知的財産戦略
技術で事業を強くするために
知的財産戦略
技術で事業を強くするために
書籍情報
- 丸島 儀一 著
- 定価:3960円(本体3600円+税10%)
- 発行年月:2011年10月
- 判型/造本:A5上製
- 頁数:328
- ISBN:978-4-478-01237-6
内容紹介
技術力で勝負するには、何が必要か。参入障壁をいかに築き、いかに突破するか。事業と研究開発、知的財産をいかに連携させるか。知的財産を事業競争力として活用するための経営戦略、事業戦略が詰まった決定版。日本の知的財産戦略の第一人者による初の書き下ろし。
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目次
はじめに
第1章 知的財産経営とは何か
1 事業を強くする知的財産経営
知的財産を事業競争力として活用する経営
全社戦略と各事業戦略の調和の取れた経営
事業、研究開発、知財の三位一体の戦略
2 経営者の課題
知的財産の本質を理解できているか
column 特許権の本質は排他権である
知的財産経営には長期的視点が必要である
知的財産は事業と連動してこそ価値がある
知財部門の予算をどう考えるか
column 知財部門はブレない仕事をすべし
国際標準を重視する経営
3 事業部門、研究開発部門、知財部門の先読み
事業部門は、技術の変化を含めた事業の先読みを行う
研究開発部門は、基盤技術の変化の先読みを行う
知財部門は、事業を実行する国の制度、運用の先読みを行う
4 ベンチャー、中小企業における知的財産経営
ベンチャービジネスの二つの知的財産戦略
column アメリカの技術系ベンチャーにおける知的財産の形成
中小企業は、経営者が知的財産意識を強くする必要がある
column 複写機開発にみる三位一体の事業創出事例──知財センスと知財マインドの獲得
第2章 事業競争力を高める知財活動環境の構築
1 知的財産経営の環境づくり
三位一体を確立できる環境づくりとは
column 知的財産経営に至る道のり
源流に入り、源流から下流を、下流から源流を見る
各研究開発部門を横串で見る
2 知財部門の環境づくり
知財部門の仕事と評価は見えづらい
やる気をおこさせる環境、組織、担当、評価をつくる
知財担当者のローテーションは不要である
3 知財人材の育成
「No」を「Yes」にできる新人を育成する
column 技術を理解し、発明を権利として表現する基礎スキルのトレーニング事例
知財部員を事業の全サイクルにかかわらせる
column 知的財産の意識が薄いために事業の継続的優位性を確保できなかった事例
第3章 研究開発における知的財産戦略
1 事業目的に沿った技術の創造
全事業に共通する「基盤技術」を創造する
事業競争力を高める「コア技術」を創造する
コア技術の延命を考慮した技術を創造する
各事業サイクルにおいて活用できる技術を創造する
2 事業と知的財産戦略を意識した研究開発
権利形成、訴訟を意識した研究開発を行う
先使用権による保護範囲を正しく理解する
営業秘密を保護し、技術流出を防止する
ノウハウとして秘匿するか、公開して特許とするか選択する
3 研究者の知財マインド、知財センス
研究開発は知財形成で完結するという意識を植え付ける
権利情報を技術情報に転換する能力を向上させる
有効な権利を形成する能力を向上させる
4 第三者の特許権を認識した研究開発活動
技術動向調査とともに権利情報調査を欠かさない
特許マップは時間軸で自社の技術開発力を検討する
権利の実態を検討する
問題特許の認識と解決方法を明確にする
5 研究開発を補完する共同研究
共同研究の成果の取り決めは事前に行う
事業展開を考慮した成果の取り決めをする
column プリンタ・メーカーAとモーター・メーカーBのプリンター用新規モーターの共同研究開発例
海外研究所との連携で注意すべき点
目的に適った秘密保持契約の取り決めをする
6 産学連携による共同研究開発
早期に連携することが重要である
大学の秘密情報の取り扱い体制は十分か
成果の取り決めは事前契約で明確に、不実施補償は柔軟にする
権利の承継を確実に行う
学内研究における権利侵害のリスク
7 研究開発と国際標準化活動の連動
研究開発成果と標準技術の整合性を保つ
WTO加盟国とTBT協定
競争と協調の二つの視点で研究開発活動を行う
column デジタルカメラのファイルフォーマットの統一
第4章 事業戦略に適った知的財産権の形成戦略
1 事業競争力を高める知的財産権の形成
勝つための要素、要件を明確化する
「黒を白にする活動」とは何か
知財力(知的財産に基づく事業競争力)の強化活動
2 「守りの権利」の形成
「守りの権利」とは何か
コア技術の思想化を徹底した権利を形成する
コア技術の延命化を図る守りの権利を形成する
参入障壁を形成する
事業の全サイクルで参入障壁を形成する守りの権利を形成する
3 「攻めの権利」の形成
「攻めの権利」とは何か
コア技術以外の技術についての攻めの権利形成
相手の実施技術・実施したがる技術を攻める権利を形成する
相対的知財力を増大する質と量の権利を形成する
4 知財評価
定量評価よりも定性評価を重視する
企業の知財活動の評価は自社が主体的に行う
column 第三者機関での知的財産の定性評価の促進
5 グローバル知的財産戦略
活用しやすい、効果の大きい国で権利を形成する
海外研究開発拠点で権利形成
グローバル展開をにらんだ商標権の形成
column 商標の使用範囲を限定したために「Canon」が使えなかった事例
第5章 事業を強くする知的財産活用
1 研究開発力強化の知財活動
研究開発に自由度を与え創造力を高めるための活用
事業の弱みを解消し、強みを増すための活用
column 先読みにより弱みを解消したレメルソンの事例
2 販売力、生産力を強化する知財活用
販売力を維持するための知的財産の活用法
生産委託に伴う知的財産の活用
3 知的財産を活用した共同事業
知的財産の強みの結合で新規事業を行う
事業化に必要な技術開発を共同で行う
column 既存の知財力と新技術の活用を意識した新商品創出事例
LLP(有限責任事業組合)を利用して共同研究を行う
技術研究組合(研究開発パートナーシップ)を活用して共同事業を行う
4 知財信託の活用
知財信託の適切な利用法
第6章 技術の国際標準化戦略
1 企業競争力を高め、持続させる標準化戦略
技術標準化戦略は必須のものである
標準化戦略は事業に勝つ戦略である
ビジネスモデルと技術標準化戦略の関係
標準化活動を活性化させる環境をつくる
標準化技術の権利化による事業参入機会の拡大
2 国際競争力強化と国際標準化活動
国際競争力を強化するための標準化活動とは何か
標準化活動の3つのタイプ
国際標準戦略強化をめぐる各国の動き
国際標準化にPCT出願を利用する
3 技術標準の問題点
RANDとパテントプールが抱える問題
必須特許調査が十分になされない現状
必須特許許諾の宣言に強制力、法的拘束力がない
標準化技術を使っても、第三者から訴えられる
技術標準の連鎖によるライセンス料高騰の可能性
column 国際標準化センター
第7章 アライアンス(提携)戦略
1 アライアンスと共同開発
アライアンス戦略の重要性について
垂直アライアンスとその成果の取り扱い
垂直型共同開発の成果における共有特許をどう取り扱うか
水平型共同研究開発の成果を流出させないために
垂直・水平混合型共同研究開発の登場
混合型共同研究開発で重要なこと
2 秘密保持契約
秘密保持契約締結のリスク
2条項の問題点(負の効果)
2条項に関する具体的問題点と対応策
「法令の除外」とプロテクティブ・オーダーの注意点
秘密保持の期間や契約前の情報漏えいに注意する
開示を受けた技術はみな公知か
輸出管理法の問題(負の効果)
不用意に秘密保持の義務を負わないこと
3 知的財産のライセンス戦略
なぜ知的財産をライセンスするのか
戦略的、予防的にライセンスする
ライセンスで事業の競争力強化を図る
事業部内の最適化と同時に全社の最適化を図る
協調と競争の使い分けを実現する
4 ライセンス契約
ライセンス契約では、案件ごとに変化する条項に注意する
契約当事者の状況の変化に留意する
目的に適ったラインセンス許諾形式を考える
許諾製品の範囲を長期的に考える
許諾技術・許諾特許の契約上の注意
実施料を考える5つのポイント
契約履行の確保を重視する
5 ノウハウライセンス
ノウハウライセンスの5つのポイント
6 ライセンス交渉
ライセンス交渉では、中・長期の戦略と経験が求められる
交渉を行うタイミングを見極める
相対的知財力の確認と脅威の与え方
交渉は交渉相手を選ぶ交渉から始める
相手から言わせる交渉ストーリーをつくる
一貫性を持つこと、即断できること
交渉の基本は「損をしない妥協」
7 取引契約
取引契約における知的財産の視点とは
8 事業提携契約
事業提携におけるクロスライセンスの諸形態
クロスライセンスにおける子会社の取り扱い
クロスライセンスとジョイント・ベンチャーによる事業参入例
9 契約の一括管理と運用の一貫性を保つ
知財契約の一括管理の必要性
契約相互間の影響
グローバルな契約ルールの取り決め
運用の一貫性を確保する
第8章 紛争の予防と解決の活動
1 事業競争力を高め、持続する長期的、戦略的、予防的、臨戦的活動
長期的視点
訴訟は戦略に組み込めない
交渉力と契約力で解決する
2 妥協のない訴訟での解決
訴訟対応力の必要性
訴訟対応の基本
デポジションでは一貫性を保つ
専門家に鑑定を依頼する真の理由
3 妥協のない訴訟
国内での訴訟:訴えられた例
アメリカでの訴訟:訴えた例
香港での訴訟:訴えた例
外国での訴訟:訴えられた例
4 知的財産経営におけるリスク・マネジメント
技術の先読みによってリスクを軽減する
強いビジネスを活用してリスクを軽減する
5 国際法務、情報ネットワークの構築と活用
攻撃、防御に適った信頼できる国際法務ネットワークを構築する
専門能力に優れた法律専門家の助言を得る
法律事務所の第一顧客の立場を得る
各国の代理人同士のネットワークを築く
6 「知財の先読み」機能を果たす情報ネットワークの構築
先読み情報収集のためのネットワーク
column 製品法務委員会
column 「提案」は秘密情報として扱う
第9章 知的財産立国、技術立国への論点
1 産官学の三位一体の実現へ
column 勝ち組の戦略
column オープン・イノベーション(垂直・水平混合型共同研究開発)
column 共同研究開発者の事業競争力強化が優先
2 法学者の合意形成の加速
column ライセンシー(通常実施権者)の当然保護の立法化に10年も要した
3 行政庁には、連携と長期的視点が必要
column アメリカのスリートラック制と日本の特許庁
4 政府は、知的財産戦略の単年度主義の再考を
5 中小企業・ベンチャーは、大企業と賢く連携を
column 技術の目利き
6 職務発明の課題
column 個人でなく、グループを評価する制度
column 従業員の評価・処遇を大切に
7 日本の大学関係者はみずからの役割の認識を
8 弁理士、弁護士は日本企業の国際競争力強化へ貢献を
column グローバルに働く韓国の弁理士
column 登録率を上げるより、勝てる権利の形成を
著者あとがき
解説(西口泰夫)
索引
著者
弁理士、金沢工業大学大学院知的創造システム専攻教授、日本工業大学専門職大学院技術経営専攻客員教授、(財)知的財産研究所理事、日本知的財産仲裁センター副センター長、(社)国際知的財産保護協会副会長、(財)日本関税協会評議員、一般財団法人工業所有権協力センター理事、日本弁理士会「知財ビジネスアカデミー」丸島塾、(社)企業研究会「知財塾」長、知的財産管理技能検定 指定試験機関技能検定委員。
1960年4月早稲田大学卒業、キヤノンカメラ株式会社(現キヤノン株式会社)に入社、特許課に配属、知的財産の面からグローバルな視点で事業を強くするための三位一体の知財戦略の構築と経営に資する知的財産の創造サイクルの全範囲にわたっての戦略的な実践活動に従事。1983年取締役特許法務本部長、製品法務委員会委員長、1989年常務取締役、経営者の立場から全社的な視点で事業戦略に適う知財戦略の構築と戦略的な実践活動に取り組む。1993年専務取締役 知的財産・製品法務担当、研究開発担当、新規事業育成本部長、国際標準担当、研究開発システム推進委員会委員長、2000年〜2009年同社顧問。
主な社外活動としては、業界団体の日本写真機工業会特許部会代表幹事、(社)日本事務機械工業会知的財産委員会委員長、特許協会(現知的財産協会)理事長、副会長、(社)日本経済団体連合会知的財産問題部会長として知的財産に関する諸問題に対応する活動を行った。
行政庁の工業所有権審議会、産業構造審議会、文化審議会、(財)知的財産研究所の多くの委員会では技術立国、知的財産立国に向けての制度改革、法改正、運用の検討に参画。日本弁理士会副会長、知的財産価値評価推進センター所長、早稲田大学客員教授、東京理科大学専門職大学院知的財産戦略専攻教授、総合科学技術経営専攻客員教授を務めた。
昭和42年(1967)3月弁理士登録(登録番号 第6987号)。平成5年(1993)4月特許庁工業所有権制度関係功労者表彰、通産大臣表彰受賞、平成15年(2003)5月黄綬褒章受賞。
著書に『キヤノン特許部隊』(光文社新書、2002年)、『知財立国への道』(共著、内閣官房・知的財産戦略推進事務局編、ぎょうせい、2003年)、『知的財産を語る』(共著、レクシスネクシス・ジャパン、2005年)、『知財、この人にきくVol.1』(社団法人発明協会、2008年)、『21世紀の展望と技術経営』(MOTテキスト・シリーズ、桑原 裕/弘岡正明 責任編集、共著、丸善出版、2009年)。その他、雑誌、電子メディア投稿、シンポジウム、講演、対談録等多数。