地球を「売り物」にする人たち
異常気象がもたらす不都合な「現実」
地球を「売り物」にする人たち
異常気象がもたらす不都合な「現実」
書籍情報
- マッケンジー・ファンク 著/柴田裕之 訳
- 定価:2200円(本体2000円+税10%)
- 発行年月:2016年03月
- 判型/造本:46上製
- 頁数:464
- ISBN:978-4-478-02893-3
内容紹介
北極海に眠る資源争奪戦に明け暮れる石油メジャー、治水テクノロジーを「沈む島国」に売り込むオランダ、水と農地を買い漁るウォール街のハゲタカ……壊れゆく地球すらビジネスチャンスに変わる「温暖化ビジネス」のえげつない実態を全米注目のジャーナリストが暴く。あらゆる紙誌で絶賛の嵐を巻き起こした現代の「必読書」
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目次
プロローグ ── 気候変動に「投資」する人たち
強欲な人間のシンプルでシニカルな前提「気候変動は止まらない」
気候変動で金持ちになろうと目論む人を訪ねて世界じゅうへ
第1部 融解 THE MELT
第1章 COLD RUSH
コールドラッシュ ── カナダ、北西航路を防衛す
石油と航路 ── 北極海の2つの宝
地球温暖化は危機なのか、「絶好の機会」なのか
「解ける氷」が領土・領海争いに ── 愛国者の言い分
気候変動と国家安全保障 ── カナダの恐れ
不毛なデヴォン島で起こった滑稽な衝突
お宝だらけの北極圏の「帝国主義的分割」 ── ワシントンの皮算用
極北の野営地にて ── 彼らはいったい何を防衛しているのか
「地球温暖化は好都合」 ── 大胆であけすけなロシア
北西航路の理想と現実
第2章 SHELL GAMES
シェルが描く2つのシナリオ ── 気候変動を確信した石油会社は何を目指すのか
シェルが「シナリオ・プランニング」で見出した2つの未来
氷の下に石油を期待する人たちが集う「結論ありき」の会議
理想主義の「ブループリンツ」か、利己主義が横行する「スクランブル」か
世界最北の液化天然ガス事業「スノーヴィット」
リースセール193 ── 北極海の海底オークションで見たシェルの変貌
「争奪戦」の世界へ ── 未来学者たちの建前と本音
第3章 GREENLAND RISING
独立国家「グリーンランド」の誕生は近い ── 解けるほどに湧き出す石油、露出するレアメタル
気候変動の「恩恵」に沸くグリーンランド
沈みゆく国あれば、上昇する国あり
寛大な宗主国デンマークからなぜ分離したいのか?
独立に向けた巡回説明会に同行して ── ちらつくアメリカの影
石油、金、レアメタル ── 解けた氷河に群がる企業
こんな小さな村にまで ── 侵蝕する石油利権
「そのおかげで独立が買えるのであっても、いけないんでしょうか?」
第4章 FATHER OF INVENTION
雪解けのアルプスをイスラエルが救う ── 人工雪と淡水化というおいしいマーケット
後退する氷河と「人工雪ビジネス」の現場へ
なぜイスラエルで人工雪製造機が誕生したのか?
氷河の消失はビジネスチャンス ── 活況を呈する淡水化業界
世界一危険な場所にある「海水淡水化プラント」を訪ねて
将来の水不足を「潜在市場」と呼んでいいのか?
第2部 旱魃 THE DROUGHT
第5章 TOO BIG TO BURN
災害で利を得る保険ビジネスの実態 ── 保険会社AIGと契約する民間消防士
営利の民間消防隊、ロサンジェルス郊外を疾駆する
火事だらけの世界で生まれた「災難をめぐるゼロサム経済」
AIGと契約している家しか守らない
シリコンヴァレーでは「天候」すら保険業の対象に?
カネの匂いのする火事を求めて
自由至上主義者が見た夢、現場が見る悪夢
第6章 UPHILL TO MONEY
水はカネのあるほうへ流れる ── 投機対象になった「次世紀の石油」
「水交易」専門のヘッジファンド
淡水を袋に詰めて運ぶ? ── 運搬という高すぎるハードル
「しわ寄せは弱者へ」 ── 運河をめぐるアメリカとメキシコの確執
「水そのもの」を世界じゅうで買いあさる ── 水利権ファンド登場
大旱魃に見舞われたオーストラリアで急成長する水ブローカー
第7章 FARMLAND GRAB
農地強奪 ── ウォール街のハゲタカ、南スーダンへ
ウォール街の男ハイルバーグと軍閥の長マティップ
国家分裂と食糧危機に賭けるえげつないビジネススキーム
狙われたのは農地と水 ── 南スーダンに伸びる魔手
ウオッカと引き換えに農地を ── もはや詐欺師と変わらない投資家たち
行き詰まる交渉、漂う戦争の気配
ウォール街が植えつけたのは希望の種か、それとも……
第8章 GREEN WALL, BLACK WALL
「環境移民」という未来の課題 ── 「緑の長城」が防ぐのは砂漠化か、それとも移民か
サハラ砂漠と闘う国、セネガルで見た頼りない「壁」
温暖化で失業した漁師が、移民密輸業者に
国連も見限った「緑の長城」は誰が支えているのか
EU最小の国マルタになだれ込むおびただしい数の難民
日本の新興宗教団体「崇教真光」、セネガルの地で木を植える
亡命すら認められない環境難民 ── マルタの隔離された「拘置所」で
サハラ砂漠を止める ── 立派な大義にお金が集まらない世界
第3部 洪水 THE DELUGE
第9章 GREAT WALL OF INDIA
肥沃な土地に「逆流」する脅威 ── バングラデシュからインドへの移民が後を絶たない理由
「静かなる侵略」と闘うと称するインド人愛国者
気候変動に伴う4つの課題がバングラデシュの5分の1を沈める
ダッカから南、湾岸地域へ ── 気候変動への「適応」の試み
シナリオ・プランニング再び ── もし数百万の避難民がインドに押し寄せたら
ドゥブリの元藩王との静かな午後
「京都議定書」のせいで、二酸化炭素を排出していない国が割を食う?
ついにたどり着いたフェンス、そこにあったものは……
第10章 SEAWALLS FOR SALE
護岸壁、販売中 ── オランダが海面上昇を歓迎する理由
水面下に沈んでも島嶼国は「主権国家」たりうるのか?
海抜以下の土地でGDPの7割を生むオランダ人から見た気候変動
「沈む国」にビジネスチャンスを見出した若き建築家
「低地のシリコンヴァレー」を夢見るロッテルダム
ニューヨークに防潮堤を売り込め
第11章 BETTER THINGS FOR BETTER LIVING
地球温暖化の遺伝学 ── デング熱の再来で盛り上がるバイオ産業
デング熱と蚊におびえるアメリカ最南端の町キーウェスト
「遺伝子組み換え蚊」で蚊を殺す ── 賛否両論渦巻くオキシテック社の研究
ビル・ゲイツ、数多の遺伝子組み換え研究に金をばらまく
バイオテクノロジーが儲かる理由を尋ねに「遺伝子組み換え工場」へ
神の御業を身につけた人間の「現在地」
第12章 PROBLEM SOLVED
テクノロジーですべて問題解決 ── 気候工学信奉者たちの楽観的な未来
ゲイツ、ホーキング博士も認めた未来学者ネイサン・ミアヴォルド
気候を操作したいと思った男たちの歴史
気候工学の特許取得は何を意味するのか?
「地球を冷ます」アイデアとテクノロジーを探す
「真珠のネックレス」と「ドーナツ」 ── 超天才発案の2つの方法
排ガス削減も再生エネルギーも役に立たない ── 気候工学支持派の言い分
では、誰にとっての問題解決なのか?
エピローグ ── 気候変動に関する、もっともつらい真実
私たちは手遅れになるまで傲慢さに気づかない
「誰かを犠牲にした利益」に手を伸ばす前に
謝辞
情報源について
訳者あとがき
著者
マッケンジー・ファンク(McKenzie Funk)
アメリカ・オレゴン州生まれ。スワスモア大学で哲学、文学、外国語を学ぶ。2000年からアメリカ各地、海外に赴いて記事を書く。解けてゆく北極圏の海氷の報道で環境報道に与えられるオークス賞を受賞し、タジキスタンで実施したグアンタナモ強制収容所から初めて解放された囚人のインタビューで若手ジャーナリストに与えられるリヴィングストン賞の最終候補に残った。これまでハーパース、ナショナル・ジオグラフィック、ローリングストーン、ニューヨーク・タイムズなどに寄稿し、高い評価を受ける。本書が初の著書となる。
本書は、ニューヨーカーでエリザベス・コルバートが「必読書」に、米アマゾンで2014年1月の「今月の1冊」に選出されたほか、ネイチャー、ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ等、書評が掲載された紙誌は数十にのぼる。
著者ホームページ:http://www.mckenziefunk.com/#windfall
訳者
柴田裕之(しばた・やすし)
1959年生まれ。翻訳者。訳書にジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)、ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト』(早川書房)、アレックス(サンディ)・ペントランド『正直シグナル』(みすず書房)、ジョン・T・カシオポ他著『孤独の科学』(河出書房新社)、マイケル・S・ガザニガ『人間らしさとはなにか?』(インターシフト)、サリー・サテル他『その〈脳科学〉にご用心』、ダニエル・T・マックス『眠れない一族』(以上、紀伊國屋書店)、ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない』、フランチェスカ・ジーノ『失敗は「そこ」からはじまる』(以上、ダイヤモンド社)ほか多数。
電子書籍は下記のサイトでご購入いただけます。
- kobo
- kindle
- COCORO BOOKS
- Reader Store
- 紀伊國屋書店Kinoppy
- honto
- Booklive!
- セブンネットショッピング
- Google Playブックス
- Apple Books
(デジタル版では、プリント版と内容が一部異なる場合があります。また、著作権等の問題で一部ページが掲載されない場合があることを、あらかじめご了承ください。)
「北極が解ければ、 もっと儲かる」
氷の下の資源争奪戦に明け暮れる石油メジャー、
水と農地を買い漁るウォール街のハゲタカ、
「雪」を売り歩くイスラエルベンチャー、
治水テクノロジーを「沈む島国」に売り込むオランダ、
天候支配で一攫千金を目論む科学者たち……。
地球温暖化「後」の世界を見据えた 「えげつないビジネス」の実態とは?
内容紹介
「地球温暖化は悪いことだ」
21世紀を生きる私たちは、例外なくそう教え聞かされたことがあるでしょう。
また一方で、「地球温暖化なんて本当に起こっているのか」という懐疑論に与する人もいるでしょう。
しかし、世界を見渡してみると、もっと違う反応、つまり「温暖化が起こっているかどうか」ではなく、「温暖化は起こるものだ」という前提に立った、もっと現実的で資本主義的、利益第一主義的な反応があることを暴いたのが、本書『地球を「売り物」にする人たち』です。
有り体に言ってしまえば、アル・ゴアの『不都合な真実』によって希少性が認識されたことで生まれた、新しい市場です。
全米注目の若手ジャーナリストである著者が、世界24か国を6年かけて訪ね歩いて明らかにしたことをご紹介すると……。
◆北極海の氷が解けて現れた「北西航路」と油田の利権争い(第1章、第2章) |
まるで人間の強欲さのカタログを見せられているような、本当の意味で「不都合な真実」の数々。
このままでは国土の5分の1が水没すると言われるバングラデシュや、全国民の移民も視野に入れているツバルなどの島嶼国への罪悪感を認識しつつも、「棚ボタ」的に現れたチャンスに反応する——
そうした人を、豊かな国に暮らし、多くの二酸化炭素を排出する先進国で暮らす私たちは、非難することができるでしょうか。
「温暖化が起こっているか否か」の議論はもはや不毛であり、この圧倒的な「新しい現実」を前に、私たち自身がどう行動していくのか
——そんな問いを本書は強く投げかけます。
なお、本書の原題Windfall は、「棚ボタ」の意です。
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