国税局直轄 トクチョウの事件簿
脱税をどう見抜き、暴くのか
国税局直轄 トクチョウの事件簿
脱税をどう見抜き、暴くのか
書籍情報
- 上田二郎 著
- 定価:1650円(本体1500円+税10%)
- 発行年月:2012年12月
- 判型/造本:4/6並製
- 頁数:224
- ISBN:978-4-478-02369-3
内容紹介
特別調査部門とは、風俗店や飲食店の他、弁護士、司法書士、医師など、大口の申告漏れが見つかりそうな案件を対象に活動する、国税局直轄の調査チームのこと。凄腕の調査官は、何をきっかけに脱税事件を嗅ぎつけるのか、どうやって巧妙に隠された脱税のスキームを暴き出すのか、そのスリリングな攻防を余すところなく描く。
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目次
プロローグ 花形調査部門 トクチョウ
商習慣や業界用語を網羅した『調査の手引』
「一般調査」と「特別調査」に分けて調査に濃淡
故意の“税金逃れ”には一歩も引かない覚悟
第1章 簿外取引と裏金づくり──美術商
[展示会と借名口座を悪用した巧妙な“裏取引”]
“資産隠し”が横行する美術品の取引
デパートが絡む一見ガラス張りの取引
“たまり口座”の名義人は外国人女性
“調査の勘”が美術商の深い闇を感知
1枚の送金伝票が明かした売上除外金
“調査の女神”はいつも突然微笑みかける
年2回だけの特別展示会に偶然に出くわす
下町で外国人登録をするなぞの北欧美人
尾行の必須アイテムは携帯電話とSuica
税務署の本気度が伝わった一斉調査
ついに“裏取引”の事実を認めた美術商
それでも裏取引の相手の名前は語らない
25年ぶりの“青色申告取消し”へ
第2章 売上除外とつまみ申告──弁護士
[“正義の味方”があきれる仲間ぐるみの税金逃れ]
前任者が“炎上”させたS弁護士への税務調査
反面調査で7000万円の売上漏れを発見!
突然提出された、T弁護士からの修正申告
税務署の動きを分析した計算高い“挑戦状”
“僕に預からせてくれ”と判断した署長の苦悩
過払い金返還請求訴訟で活況を呈する弁護士業界
署長からようやく調査着手の許可が下りる
協力の姿勢を見せつつ拒絶するT弁護士
“忙しい”という口実は調査拒否にならない
延べ70日にも及ぶ“機動官”の調査応援
T弁護士のクライアントへの怒涛の反面調査
帳簿がないなら“推計課税”もやむを得ない
探りを入れてきた国税OB税理士との心理戦
3年分の調査だけで終結を迫る国税OB税理士
着手から10か月かかったT弁護士との初対面
“日々の錯綜と混乱の中の誤り”という主張
所得の一部だけ抽出する“つまみ申告”
処分をめぐる調査担当者と審理担当者の対立
“帳簿が出てくる光景は思い浮かばない”
マルサの経歴を気にするT弁護士側
帳簿により7年間2億円の申告漏れが判明
第3章 架空給与と営業権譲渡──司法書士
[妻娘への“給与払い”で税負担を軽くした悪知恵]
特別調査部門は好況な業界を継続的に監視
賞与や年齢の記載がない不審な“給与欄”
端緒は自治体からの「扶養是正通知」
常勤しているはずの従業員の机が見当たらない!
全員の顔と席図を覚えて張込みを開始
給与が支給されている2人は一度も出勤せず
無予告調査に動揺するU司法書士
“先生はその従業員の年齢を知っていますか?”
“80歳ですよ。パートなんて、できやしないよ”
振込みで残高が貯まる一方の妻名義の通帳
すべての質問に妻ではなく夫が答える
対価を給料で支払うことにした“裏契約書”
“泥棒に追い銭”の面もある複雑な調査の結末
第4章 ダミー申告と影のオーナー──デリヘル
[偽装の店舗譲渡、なぜか同級生の女経営者たち]
夕刊紙の広告やネットの情報で調査対象を把握
店名や経営者を短期間で変える“ダミー申告”
歯科技工士がやった消費税の脱税スキーム
消費税逃れのための“偽装廃業”の疑い
風営法の届出が女性名義の店舗型デリヘル
商況確認のためにデリヘルに潜入調査
事務所や電話など契約者も女性経営者
届出人の到着を待って事務所に踏み込む
すでに店舗を譲渡したという契約書の存在
“譲った途端にお客様が増えて調子がよい”
毎月200万円の利益が出る店を譲渡するか
高校の同級生である3人の女たちの関係
ニセの契約書を毎年作り替えている疑い
決定的な証拠がない中で妥協を模索
第5章 現況調査と愛人勘定──獣医師
[去勢手術のからくり、階下に“特殊関係人”を囲う]
獣医師でもっとも多い不正手段は“去勢手術”
卓上カレンダーに記された“ナグモ SPAY2”
なぜ、去勢手術のカルテが存在しないのか
不正の端緒は見つけたがその裏づけがない
銀行への“ジュウタン爆撃”も不発に終わる
“ナグモ”さんに片っ端から電話をかける
“お宅は猫を飼っていますか?”前代未聞の調査
やはり去勢手術の現金売上を除外していた!
脱税金額をいかに合理的に算定するか
月夜に浮かび上がった“特殊関係人”の姿
“愛人勘定”という推計の柱が出来上がる
おわりに
著者紹介
上田二郎(うえだ・じろう)
1964年生まれ。東京都出身。83年、東京国税局採用。
千葉県内及び東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2年間の税務署勤務があるものの、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間を、マルサの内偵調査部門で勤務した。
09年、妻の実家を継承するために東京国税局を退職したが、縁あって再び税理士として税務の世界につながっている。
著書に『マルサの視界 国税局査察部の内偵調査』(法令出版)がある。