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原発に頼らなくても日本は成長できる

エネルギー大転換の経済学

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原発に頼らなくても日本は成長できる

エネルギー大転換の経済学

書籍情報

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  • 円居総一 著
  • 定価:1650円(本体1500円+税10%)
  • 発行年月:2011年07月
  • 判型/造本:46並製
  • 頁数:240
  • ISBN:978-4-478-01654-1

内容紹介

3.11後の脱原発論議を経済学の視点から検証し、原子力発電なき経済再生の処方箋を示す。原発は、じつは効率面でも環境面でも優位性を持たない。それがなぜ推進されたのか、代替エネルギーをどこに求めるべきか、エネルギー大転換で迫られる経済の新しい成長モデルとは…気鋭の経済学者がその方程式を読みとく。

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目次

はじめに

第1章 複合震災がもたらした安全神話の崩壊

1 災害の性格を変えた福島原発危機

  事態の深刻さを映した解析結果
  原発危機が問いかけているもの
  昔の生活スタイルには戻れない

2 安全システムの未熟性を晒した原子力発電

  潜在被害は超巨額に達するおそれも
  世界危機を収束させた金融の安全システム
  原発の安全システムは実はローテク

3 資源活用の原則は「何も足さない、何も引かない」

  地球資源の活用にみる原発の特異性
  行き詰まった核燃料サイクル
  原発の廃棄物負担は四〇兆円を超える

第2章 原発は「安くて安定供給できる」電力なのか

1 火力に劣る原子力の採算性と経済性

  試算データが示す発電単価の実際
  設備の稼働率に左右される発電コスト
  原子力の価格優位性はほとんどない
  補助金等を含めれば際立ったコスト高に
  もはや経済システムとしての意義は失われた

2 価格、供給システムの効率性を検証

  安定供給を支えた「総括原価方式」
  火力だけでもピーク需要を賄える
  効率生産、効率消費の時代にはそぐわない

3 環境性でも意義薄い原子力発電

  経済性の劣る原発を使い続ける必然性
  原子力はCO2削減に貢献できるのか
  熱効率技術の供与こそ日本の役割

4 経営転換を迫られる原子力発電ビジネス

  業界の思考停止が抵抗を拡大する
  脱原発でも関連市場は喪失されない
  大手メーカーの戦略にも変化の兆し
  危機を教訓に企業家精神に立ち戻れ

第3章 原発に頼らないエネルギー政策を実現する

1 火力活用で連続性ある転換を実現

  火力の活用拡大が原子力代替の現実解
  可採年数を倍増させた天然ガス革命
  天然ガス価格は今後も低位安定が見込まれる
  「燃料費増がコスト高をもたらす」は非現実的
  いま求められる需要重視への転換

2 発送電の分離・自由化で市場の効率化を促す

  なぜ電力の地域独占が進められたのか
  環境の変化で電力自由化が不可欠に
  自由化のカギを握る発電と送配電の分離
  部分自由化がもたらした電力料金の低下
  潜在的事業体の供給力は原発を優に上回る
  電力自由化の行方を映す金融自由化
  オールドモデルに固執する東電の賠償スキーム

3 将来性の高い自前代替エネルギーへの転換

  火力に置き換わる理想的な次世代エネルギー
  欧米に立ち後れる風力発電の現状
  ダムの瓦礫を海上風力の土台に活用
  太陽光は変換効率の引き上げによるコスト減が課題
  地熱発電に求められる政策推進と観光振興策

第4章 持続的成長パスを描くための基盤づくり

1 一億総ざんげでは何も生まれない

  危機の教訓を再生に生かすために
  地球環境と共生する経済システムへ

2 産業の情報化を軸に企業ガバナンスを修復

  事態を悪化させた企業統治システムの欠陥
  日本を繁栄させた「集団主義型」情報システム
  情報ネットワークの活用は日本の死活問題
  地方を強くする情報ネットワークの構築

3 需要重視の金融・財政政策でデフレの遺産克服

  マクロ経済の基盤整備が不可欠
  デフレが新たな経済成長の芽を摘み取る
  誤った解釈がデフレを長期化させた
  マネーの供給拡大がデフレ脱却のカギ
  デフレの議論はなぜ迷走したか
  経済再起動の足かせとなる緊縮財政
  デフレ解消が成長への必須条件

第5章 電力制約と財政制約を受けない日本復興策

1 電力制約の回避で不確実性の増殖を阻止

  東日本大震災の経済的損失
  足元の落ち込みを拡大させた不確実性
  日本が世界経済の鈍化を助長しかねない
  景気の落ち込みを助長した節電キャンペーン

2 国債増発や消費税増税は拡大復旧への足かせ

  借金のツケは将来世代が負うのか
  財源捻出の余地は他にないのか

3 拡大復旧のカギは貯蓄活用にあり

  特別会計剰余金を活用せよ
  外為特会から「埋蔵金」を掘り起こす
  日銀引き受けは最後の手段

第6章 エネルギー転換を軸に新たな経済成長へ

1 新成長パスへの移行を促すグリーン化需要の拡大

  火力は次世代エネルギーへの橋渡し役
  火力活用による電力設備の小型化・分散化
  高い発電効率を誇るコンバインドサイクル
  効率化の起爆剤となるスマートグリッド
  消費者重視の供給革命がもたらすもの
  市場と雇用を創出するグリーン化の進展
  雇用のミスマッチとジョブ・ロスト世代の改善

2 地域再生に向けた地産地消のエネルギー政策

  地域における産業構造の水平化を促す
  電力分散化を観光振興につなげる
  バックアップ機能ともなるサプライチェーンの重層化

3 電力制約なき地球共生の成長パスで「日本復活」

  「悲観シナリオ」の可能性は低い
  オールドモデル脱皮は時代の要請
  地球共生の成長モデルで復活できる

巻末注

主要参考文献・資料等





著者

円居総一(えんきょ・そういち)
日本大学国際関係学部・大学院教授。
1948年福井県生まれ。ロンドン大学スクール・オブ・エコノミックス(LSE)大学院博士課程修了。Ph.D.取得。1973年東京銀行入行、ロンドン支店調査課長、ニューヨーク支店次長などを経て、東京三菱銀行米州本部主席エコノミスト。1997年日本大学教授となり、現在に至る。経済企画庁、通産省、経済同友会等諸委員会委員、日本EU学会理事、富士通総研研究顧問などを歴任。日本経済研究センター特別会員。多数の寄稿論文の他、著書に『金融自由化入門』(日本経済新聞社)、共著に『マネー・マーケットの大潮流』(東洋経済新報社)、『アメリカの経済』(早稲田大学出版会)などがある。

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