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製造業が日本を滅ぼす

貿易赤字時代を生き抜く経済学

  • 紙版

製造業が日本を滅ぼす

貿易赤字時代を生き抜く経済学

書籍情報

  • 紙版
  • 野口悠紀雄 著
  • 定価:1650円(本体1500円+税10%)
  • 発行年月:2012年04月
  • 判型/造本:46並製
  • 頁数:292
  • ISBN:978-4-478-02119-4

内容紹介

自動車や電機など製造業の輸出が落ち込み、日本を支えてきた輸出主導の成長モデルが崩れている。これから製造業は復活できるのか、円高は是正されるのか。日本経済論の第一人者が日本の貿易構造や為替の先行きをつぶさに分析し、人材開国、高度サービス業の育成など、貿易赤字時代を生き抜く処方箋を示す。

目次・著者紹介詳細を見る▼

目次

はじめに

第1章 日本の輸出立国は大震災で終わった

1 貿易赤字が定着する
年間1.6兆円の貿易赤字になった/輸出は経済危機以前の水準には戻らない/発電用燃料輸入の増加で、輸入は今後も大きく増加する

2 貿易赤字の定着は「ニューノーマル」
貿易赤字は一時的でなく、構造的/アメリカの消費ブームと円安は、バブルでしかなかった/原子力発電の低コストも、表面的なものでしかなかった/電力問題は、脱工業化によってしか解決できない/加工貿易パタンに逆戻り/効率性が低下した加工貿易を続けてもよいのか?/「ニューノーマル」の経済条件に対応する

3 貿易赤字の定着は通念の変更を迫る
円安は、貿易赤字を拡大させ、企業利益を圧迫する/石油ショック時の経験に学ぶ必要がある/貿易立国から金融立国への転換

第2章 日本の貿易構造は変化している

1 自動車産業は「農業化」した
震災で大きく落ち込んだのは、自動車生産/乗用車輸出は経済危機前の半分/国内需要はエコカー支援策で支えられている/2005〜08年の自動車輸出増は、バブルだった/部品輸出の増加は継続するか?

2 日本の電機産業は生き残れるか?
コンピュータと電気機器は、すでにネット輸入国/電気機器の製造は、新興国のEMSに移転/機械や部品の輸出が増えるべきだが、増えているのは原材料製品/エネルギー多消費産業が日本に残っていいのか?

3 対中国輸出は日本経済を支えられるか?
中国向けの資本財輸出が伸びている/円ベースでの対中輸出は、経済危機前に比べて増えていない/中国の輸入中での日本の比重は低下している/「ルイスの転換点」に達した中国は、低賃金国からの輸入を増加させている/エネルギー多使用品目と労働集約的品目は、成長が難しい

4 ドル建て価格を上げられれば、円高は問題でない
輸出量は経済危機前の水準に回復したが、円建て輸出額が減った/製品に競争力があれば、価格を引き上げられる/「円高だから」は、言い訳にすぎない

第3章 円高について通念を変えるべきとき

1 円高は日本の国難なのか?
貿易に影響するのは実質為替レート/貿易収支が赤字のいま、円高が国益になっている/円高に影響されない事業が必要

2 円高の利益を冷静に評価する必要
名目レートでなく、実質レートを見るべき/海外から資源を安く買えることは復興に不可欠/労働者は円安から利益を受けなかった

3 五時間で300億円超! FX投機で空前の利益
なぜユーロでなくドルを買う?/政府がぼろ儲けの手段を提供した/現在の内外金利差では、介入の効果は継続しない

4 貿易赤字になっても円安にはならない
貿易取引でなく資本取引で決まる為替レート/為替レートのボラティリティが高まっている

第4章 電力問題に制約される日本経済

1 電力供給は需要に対応できるか
全国的な問題となった電力不足/脱原発への方向転換/規制でなく料金で調整すべきだ

2 発電コストが上昇する
火力発電シフトによって原油とLNGの輸入が増える/賠償や廃炉の費用/東電の料金値上げ率は、四割程度になる可能性も/電気料金引き上げで企業利益は大幅に減る

3 電力問題で加速する海外移転
電力問題は、国内だけでは解決できない/企業の海外移転は電気料金上昇で加速/電力に関する大きなリスクに対処する必要

5 電力会社は、地域独占と総括原価方式で支えられていた
他社なら深刻な事態になることが、東電ではならない/老朽施設と安全対策が放置されたのは、なぜなのか?/不十分な安全対策に至る制度上のインセンティブ/電気料金を使って世論を誘導できる仕組み

第5章 縮原発は不可能ではない

1 エネルギー計画の見直しは、電力需要の再検討から
供給面は議論されるが、需要面が議論されていない/「エネルギー基本計画」には定量的な記述が少ない/「長期エネルギー需給見通し」における成長率想定/「長期エネルギー需給見通し」における発電電力量/「新成長戦略」や「エネルギー基本計画」の成長率見通しは過大

2 経済成長率を見直せば、原発依存度は半減する
経済成長と電力需要/経済成長率が下がれば電力需要は減少する

3 産業構造が変われば、電力需要は減る
産業構造の変化を考慮する必要/部門別の成長率の差を考慮した電力需要モデル/将来の部門別電力使用/成長率見通しが低下すれば、原発依存を半減できる/弾力性が低下すれば、電力需要はさらに減る

4 環境基準と縮原発の同時達成は可能
環境基準に関する日本の国際公約/再生エネルギーは切り札とはなり得ない/環境基準の達成可能性/環境目的を達成しつつ、原発依存を現状から半減できる

第6章 製造業の事業モデルを変える

1 正念場を迎えている日本の製造業
巨額の赤字に陥った製造業/製造業の赤字は一過性でなく構造的

2 成長モデルを全体として入れ替える
輸出立国モデルは継続できない/製造業を日本に残しても雇用問題は解決できない/部分の修復ではなく全体の転換が必要

3 新しい製造業のモデルを構想する
経済法則に逆らってきた日本/外国に「売る」モデルでなく「買う」モデル/「金持ちモデル」を追求すべきだ/新興国市場に消費財を売るモデルでは利益率が低下する/「垂直統合モデル」から「水平分業モデル」へ/脱系列モデルへ/高齢者の需要を開拓する

第7章 海外移転で減少する国内雇用をどうするか

1 製造業の海外シフトが加速している
国内の設備投資は減少し、海外投資は四割増/アジアで輸送機械の設備投資は七割増/自動車産業の海外設備投資は、国内のほぼ二倍/海外移転を空洞化とするのでなく、それを前提とする政策が必要/製造業海外移転は、中小企業のフェイズに入っている

2 怒濤のようにアジアにシフトする自動車産業
国内の販売が落ち込み、アジアでの販売が急増/日産の国内生産比率は四分の一/トヨタのアジア向け投資も前年の二倍/低すぎる自動車産業の利益率

3 製造業が国内にとどまっても、雇用は減少する
製造業の雇用者は、1990年代の初めから400万人減った/雇用を増加させず生産が増加し、利益が増加/現金給与総額は顕著に下落

4 日本経済の活性化には、高生産性サービス業が不可欠
給与の低いサービス産業に労働力が移動した/日本経済の問題は、価格下落でなく所得下落/雇用を量的に確保するだけでなく、所得を上げる必要/新しい産業が必要

第8章 TPPで本当に議論すべきは何か?

1 TPPは貿易自由化ではない
TPPが自由化政策だとする大きな誤解/ブロック化政策の経済理論/ブロック化政策の系譜

2 TPPによる輸出増加効果はわずか0.4%
アメリカの関税率は低いので、TPPで輸出が増えることはない/FTAの輸出増効果はデータで認められない/「効果はほとんどゼロ」という内閣府試算

3 中国の出方次第で、日本の製造業は大打撃を受ける
中国こそ日本にとって重要/TPPが引き起こす複雑な外交ゲーム/中国はどう反応するか?

4 TPPやFTAは、輸出振興策としては時代遅れ
関税以外の要因が貿易に影響を与える/新興国の価格競争力と高成長は「貿易移転効果」を凌駕する/為替レートの影響はきわめて大きい/生産拠点の海外移転で関税を回避できる/タイへの一極集中はFTAによる歪み/ISDは日本に一方的に不利な取り決めか?

5 世界に開かれた日本をめざせ
農産物輸入増は消費者に福音/人材開国を図れ/日本がめざすべきは海洋国家

第9章 欧州ソブリン危機は日本に波及するか?

1 対照的なギリシャとアイルランド
ギリシャ、アイルランド、イタリアは性質が異なる/ギリシャ問題は、ユーロを維持するかぎり解決できない/アイルランドの躍進と挫折/アイルランドの復活から日本が学べること/豚が空を飛ぶ奇跡

2 イタリア国債で問題が生じたのはなぜか?
イタリア問題は理解しにくい/イタリアは大きいので金融救済が容易でない

3 欧州ソブリン危機は日本国債に波及しない
日本国債の国内消化は、いつか行き詰まる/危機が前倒しで発生することはあるか?

4 経常収支赤字でも国債消化に支障は生じない
貿易赤字で国債消化に支障が発生するか?/経常収支は簡単には赤字にならない/求められるのは、資産大国としての行動

5 日本国債のリスクは確実に高まっている
上昇するCDSスプレッド/なぜ日本国債の利回りが低いままか?/短期化する国債のデュレーション


索引





著者

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。
〈主要著書〉
『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書、1993年)、『日本を破滅から救うための経済学』(ダイヤモンド社、2010年)、『1940年体制(増補版)』(東洋経済新報社、2010年)、『実力大競争時代の「超」勉強法』(幻冬舎、2011年)、『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社、2011年)、『大震災からの出発』(東洋経済新報社、2011年)、『クラウド「超」仕事法』(講談社、2011年)、『消費増税では財政再建できない』(ダイヤモンド社、2012年)等多数。
◆ホームページ:http://www.noguchi.co.jp/

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