法論としての“ポストM&A”
“主語を転換する”というパラダイムチェンジ
【ケーススタディ】業界のフロントランナーになる気概を社名に——J.フロント リテイリング(大丸+松坂屋)


第1部 ポストM&Aと成功の条件
第2章 DAY1——成立から「成功」への架け橋

1 M&Aにおける「成功」の定義
目的達成度を高め、客観的評価が得られること


M&Aの「成立」と「成功」は本来異なる
「成立」と「成功」は包括的な関係でもある
主観的評価と客観的評価が同時に問われる
目標達成ができたという企業は3割を割る
ステークホルダーの中では株主重視の傾向
P/L指標を成果のモノサシにする企業が多い
「成功」とは持続的かつ長期的なプロセス
他社の経営資源を同一企業の視点で捉え直す
日本企業のM&Aの多くは節約効果止まり

2 成否を分ける2つの重要実務
戦略策定と統合実務


戦略策定から始まるM&Aの基本プロセス
ターゲットを絞り込み基本条件をつめる
基本合意は案件成立のメドが立った段階
失敗しやすいM&Aの原因はどこにあるのか
「戦略立案」と「ポストM&A」が最重要の実務
デロイトによるM&A成功のための要諦

3 ポストM&Aの成功の鍵
統合の成果こそ「成功」の果実をもたらす


M&Aにとってはディール後のほうが課題
成功例においては株価が長期的にはに上がっていく
ポストM&Aのスタート地点は基本合意
ステークホルダーの評価が不可欠なゴール
DAY1は新会社の統合日=業務の開始日
ポストM&Aという新しいターゲットを示す
周到な準備によるロケットスタートが理想
DAY1はイベント日ではなく実行開始日
DAY0は実質的なスタートである基本合意
クロージングを待っていては間に合わない
DAY0からDAY1の期間は短縮傾向
【エピソード】DAY1にいたるまでの苦悩の日——A社M社長

4 DAY1までの課題
統合効果の定量的な分析をやっておく


経営者はDAY1で目標数値と行動指針を示す
顧客には営業政策の変化を正しく伝える
まずターゲットとなる目標を定量的に語る
従業員に示すべき「大きな絵」と「小さな鏡」
【ケーススタディ】象徴的なメッセージでわかりやすく示す——伊藤忠テクノソリューションズ
ステークホルダーに起因するリスクに対処
リスクの対象範囲を見極める
ステークホルダーごとに対応を準備する
統合に潜むリスクに積極的に対応する
新たなステークホルダーの登場に要注意
【エピソード1】統合相手が背負う見えない無数の関係者——サービス業M社 S社長
効果とリスクを両面で捉えたシナリオを開示
【エピソード2】市場はリスクを上回るメリットを要求する——Q社
シナジー効果を顧客・取引先へ還元する発想
【エピソード3】顧客にメリットがあることがM&Aの条件——食品専門商社B社

第3章 ポストM&Aの成功シナリオ

1 成功への発想の起点
基本コンセプトと5つの原則を押さえる


基本コンセプト:「新会社」を主語とすることを基軸に
【ケーススタディ】新会社の基本的価値観や原則を明文化する——JFEグループ
原則1:統合シナリオを当初にしっかりと描く
原則2:ロケットスタートしスピード感を持続する
原則3:シナジー効果の実現をマネジメントする
原則4:3つの重点領域にノウハウを投入する
原則5:強力なリーダーシップを終始貫く

2 統合の成功シナリオ
「2つの壁」を超えるシナリオを描く


「利益創出」という壁
コスト削減のシナジー効果をいち早く実現する
リストラの限界を打破する
数年後の成長の「踊り場」をいかに超えるか
「成長型ビジネスモデル」への再構築を
外部とのさらなる提携や買収も視野に入れる
成長シナリオの成否は利益創出にかかる
【ケーススタディ1】成功シナリオ(1) 国内トップクラスの開発パイプラインを実現——中外製薬
【ケーススタディ2】成功シナリオ(2) コスト削減効果を梃子にさらにM&Aを展開——エディオン(家電業界)

3 成功へのマイルストーン
評価タイミングは1年以内を意識する


評価タイミングは成功企業ほど短期化
1年以内に結果を出すスピード感を持つ

4 ポストM&Aの全体工程
4つの時系列フェーズでアプローチする


フェーズ1:成立から成功へのつなぎ
フェーズ2:軌道に乗せるターニングポイント
フェーズ3:本格的な成果の実現
フェーズ4:次なる成長への転換
フェーズ0:アーリーステージのポストM&A
【エピソード】従業員向けの開示レベルを事前に擦り合せ——ライバル会社同士の合併

5 統合領域の全体像
5つの領域で解決アプローチを考える


1 ビジョン・戦略を策定する
2 組織とガバナンスのあり方を決める
3 業務プロセスを変更する
4 制度・システムを統合する
5 企業風土(カルチャー)を融合する
重点3領域がポストM&Aの成否の分かれ目
M&Aの成果を上げるために欠かせない実務
優先順位を明確にして取り組む

6 統合マスタープランの策定
3つのステップで質の高いプランを作る


ステップ1:成功シナリオを大まかに描く
ステップ2:あるべき姿を青写真に具体化する
ステップ3:スケジュール化と準備作業に着手する
新会社設立に向けてやるべき作業項目を整理
統合プロジェクトによる統合実務の検討作業


第2部 ポストM&Aと経営戦略
第4章 統合ダイナミズムを生かした経営戦略

1 成長志向の統合戦略
成長戦略の中にM&Aを位置づける


M&Aの方向性は2つの選択肢に収斂
“買い”だけではなく“売り”も選択肢
成長を志向する4つの統合戦略パターン
類型1:ポジションアップ型(同一事業内で“横”に成長する)
【ケーススタディ1】コア事業に軸足を置きながらターゲット層を拡大——明治製菓
類型2:バリューチェーン強化型(同一事業内で補完関係を作る)
類型3:ビジネスモデル開拓型(類似性を生かしながら新事業)
【ケーススタディ2】共通性と補完性を有する異業種間の大型統合——キリングループ・協和発酵グループ
類型4:ポートフォリオ拡大型(自己完結型の新事業で多角化する)
【ケーススタディ3】現実的なメリットも享受した段階的なM&A——三菱ケミカルHD

2 統合戦略のパラダイム
統合ダイナミズムを織り込んだ事業戦略を描く


統合がもたらす4つのダイナミズム
(1)プレゼンス(市場における存在力)
(2)イノベーション(革新する力)
(3)シンクロナイゼーション(同調する力)
(4)レバレッジ(少ない投資で大きな成果をもたらす力)
M&A戦略類型と統合ダイナミズムの関係
ポジションアップ型はシンクロとプレゼンス
バリューチェーン強化型はシンクロとプレゼンス
ビジネスモデル開拓型はレバレッジとイノベーション
ポートフォリオ強化型はイノベーションとプレゼンス

3 新中期経営計画の策定
インタラクティブとトップダウンがキーワード


インタラクティブで計画を見直す—単純合算では失敗する
トップダウンでアプローチ—“引き算”と“掛け算”の発想
“グループ全体”としての中期経営計画も不可欠
【ケーススタディ1】“提供できる価値”をグループの事業ドメインに——小田急グループ
ダイナミズムを発揮する部分に資源を重点配分
シナジー効果を施策化して計画に反映させる
【ケーススタディ2】トップダウン目標+ギャップを埋めるシナジー効果——合併新建設会社K社
「DAY0からDAY1以降3ヵ月以内」に計画を策定
実行プロセスをモニタリングする仕組みを作る
事業会社も買収当初から出口戦略を描くべき
【ケーススタディ3】戦略的整合性と投資採算性を軸に意思決定——商社H社

第5章 シナジー効果をマネジメントする

1 シナジー効果のマネジメント
効果の実現まで一貫してマネジメントする


シナジー効果は成功と強い関係がある
M&Aの各段階でシナジー効果を検討する
DAY1までに定量化を行い経営目標化する
案件成立よりも統合目的の明確化のために検討

2 シナジー効果とは何か
経営資源と機能のマトリックスで洗い出す


コスト効率の面からは2つの原理で捉える
経営資源に着目して2つに分類して捉える
経営資源のマトリックスで自社資源を点検
ディスシナジーと投資コストは差し引く

3 定量化のアプローチ
財務諸表からシナジーのインパクトを測る


シナジー効果を財務科目ごとに数値化する
シナジー効果は「利益の比較」がわかりやすい
シナジーバリューマップという体系図を用いる
シナジー効果を体系的にモニタリングできる
売上シナジーの数値は“アクション”で裏づける
レバレッジが効く領域ではクロスセリングを検討
重複関係の強い領域ではシンクロが効く施策
販売アプローチを同時化し統一的に進める
【ケーススタディ1】重複顧客をターゲットにコストや生産性を比較——メーカーB社
目に見えない“潜在シナジー”を定量化する
潜在的なものを顕在化していく仕組みを作る
【ケーススタディ2】定量化事例
人材やノウハウ面の統合メリットを数値化——エンジニアリングK金属

4 PDCAサイクルのモニタリング
実行主体・スケジュール・予算を明確にする


シナジー効果の定義書でPDCAサイクルを回す
定性・定量の両面でシナジー効果を検討していく
合併においてはボトムアップ的な検討も重要
【ケーススタディ】「シナジーハンドブック」で効果を浸透させる——製薬会社C社
【エピソード】シナジーを醸成する環境作りに力を入れる——伊藤忠テクノソリューションズ


第3部 ポストM&Aと組織・ガバナンス
第6章 組織・ガバナンスをあるべき姿に変革する

1 役員体制のあり方
実力主義とスピード感が決め手となる


バランスを考慮すると役員体制は失敗する
成功企業ほど出身を問わず能力に応じて選定
DAY1までに役員と権限ルールを決めておく
スピード感がポストM&Aの作業に直接影響
【ケーススタディ】“あるべき機能論”から役員数を大幅に削減——情報通信J社

2 組織図の統合パターン
“あるべき姿”から積極的に組織構造を変更する


積極的に踏み込んで双方の組織構造を変革する
あらゆる観点から見直すことが成功の条件
買収のケースでも組織の再編成が成功に寄与
重複部門の統廃合や営業体制の強化が戦略的課題
DAY1で一気に新組織へ移行するのが理想
人員配置の決定プロセスや基準が公平であること
管理職の配置は実力本位で行うことが重要
「たすきがけ人事」の長期化は変化の機会を奪う
ロードマップを示し段階的に変えていく
【ケーススタディ】部課長クラスを相互に完全に交換——JFEホールディングス

3 組織変革シナリオ
現実と新組織図のギャップを埋めていく


“対等の精神”というメリットとデメリット
新会社を主語にして考えると意味が変化する
最初のルール作りこそ対等に行うべき作業
“配慮”と“割切り”で力関係を整理していく
【エピソード】6:4ぐらいで自社の主張が通ればよい——化学会社M社
各レベルの意思決定における原則を決める
キーパーソンを統合のリンクピンにする
【ケーススタディ】背を向けた専務が一転推進役に——建設会社X社


第4部 ポストM&Aと人事・風土
第7章 統合インフラを整備する人事政策

1 新たな人事評価と報酬制度のあり方
統合のスケジュールやインパクトを明確にする


人事統合がもたらす大きなインパクト
人事制度は中長期的な制度統合のスタンスで
統合のフレームワークとなる考え方を整理する
報酬制度の設計が抱える2つのジレンマ
人事制度統合のパターンのメリットとデメリット
買収の成功案件の約半分が人事制度を統合
合併ではゼロベース型にも一定の有効性がある
移行タイミングの考え方は大きく2つある
アナウンスメント効果が意識と行動の統合を促す
報酬ギャップにはコストとリスクを考えて対処
成功企業ほど新しい報酬水準に切り替えている
DAY1から1年以内に大半がギャップを解消

2 労働組合との関係
早い時期に大枠での合意を形成する


労働組合が統合するケースほど成功する傾向
改革の方向性や処遇のスタンスをまず共有
組合とのコミュニケーションが大きく影響
【ケーススタディ】プロセスを重視した粘り強い対話——K社

3 モチベーションマネジメント
優秀な社員をしっかり登用するシステムを作る


モチベーションに影響を与える3要素

4 リテンションプラン
DAY0以前からプランの策定を開始する


M&Aは人材流出のトリガーになりやすい
【ケーススタディ1】情報開示の前後からリテンションを想定——製造業L社
リテンションプランに込めるべきメッセージ
企業価値が向上するシナリオで期待感を喚起
キャリアの可能性と組織からの信頼を示す
買収側や存続する側にも人材流出の危険
【ケーススタディ2】1年後、不安が責任感へと変化した——金融会社L社の担当者A

第8章 風土融合と同軸化というキーワード

1 風土融合の本質
新会社を同軸とした行動や価値観の共有


風土は同一化ではなく“同軸化”こそが大切
クロスボーダーM&Aではさらに工夫が求められる

2 風土融合に有効な施策
ハードとソフトの両面からトータルで対策


風土融合が組織のパフォーマンスを引き上げる
経営理念の相違を議論することに意義がある
人員の再配置で一体的な風土が醸成される
買収の場合は意図的に人材交流を仕掛ける

3 チェンジマネジメント(日本的変革の方法論)
“横”からの組織改革がキーポイント


変化するリスクを回避する日本的集団主義組織
日本的組織を変革するアプローチの方法論
ハードが変わるとおのずとソフトも変わる

4 変革集団の形成
日本型CFTによる変革アプローチも有効なツール


各機能・部門が単独では解決できない課題に対処
1 経営者のリーダーシップとスポンサーシップ
2 参加メンバーには従来以上の権限が必要

5 変革シナリオの構想と演出
変革へのコミットメントを宣言する


段階的な変革のエネルギーをいかに維持するか
【ケーススタディ】危機感を醸成しながら組織・人事を抜本改革——外資系医療機器C社

6 風土融合に向けた様々な試み
違いを目に見えるかたちにすることが相互理解の第一歩


言葉の違いを比較するための“用語集”を作成
顧客という共通のターゲットでまとまる
【ケーススタディ1】ソフトドリンクとアルコールの違いの理解に2年——食品会社
個人が交流できるコミュニケーションプラン
【ケーススタディ2】同じフロアに配置して交流機会を作る——サービス系B社
【ケーススタディ3】社員の人事データから出身会社情報を削除——保険会社S社
コミュニケーションを促す施策事例
【ケーススタディ4】横断的なバーチャルチームを組成——情報通信H社
【ケーススタディ5】毎週1回はメールマガジンを配信——C製薬
【ケーススタディ6】若手チームの意見を中期計画に反映させる——M社
【ケーススタディ7】「統合マニュアル」を社員に配布——S社

終章 現在の利害を超えた強いリーダーシップ

1 統合におけるリーダーシップ
3つの利害対立を乗り越えていく統率力


外部と内部、組織と個人、過去と未来の3つの対立
同じタイミングで一挙に抱え込むという特殊性

2 統合リーダーシップの2つの前提条件
統合メリットとトップ同士の信頼関係が不可欠


立ち返るべき原点は統合メリットの共有
話しにくいことは交渉の最初に持ち出すこと

3 統合リーダーシップの原則
明確なビジョンと統一されたルールを打ち出す


1 新会社の利益をビジョンとして具体化する
2 個人と組織をマッチングさせる統一ルール

4 経営者のとるべき行動
変革に向けて優先すべき事項を明確に示す


統合によって実現すべき姿をビジョンにする
トップ自らが原理・原則に沿った行動を示す
現場主義のコミュニケーションにこだわる
【エピソード】「数字」と「対話」のもたらす威力——J.フロント リテイリング(大丸+松坂屋)
1 「数字」が引き出す改革の求心力
2 「対話」がもたらす融和力



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著者

松江英夫(まつえ・ひでお)
デロイト トウシュ トーマツのメンバーファームであるトーマツ コンサルティング株式会社パートナー兼取締役。
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。経営戦略・組織領域の専門部隊(Organization & Strategy)を管掌する立場でコンサルティング業務に従事。主に大企業を中心に戦略構築から組織改革の実行をテーマにしたプロジェクト案件、とりわけ近年は上場企業・大企業間の経営統合、国内・クロスボーダーM&A、グループ再編におけるポストM&A領域の経験を豊富に有する。同時に、独自の研究・発信活動を多数展開。主な著書に「経営統合戦略マネジメント」(日本能率協会マネジメントセンター)、「M&Aを成功に導く実践ガイド(企業研究会、共著)他、日本能率協会、慶應丸の内シティーキャンパス、企業研究会、M&Aフォーラム等で講師を務める。
連絡先:hmatsue@tohmatsu.co.jp


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