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はじめに
第1章 企業栄えて家計滅ぶ ——格差問題の根底にあるもの
1 減少した賃金所得
企業収益は伸びるが、賃金は上がらない
グローバリゼーションによる世界賃金平準化
2 マイナスになった家計の純利子所得
利子所得が顕著に減少
家計に不利に働いた金融緩和
家計から企業へ二〇〇兆円の巨額移転
「企業が栄えれば家計も栄える」時代ではなくなった
3 対外経済構造の大きな変化
製品輸入の増加
輸入物価の下落で国内物価が下落
中国特需による景気回復
九〇年以降の物価下落は「デフレ」ではない
生産拠点の海外移転が進展
4 物価下落や賃金伸び悩みは対外関係の変化による
経済政策の判断基準は適切なものか
構造変化を分析する必要性
賃金が上昇しないのは構造的な現象
格差拡大は構造的な問題
5 格差是正策や成長促進策では解決できない
対症療法的な格差是正策に依存できるか?
所得政策に依存できるか?
安倍内閣の経済政策の基本は成長促進
成長促進政策で問題が解決できるか?
産業構造の改革こそ必要
第2章 世界の大変化に追いつけない日本 ——アイルランドやイギリスが日本を抜いた理由
1 躍進する「脱工業化国」と没落する「産業大国」
日本の地位は大きく低下した
豊かさで日本を抜いたアイルランド
アイルランドは外資導入とITで成長した
イギリスも日本を抜いた
イギリスは外資導入と金融で成長した
離陸する「脱工業化社会」
2 二一世紀型グローバリゼーション(1)——オフショアリング
二〇世紀型と二一世紀型のグローバリゼーション
オフショアリング——コールセンターから専門的業務まで
受け手国が急成長する
出し手国の利益率が上昇する
世界経済をリードする国が交代する
なぜ日本は取り残されるか
3 二一世紀型グローバリゼーション(2)——先進国間の直接投資
ウィンブルドン現象は歓迎すべきこと
資本鎖国している日本
4 二一世紀型グローバリゼーションの経済効果
生産要素が国境を越えると何が起こるか
生産要素の移動と貿易の相互関係
対外直接投資は賃金を引き下げる
復活するマルクスの図式?
オフショアリングの雇用への影響
外国人労働者を排除しなければならないか?
資本開国こそ日本経済活性化の出発点
第3章 量の拡大でなく、質の向上を ——本当に必要なイノベーションは何か
1 出生率引上げでは労働力不足や年金問題は解決できない
人口減少社会で必要なことは何か
出生率引上げは問題を解決しない
出生率を倍増できても事態はあまり変わらない
深刻なのは依存人口比率が高まること
少子化社会は負の側面だけではない
多すぎる人口はさまざまな問題を持つ
少子化社会の問題(1)——サービス産業における労働力不足
少子化社会の問題(2)——世代間移転が困難になる
重要なのは社会の仕組みを変えること
2 低生産性部門の再編で労働力不足に対応する
高齢者と女性の労働力率の引上げ
過剰サービスの見直しによる効率化(1)——仮想例
過剰サービスの見直しによる効率化(2)——現実の目安
できるかどうかが、政治の役割
3 日本に未来型企業がない
日米の代表企業を三つのグループに分ける
アメリカに生まれている未来型企業の特徴
トヨタ以外のすべての日本企業を抜いたグーグル
トヨタやキヤノンは日本の未来を支えうるか?
主導企業が交代するアメリカ
主導企業が交代しない日本
4 コモディティ化からの脱却を目指せ
「コモディティ」とは
製造業におけるコモディティ生産からの脱却
エレクトロニクス産業におけるコモディティ化の進展
ソフトウエア産業の重要性
サービス産業におけるコモディティ生産からの脱却
欧米金融機関に立ち遅れる日本の金融業
コモディティ化しないサービスを提供できる金融業が必要
プロの育成が必要
「貯蓄から投資へ」は、プロに求められること
第4章 難題山積の財政改革 ——これまで何が行なわれたか
1 財政再建の道筋は見えない
他力本願の国債減額
プライマリーバランスだけでは再建にならない
2 重要課題は先送りされたまま
先送りされた道路整備特定財源問題
保険料未納問題の根幹
「骨太税制改革」の正体
新しい民業圧迫が始まる
3 きわめて深刻な年金問題
給付の大幅削減しか方法はない
「止められないから続けざるをえない」公的年金制度
年金改革は時間との競争
4 消費税の改革
税制こそ最重要の政策課題
選挙前の議論封印は議会制民主主義の否定
インボイスの導入が不可欠
「福祉目的税」はまやかし
歳出削減努力が低下する
際限ない負担増がもたらされる危険
目的税の問題点は、収入と支出の伸び率の大小関係で異なる
第5章 法人税減税では日本経済は活性化しない ——「まやかし経済学」はやめにしよう
1 法人税負担は企業の国際競争力をそぐか?
法人税は所得税と違う
法人税は生産コストを規定する要因ではない
公的負担の転嫁の可能性
法人税は転嫁されない
社会保険料は転嫁される可能性が強い
2 法人税は投資に中立的
法人税率の変更は課税後の資本コストを変えない
数値例による説明——投資が借入れで賄われる場合
投資が増資で賄われる場合
経済活性化に関係する税は何か?
重厚長大産業を助ける減税
なぜ法人税の減税が主張されるのか?
3 海外移転の原因は法人税ではない
海外移転しても法人税は変わらない
みなし外国税額控除がもたらす歪み
生産拠点を移す理由は賃金格差と社会保険料負担
4 法人税を減税するなら資本輸入のために
ヨーロッパにおける法人税率引下げの目的は資本輸入
日本でも資本輸入促進は必要
5 日本の税負担率は国際的に見て高くない
法人税実効税率の高さが企業活力をそいでいるとは思えない
重要なのは税率ではなく負担
日本の租税負担率は主要国中では最低レベル
6 学ぶべきレーガン税制改革は八六年改革
二つのレーガン税制改革
失敗した八一年改革
成功した八六年改革
日本が学ぶべきこと
第6章 資本開国こそが日本を活性化する ——いま本当に必要なこと
1 金融緩和・円安政策は時代遅れ
従来型の産業を延命させた金融緩和・円安政策
インフレターゲット論の理論的な誤り
日本の経済政策のバイアス
国際収支の推移
円高阻止のための量的緩和
円安を問題としなくなった世界
日本に期待されているのは資金供給
日本は損な役回りを進んでやっている
2 資本開国による企業改革
イギリスは資本開国で復活した
アイルランドは資本開国で脱工業化社会に飛躍した
直接投資の現代的な効果は経済活性化
日本における対内投資促進の取組み
資本自由化に対する強い抵抗
「ハゲタカ外資」に象徴される感情的反発
ファンドによる買収は排斥すべきか?
資本開国で企業活性化を目指す
経営者にも競争が必要
「異質なもの」が必要
三角合併が突破口
外国企業に買い占められてしまう?
税制との関係
大きな阻害要因(1)——株の持合い
大きな阻害要因(2)——買収防衛策
最重要の買収防衛策は従業員の能力を発揮させる経営
3 本当の資産大国への道
貿易大国から資産大国へ
資産大国としての資産運用ができていない
アメリカの所得収支が黒字だった理由
金利差と為替レート
アメリカは為替リスクを取って低利の資金調達ができた
日本は為替リスクを取らず高利回りを実現できなかった
円高阻止介入による歪み
「大失敗」の連続だった日本の対外投資
信じられぬほど非効率な外貨準備の状況
対外資産運用を見直す必要性は高い
異常な低金利・円安政策からの脱却は必要だが、可能か?
対外資産収益率の向上は、経済成長率の引上げと同じこと
【付論(1)】グローバリゼーションが賃金に与える影響
1 モデル
資本集約度の異なる産業を考える必要
いくつかの仮定
貿易前の均衡
生産可能性曲線
最適生産点
要素価格フロンティア
2 貿易効果の分析
比較優位部門への特化
中国との貿易で日本の賃金が下落する
資本集約財の価格が上昇すると賃金が下落する
要素価格フロンティアによる分析
資本賦存量の増加は資本集約産業の生産を拡大する
失業や市場の不完全性がある場合
【付論(2)】対外投資と為替リスク
単純化の仮定
日本からアメリカへのドル建て資金移動
日本からアメリカへの円建て資金移動
投機を助長し直接投資の阻害になる日本の金融緩和継続
物価上昇率、名目金利、実質金利、円増価率の関係
円増価率を歪ませたマクロ経済政策
図表目次
索引
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