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元素戦略

科学と産業に革命を起こす現代の錬金術

  • 紙版
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元素戦略

科学と産業に革命を起こす現代の錬金術

書籍情報

  • 紙版
  • 電子版
  • 中山 智弘:著
  • 定価:2090円(本体1900円+税10%)
  • 発行年月:2013年11月
  • 判型/造本:46上製
  • 頁数:264
  • ISBN:978-4-478-02337-2

内容紹介

レアメタルと呼ばれ、日本を支える高度技術の要となる希少元素。その機能を、鉄やアルミなどのありふれた元素で置き換え、日本を資源大国へと変貌させる国家的施策が「元素戦略」である。科学と産業に革命的なインパクトを与えるこのプロジェクトの狙い、進捗状況、日本産業への貢献をあますところなく語り尽くす。

目次・著者紹介詳細を見る▼

目次

まえがき──差し迫る「元素危機」に日本はどう対応できるのか!

第1章 「元素戦略」とは何か

 元素と元素の間に「新しい元素」がある?

  「現代版・錬金術」を実現する「元素戦略」プロジェクトが始動
  世界の科学界を震撼させた「元素間融合」
  2つの元素の間にある元素をつくり出す!
  「欲しい機能」を都合よく取り出せるか?
  北川マジックは「周期表」に新しい元素をつくっている?

 箱根会議がすべての原点

  「元素科学」から「元素戦略」へ

 タテからヨコへ広がる「研究者の輪」

  国益につながる「夢の新材料」を生み出す
  効を奏した、「元素戦略」というネーミング
  NIMSが「元素戦略」の輪を広げた
  研究者の輪が広がっていく
  研究者にも「出口戦略」まで考えて欲しい

 人類にとって5度目のチャレンジ

  「金」が人類最初の戦略物資だった
  「気体の錬金術」──窒素、炭素が戦略物資に
  半導体による「多元素」時代
  いよいよ汎用元素の時代へ
  日本で進行中の「第2期の気体の錬金術」革命

 「元素戦略」の基本コンセプト

  細野教授の“非常識”な発想
  「1元素=1機能」の固定観念を覆す

 ナノテクロジーと「元素戦略」

  日本は最先端で生き抜くしかない
  コストパフォーマンスの高いナノテク
  世界の趨勢に背を向けた日本
  「元素戦略」はナノテクに「目的」を与えた
  共同研究の前に立ちはだかる“方言”の壁
  「元素レベル」になると世界共通言語

 明治以来、官庁始まって以来のプロジェクト

  文科省、経産省との交渉を繰り返すが……
  文科省は基礎部分に、経産省は応用部分に

第2章 逼迫する“希少元素”の実態

 レアアース、レアメタルの意味と用途

  希土類? レアアース?
  「レアアース」は世界共通語
  経産省が人為的に選んだのが「レアメタル」
  チタンは埋蔵量が多くてもレアメタル?
  レアメタルは「産業のビタミン」
  副産物として取れるレアメタル

 なぜ、埋蔵量50%の中国が90%の市場シェアを握るのか?

  埋蔵量と生産量の間にある乖離
  レアアースの独占供給国へ

 レアアースの大きな「需給ギャップ」

  鄧小平の執念
  急増するレアアースの需要
  「元素戦略」で楽観的に解決する

 第3章 「元素戦略」はどう進められているのか

 「元素戦略」を実現する5つのルート

  5つの戦略──代替、減量、循環、規制、新機能

 「元素戦略」を主導する文科省、JST、経産省・NEDO

  文科省は「基礎寄り」プロジェクト
  文科省が放つ巨大プロジェクト
  JSTは2つのプロジェクトを立ち上げる
  経産省は「希少元素」ごとにスコアリング

 JSTとはどんな組織か

  1%の研究者に重点配布
  JSTの「さきがけ」「CREST」「ERATO」
  教授の大事な仕事の1つが「ファンディング」

 トップを走る戦略①──「第1原理計算」を駆使する

  チーム内に「つくる、解析する、理論づける」専門家を配置
  「第1原理計算」とは何か
  なぜ計算のエキスパートを抱え込むのか

 トップを走る戦略②──計測機器は自前で設計する

  「出がらしマシン」を最新鋭と勘違いしてはいけない
  自分で設計しているからこそ、「トップを走っている」と自覚できる

 トップを走る戦略③──「京」、SPring-8、J-PARC……

  スーパーコンピュータ「京」で何をするのか
  「SPring-8」は日本の宝
  ニュートリノを放つJ-PARCも元素戦略に
  研究者の時間を稼いでくれる巨大設備

第4章 研究者を支える「元素戦略」独自のしくみ

 激突する研究者同士の「白熱・交流会」

  「トモダチ交流」ではなく、ケンカ腰の議論にも
  大物同士のガチンコ対決が見物
  ガバニングボードでさらに連携を図る

 どのような研究者が採用されるのか

  CREST・さきがけの研究者の採択基準
  細野基準──自信をもって自説を展開できるか
  玉尾基準──「分野融合」で新しい価値を創造できるか
  「サイエンスがしっかりしている」とは?

 「親分衆」を各分野から連れてこい!

  「キーマンを集める」のは成功に必須の戦略
  「リーダー」しだいでプロジェクトの成否が決まる

 「目利き役」が優秀な研究者を発掘する

  「凄いことをやらかす人」をどう見つけ出すか
  山中伸弥教授もJSTの目利き役が採択した
  「1%の可能性に賭ける」か、「説明性・透明性」重視か?
  第2、第3の「モンスター細野」を探せ!

第5章 「元素戦略」をリードする5つの研究

 「元素戦略」での1番乗り? 「磁石開発」

  希少元素を使わない永久磁石
  「磁石の歴史」は元素戦略そのもの
  急速に広がるネオジム磁石の市場
  世界の宝野・杉本、そして佐川の“次世代”磁石開発競争
  「ネオジム磁石」を凌駕する「強磁性窒化鉄」磁石

 液晶、有機ELに欠かせないITO

  透明で、しかも導電性を求められる材料を
  減量作戦で使用量を半減させる
  インジウムから亜鉛への代替

 部品加工を支えるタングステン

  超硬工具はタングステンでつくられる
  サーメットによる代替・減量作戦

 研磨剤セリウムは産業の黒子役

  研磨工程で日本の高品質を支える
  セリウムが手に入らなくなった!
  「エポキシ樹脂+ジルコニア砥粒」で代替可能か?

 次世代「電池」は多彩な材料で実用化へ

  リチウムイオン電池からナトリウム電池へ
  有機化合物で電池をつくる!

第6章 文科省、経産省の全プロジェクトをチェックする

 文科省【拠点型】プロジェクトの研究内容

  【拠点型】の4つのテーマと内容
  ①「磁石材料」──拠点:物質・材料研究機構(代表研究者:広沢哲)
  ②「触媒・電池材料」──拠点:京都大学(代表研究者:田中庸裕)
  ③「電子材料」──拠点:東京工業大学(代表研究者:細野秀雄)
  ④「構造材料」──拠点:京都大学(代表研究者:田中功)

 文科省プロジェクトの研究内容①

  亜鉛代替、次世代メモリ……
  硬いチタンなのにガムのように曲がる?
  「自分で自分をきれいにする」インテリジェント触媒
  カメラから鉛を追い払う
  二酸化チタンでITOを代替する

 文科省プロジェクトの研究内容②

  触媒で3つの研究が進む
  構造制御の魔術師
  2009年度の「元素戦略プロジェクト」採択4テーマ

 経産省プロジェクトの研究内容

  2007年度はインジウム、タングステン減量……
  2009年度は触媒、研磨、磁石……
  2010年度は計算化学、インジウム代替技術

第7章 日本企業はどこにチャンスを見い出すか

 トヨタがめざす次世代自動車

  次世代自動車と「元素戦略」
  日本中に目を配る、トヨタの「次世代自動車」への取り組み
  自社開発してこそ、生き残れる

 電池、モーターなど「部材」の時代へ

  電機メーカー、電池メーカーが自動車産業に進出する
  「モーター・磁石」を制するものが産業を制する
  炭素で鉄を置き換える?
  日本の部材はクール!

 「10年後の商社地図」は「元素戦略」への対応で決まる

  商社が狙う「元素戦略」でのネタ探し
  日本近海にレアアース!

第8章 猛追するアメリカ、EUにどう立ち向かうか

 アメリカ・EUへのリードは5年

  アメリカの「マテリアル・ゲノム・イニシアチブ」計画
  日米欧のワークショップでの緊張のプレゼン
  アメリカの要求、EUの作戦

 中国のホンネは「高級部材」狙い

  野望実現に向けて論文数が急増する
  企業に「研究者レベル」が揃わない

 「デジュールの壁」を突き崩せ!

  2つの標準化戦略
  「デジュールの壁」にどう立ち向かうか?
  燃料電池車、デジュールスタンダードを勝ち取る!

 「資源バランスの崩壊」に危機感をもつ資源国

  資源問題での世界貢献
  日本のトップ研究者にアメリカ国防総省から「札束の手」が……

第9章 「元素戦略」に人生を賭ける

 「元素戦略」がもたらす2つの貢献

  産業を大きく発展させる
  サイエンスに地殻変動を与えられる

 「グラム1円が1万円に化ける」日本向きの世界

  日本こそ、世界最大の部材工場
  高機能の追究で「グラム1万円」に大変身!

 勝ち続けるには“手の内”を明かさないこと

  「手の内」をすべて公表してしまう“困った”研究者
  論文誌のエディターをも煙に巻く
  情報漏洩に神経をとがらす経産省

 「元素戦略」には、若い人が人生を賭けるだけの値打ちがある!

  ポスドク問題で理系希望者が激減
  「元素戦略」を理科系のモチベーションに

あとがき

付録とさくいん

 人名さくいん
 用語さくいん
 付録1 JST CREST「元素戦略」プロジェクト 全内容
 付録2 JST さきがけ「元素戦略」プロジェクト 全内容
 付録3 文部科学省「元素戦略」プロジェクトへの参加大学・参加企業
 付録4 経済産業省「希少金属代替材料開発プロジェクト」への参加大学・参加企業
 付録5 ナノテク用インフラへの配算比率
 付録6 米国“Critical Materials Strategy”が分析する日本、EU、中国、韓国の資源戦略
 付録7 希少元素の生産量、埋蔵量







著者

中山智弘(なかやま・ともひろ)
1997年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。博士(工学)。民間企業の研究員から2002年に科学技術振興事業団へ。独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)フェロー、内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)付、内閣官房国家戦略室政策参与を経て、現在、JST科学技術イノベーション企画推進室参事役、JST・CRDSフェロー/エキスパート、文部科学省 元素戦略プロジェクト・プログラムオフィサー。各種の政策委員等も務める。

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